紙の無駄

『再びルイへ。』林京子

こんな「作品」を載せたことへのささやかな抗議として、暫く群像を買うのを止めた。「文学者の特権」ということが頭に浮かんだ。高名な文学者であれば、「福島の子供が鼻血」みたいな関係のないことでも原発事故と関係のあることのように印象付けて書くこと…

『エッグ』野田秀樹

いっけん娯楽作品にみえて、満州とか731とかをベタにならない程度にそれとなく織り込む。しかも、日中関係が云々されているタイミングで。このいかにも私は良識派でございます的な振る舞いはもはや醜悪ですらある。芝居を金払って見るような財布に余裕の…

『3・11と夏目漱石』小森陽一

反原発はときとしてポルポト、って何度かこのブログに書いた気がするのだが、その典型的な例がこちらです。 としか私には読み取れなかったんだが、読めてないんだろうか。利便さを捨て赤裸々な人間が赤裸々な結びつきがどうのこうのと書いてあるようなんだが…

『“フクシマ”あるいは被災した時間(二)―追悼と確率』斎藤環

趣旨である抽象的議論のその根幹については、文句をいう気は殆ど無い。というか、理解できてないかもしれないし、理解する気もあまりないから。 気になったのは、その議論の説得性を高めるために、どぎつい資料ばかりを引いているかのように見える点だ。まる…

『"フクシマ"、あるいは被災した時間』斎藤環

上記のようなものもあればこういうのもあるんだなあ。 やれ猪子寿之だ、ダヴィンチだ、ハイデガーの弟子だ、デゥピュイだと思想家芸術家の名前が挙げられ、ウンザリさせられること請け合い。まるで自らがいかに現代思想に通じているかを誇示するがために「フ…

『特集−旅と本』

もちろん好きな作家のコメントとか、ぜんぜん面白くなかったとは言えない部分もあるよ。しかし、こういう特集って、私が嫌いで立ち読みすらしないダヴィンチとか、最近ぜんぜん目次も見てなかったりする『文藝』みたいで、すごく不安になるわ。 で、あえてこ…

『超人』伊坂幸太郎

前作『PK』のつまらなさも記憶に新しいなか、今度はいくらかマシかと思えばたんなる姉妹編的作品でした、というオチ。サッカーだとか大臣だとか落ちてきた子供がどうだとか、前回と部分的にダブるような話が展開されて、で、前回あった時代考証がなんかお…

『犬』稲葉真弓

わっざわざ擬人化して捨て犬に境遇を語らせているが、ひとつもココロ動かない。捨てられたペットなんかより、若い女子がいや〜ムシがいるとか言って害も無いのに殺虫剤や洗剤をばんばん振りかけたりしているのをみると、かわいそうだなと思うときもあるけど…

『ボブ・ディラン・グレーテスト・ヒット第三集』宮沢章夫

冒頭から躓く。「高校では運動部には入らず、音楽のサークルに加わってバンドをやるのはからだを動かすことだが、とはいってもたいした運動ではなかった」って何だ?音楽サークルに入ったことは前後から分かるけど、この文章はそれを確定できていない。ただ…

『してはならないことはジュソだよ』古川日出男

図書館で借りたものにこの評価は気がひけるが、私には思わせぶりなだけで、古川氏のファン以外にこれがとどくものだとはとても思えない。

『春のすばる散歩部』

すばるを一風変わった文芸誌にしているという「だけ」しか、私にとって意味のないページ群。 いちばんつまらなかったのは山梨のワイン巡り。なかで五反田篇がやや興味深かったが、それでも金を払うようなものではない。

『アウトサイドレビュー』前田司郎

ちょっとまえも文學界の編集部には別の件で文句いったが、このエッセイ読んで面白いと思った人がいるのかなあ、編集部に。 小説ばかり読んでいる読者に息抜きの意味もこめて、何か小説以外をレビューしてもらうというコーナーなのに、レビュー以前の「アウト…

『逆に14歳』前田司郎

文章が冗長だし練りこみが足らない箇所もある。そここそがこの小説の売りなのだろうが、何か面白みみたいなものを出そうという意図が見え隠れするしながら、少しも面白くない。これがたんに面白くない以上にしらけを増大させる。また、この冗長さの特徴のひ…

『青木淳悟 「このあいだ東京でね」書評』陣野俊史

久々紙の無駄なのだが、しかも滅多に文句を言うことのない書評ページ。だって余りにひどいんだもん。 この書評纏めてしまえば、青木淳悟は小説らしい作品を書こうとしない素晴らしい作家である、ただそれだけ。一般人でも言えることを書いただけ。青木作品を…

『批評の肉体性を聴く』茂木健一郎+白洲信哉

小林秀雄は深い、よく分かってる、という事がひたすら繰り返されるだけ。とくに茂木氏などはもはや信仰告白であって批評意識がまず感じられない。(残りは、ファンでもなければ興味の沸かない私生活における四方山話。) たとえば音楽に関する批評などはなか…

『平成版聖なる結婚』原田ひ香

たんなる見開き2ページのエッセイだが、これは看過できなかった。原田ひ香って何様? 「最近、生きにくいことを声高に主張する、被害者面した加害者が増えている・・・」 いやいや、「新潮」を「週刊新潮」や「新潮45」だと勘違いしてない? 最初、例の「…

『文体の「消滅」について』宇野常寛

なんか言ってることとやってることが違っちゃってるという感じがして、読んでいて痛々しかった。もう純文学なんて一顧だにするものでもないみたいな事をいっておきながら(たとえば文学は書いてみないと分からないと主張するのも、それに反論するのも無駄な…

『鮒のためいき』戌井昭人

なんだこりゃ、という感じ。まるっきり私の嫌いな前田司郎そのまんま、という感じで、これで最後まで何もなかったらすごい時間の無駄だなあ、と思っていたら、ほんとに何も無かった。 どのへんが前田司郎かというと、日常のどうでもいい少しも面白みのない所…

高橋源一郎のエッセイ

今月は、昔すばるで内田樹とともにあれほど矢作俊彦に叱責されながら、中高生のような憲法談義を行っている。全く修正の気配なし。けっこう頑固で懲りない人である。 自衛隊というれっきとした軍隊を持ちながらそれを否定する憲法を持つという矛盾状態を、だ…

福田和也の評論

堀江敏幸は川端だった、という内容でいつもより明確な論旨だなと思いつつ読み進めるとなんかへんな箇所がある。 堀江の書いた小説についての話で、現代ではあらゆるものがマスプロダクト化されているので、堀江が書いた、生産設備が「手作り」だというのはま…

『誰かが手を、握っているような気がしてならない』前田司郎

前作はそこそこ楽しげな作品だったように思うが、今作は人間観察というより観念論であって登場人物の独白が大部分を占め内容的にも退屈なうえに、やたらと長い。ここまで長くする必要性があまり感じられず、そのぶん[紙の無駄]とさせてもらった。必要性とい…

『ニッポンの小説』高橋源一郎 ふたたび

昨日この日記を書いてしばらくして、この高橋のコラムを読み返してみたが、やはりヒドイ。 高橋は当初、小説は小説家にしか分からない、と言ったのだ。 小説は書いてみないと分からない、などと言ったわけではないのだ。 より詳しく言ってみれば、小説という…

『ニッポンの小説』高橋源一郎

とうに連載終了した田中和生の批判にたいしてあーだこーだ言い分けしている。 小説は小説家でないと分からないって言い切ったんだから、いまさら、何を言おうと無駄。他の読みの排除いがいの何物でもない。なにしろ「分からない」んだからね。 音楽家でも、…

『随時見学可』大竹昭子

まず言いたいのが、情景の描写がいまいち分かりづらいこと。主人公が見ている光景が構図的にどんなものなのか分かりづらい場面がある。そこを読者にはっきり想像させることこそポイントと思えるのだが。 話としては、小遣いで都心に(激安とはいえ)別宅のマ…

佐々木敦の佐藤友哉論

こんな評論が載ってることすっかり忘れていたんだけど、『千バク』だとかユヤタンとか言っていて、キモいのひとこと。 続きまして、『文學界』7月号より

保坂和志の文章

最初の1ページで読む気を無くす。 なんなんだろう、それは私の中では同じ意味なのではないかという予想がある、って。その予想はどこにあるんだ、誰かが保坂の心の中を予想しているのか?そうでないんなら、私の中では同じ意味となっている、って単純に書き…

福田和也の評論

たいして根拠のない断定と、中途半端な形容詞でだらだら書いてるだけとしか思えない。 なんなんだろう、無責任だからこそ物事を進ませることができる、というのは。酒の席で子供をいいわけになんか、そりゃしないだろうし、劣情を前面に出すのだって、倫理的…

『不意の償い』田中慎弥

(2007.12.17追記 以下の作品評は余りに主観的なので注意してください。削除してしまうとピンポンダッシュしているかのようだし、自分の恥としてこのままにしておきますが、この次に読んだ田中氏の作品はひどいものではありませんでした。また雑誌などに見る…

『新・連作小説 妹思い』藤野千夜

なんだこれは。 どうしてこんな中身のない男が純文学の主人公になるんだ? 掲載する雑誌間違えてない?

保坂のページ

小島信夫について、ただ誉めるだけでは芸がないので、保留するような事もあーだこうだ理屈めいたものつけて、書いてみました。というモノ。 結局小島について何が言いたいのか、さっぱり分からない。 自分が飼ってる猫の系図をのっけて、それについてまた何…