2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『笑う母』森内俊雄

母と母。実の母と、妻の母の過去を振り返る話で、かなり自伝的要素が強そう。私小説という分量もなく、総括的に振り返ろうとしたせいか、断片の記述ばかりであまり残念ながら記憶に残ってくれそうにない。読んでいるあいだ面白いだけでも充分といえばそうな…

『癒しの豆スープ』よしもとばなな

なんも特別な材料を入れていないスープのせいで病気がよくなったとかの話からはじまるが、そういうのは気の持ちようというか、民間療法なんかでそういうふうにして「治った」という例も無数にあるわけで、こういうのまでまたオカルトかよ、と片付けてしまう…

『ひらいて』綿矢りさ

どっかの写真家の写真が載ったり、ヒップホップ云々の連載がいつまでも終わらなかったり、連載も先細り感があって、「新潮」は、こりゃもう買わないかなと思い始めてから、柴崎友香の、それまでの作風を更改するような大作が載ったりして、そしてこの作品で…

『窓の内』古井由吉

これまでの似たような長さの連作にくらべて、話があっち飛んだりこっち飛んだりという印象をもった。 過去に人を殺めたことがある人のその表情のなかに、長い時間かけて、殺められた人の表情が入り込んでくる、などといういかにも古井作品らしい話がでてきた…

『新潮』 2012.5 読切作品

相変わらず古内東子と最近はチャーリーパーカーを聴いています。この組み合わせで毎日を過ごす人ってどれくらい世にいるんでしょうか? ジャージとか肌着とか仕事着を除いて、カジュアル着といえば殆ど古着で済ませているのですが、それはたんに安いからで、…

『ライオンと無限ホチキス』古谷利裕

何が書いてあったのか全く思い出せない。今パラパラめくっても思い出せない。というか、分かるためにはパラパラして部分部分をつまみ読みしてはダメな、つまりはそういうタイプの小説で、かといってここに感想書くためにいくら短編とはいえまた読み返すつま…

『金を払うから素手で殴らせてくれないか?』木下古栗

この作家については誉めに誉めまくってきたので、いまさら何の新鮮味もなく思われるかもしれないが、今作はこれまた掛け値なしの傑作で、こんな事冗談で言っていると思われるかもしれないが、木下古栗のためではなく芥川賞自体のために、芥川賞授与を検討し…

『とつきとおか』中納直子

中心に描かれるのは、あるちょっとだけ足りない若い女性の妊娠なのだが、ちょっと足りないというのは、べつに知能が足りないとかそういうのとは微妙に違うことで、たとえば抜け目ないとか要領がいいとかいわれるのとはまったく逆の性格であるということ。 小…

『クエーサーと13番目の柱』阿部和重

こんかいで最終回。おなじく「群像」連載だった『ピストルズ』が、面白かったものの今ひとつ乗れない気分も残ったものだった私にとって今作は、隅から隅まで面白かったといってもいい。 阿部らしい虚無的な主人公が多数出てきて、あるアイドルグループの活動…

『お花畑自身』川上未映子

夫が経営する会社が傾いて、そのせいで、それまで住んでいた立派でしかも趣味のよい一戸建てを、急に手放さねばならなくなった主婦のはなし。その一戸建てはとうぜんそういう種類の家があつまるような閑静な住宅地にあるわけだが、不動産屋の仲介があって買…

『群像』 2012.4 読切作品

サバの頭をカリカリに揚げたのを無理に食べていたら、口の中が傷ついて口内炎だらけになりました。 NBA終わっちゃいましたね。これからNFL開幕まで、大きな意味でのスポーツ観戦としては、ときおり見る格闘技くらいしか楽しみがありません。あれだけ大…

『テレヴィジョン、国の麻薬 無知を育て、放射能食わせる』モブ・ノリオ

まあ実際は紙の無駄に分類すべきものだが、図書館で借りたもので関係者に失礼だし、こんなものでも載せてしまう「文學界」はなんて懐深いんだろうなあ、と感じさせたという意味で、それなりの意義はあったのかも。 この国のテレビがアイドルグループの総選挙…

『春寒』馳平啓樹

ついこの間新人賞受賞したひとで短期間でこれだけの作品を書けたのならすごいなあ、と思う。というか、新人賞受賞作よりぜんぜんこちらのほうが主人公の体温というか息遣いが伝わってきて、良いんだが。作者にとってより近い、不可分といってもいいくらい近…

『窓の幽霊』田山朔美

んー。誰かが殺鼠剤を使って主人公が面倒見ている野良猫を殺そうとしているようだ、というあたりまでは面白く読めたのだけれど。 熟年離婚寸前というような状態にある高齢の主婦が主人公の小説なんだけど、ほんのちょっとしたきっかけでダンナだってそう悪い…

『原子海岸』村田喜代子

以前おなじ「文學界」に掲載された、ガンの最先端の放射線治療にまつわるあれこれを描いた小説の続き。というか、登場人物に、この治療が原子力発電所となんの関係もないと思わせ安心させちゃってるような展開は、はっきりいってこれじゃ後退だ。そりゃ直接…

『鼻の虫』多和田葉子

人間の鼻のなかに寄生する極めて極めて小さい虫の話から入る。健康なひとでもその皮膚には様々な寄生虫がいてというのを耳にしたことがあり、「鼻の虫」というものがいてもおかしくはないが、途中から話は多和田らしい非リアリズムに傾く。生の実感を喪失し…

『雪の夜ばなし』辻井喬

期待していなかったが思ったとおり。樺太で集団自決したと思われていた女性が実は生きていてその人がいまやっと明かす己の人生、みたいな内容で、イントロではその人が語ったテープがどうのこうのともったいぶった小説的仕掛けがなされているが、この程度の…

『文學界』 2012.2 読切作品ほか

渋谷だのお台場だの相変わらず新しい商業施設ができてるらしいですが、気がついたら最近、ダイソーとヤオコーとサンワしか行ってません。 というのは極端で、よくよく思い出したら、「業務スーパー」とか「カルディ」、「キャンドゥ」、「イオン」などにもご…

『ある日の、ふらいじん』伊藤たかみ

震災をおもなテーマにした小説で、被災地にいって自転車を直すみたいな話よりは身の丈で考えていてよほど共感できる内容だった。震災を機にいっきに性急になったような雰囲気にたいする違和が主につづられる。そのなかにはたぶん小説家の震災をうけて発せら…

『光(新連作シリーズ第一話)』長嶋有

光というのは山小屋に光ファイバーをひくその「光」だった。山小屋みたいなところでまでいってスマートフォンをいじったりしているところが面白みなんだろうか?記憶に残らないというほどではないが、感慨もとくになくて何もこれ以上書けない。

『過去の話(新連作シリーズ第一話)』磯崎憲一郎

文字通りというか題名どおり過去の話で、エッセイといわれてこれを読ませられれば人によってはそう受け取ってしまうような、どこまで事実かどうか分からないようなギリギリのところを狙って書かれている。もちろん、読むものの内部をさほど変えずただ共感を…

『すみれ』青山七恵

愛称が「レミ」という女性がでてきて、題名が「すみれ」というわけで、最初から少しバレつつ話はすすむ。このレミという女性は世間から少しずれていて、小説とか書く方面に人一倍関心があって、当然そういうのを目指したりするんだけれども叶えられなくて、…

『新年特別随筆』

車谷長吉は相変わらず面白いなあと読んでいて、米谷ふみ子のページで、「原発を持ち込んだ責任は?」「女性ではないとは言える」で、以降を読むのをきっぱり止める。ハイハイ、女性と子供はいつでも正義なわけですねえ・・・・・・。 たとえば、王室だとか皇室だと…

『文學界』 2012.1 読切作品ほか

もしかしたらすごく恥ずかしいことかもしれませんが、私がジャズやボクシングを好きになったのは実は狩撫麻礼の影響です。 というわけでボクシングですがパッキャオ負けましたね。階級差によるスピードの差を生かしたボクシングでずいぶんと騒がれましたが、…

『島で免許を取る』星野博美

途中楽しく読ませてもらったが、なんだかんだで卒検あっさり受かってしまったようだ。となると多分次の号で最終回となると思うけれども、五島みたいなところで免許をとって、東京みたいな、路駐がわんさかで、さいきんは自転車も車道を原付並みのスピードで…

『新年エッセイ 言葉からはじまる』

印象に残ったのは3人。星野智幸は相変わらずマジメだなあ、というのと、川上弘美ともあろうものがベトナムの電力事情もろくに考慮せずに熱くなっていたりすること。それと多和田葉子が「ポイントカードございますか」「ありません」「失礼しました」の「失…

『太陽光発言書』モブ・ノリオ

新年号というのにこの号の「すばる」ではこれしか言及する作品がない。ま私が、同時掲載の青来有一というひとの作品をまったく読む気がないからなのだが、この作品だってこれほど短くなかったら読むことはまず無かっただろう。 で内容なのだがこれ小説なんだ…

『すばる』 2012.1 読切作品ほか

ちなみに、しょうゆ煎餅より塩煎餅のほうが好きです。 欧州危機の話の続きですが、ギリシャで世論調査をして、緊縮財政に反対するという人と、EUに残留したいと思う人がともに多数だった、ということがあったそうで、そんなの両立できるわけないじゃんと思…

『空を仰いで、』こだま和文

どうやらここで書いているような防護服で暮らす毎日なんてのは来ることはないみたいだが(そんな暮らしするくらいなら現実的にいってどっか移住するよね)、大量のゴミ処理のために沢山の人が働かねばならないのは確かだ。で、もし事故がなかったとしてもい…

『特集 フクシマを考える』

殆ど読み飛ばした感じで、面白いも面白くねえもないんだが、落合恵子という人のところ頭使わず読めるので読んでいたら、なんか福島の女性のはなしで、5歳の息子が夜中に突然目を覚まして、ほうしゃのうこないでと叫ぶんです、というそういう事があったと。 …