『窓の幽霊』田山朔美

んー。誰かが殺鼠剤を使って主人公が面倒見ている野良猫を殺そうとしているようだ、というあたりまでは面白く読めたのだけれど。
熟年離婚寸前というような状態にある高齢の主婦が主人公の小説なんだけど、ほんのちょっとしたきっかけでダンナだってそう悪い人ではないんだよね、というところへ収束していって、そのきっかけや心の移り変わりを描いたあたりは悪くないし、というか読んでいてそれなりにしっくりくるし、ひとの悪意というものを正面から描いている所も好きなんだが、どうも悪い人は悪い人のままで、甥っ子とか良い人は良い人のままで、色分けがはっきりされちゃっている。一人称リアリズムなんだからこれはこれでいいんだという人もいるだろうが、やはりそこから一歩先を見せてくれる小説のほうが意義深いし面白いんではないか。