2010-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『無駄のきわみ』クレア・ワトキンス

高原氏の作品を一番面白かったと先走って書いたが、この作品も負けていない。キリスト教的なのか、アメリカの田舎的なのか分からないが、アメリカの中西部などでみられがちな、あの裏表のない善良さと、それがあまりに善良すぎてかえって悪意に見えてくると…

『会話のつづき−ロックンローラーへの弔辞−』川崎徹

高原氏などより余程「あの時代」の中心にいた川崎のほうが、今とあの時代、というふうな言及の仕方をしていてもおかしくないとは思うのだが、本人がいち早く世間に先走って枯れているだけで、あまり他人へは意識を向けないんだなあ、という。台風が中心で無…

『遍歩する二人』高原英理

絶賛はしないが、この号の群像のなかで一番面白かったかも。ここ最近の純文学には、昨今の不況が暗い影を落とすどころか、それに明確に言及するくらい影響を受けている作品が多いのだが、その中でも出色かもしれない。 もしこれが、失職しかかった学習塾講師…

『野いちごを煮る』木村紅美

料理本を「見て」ジャムはホーロー鍋(別に本当はコーティングされていないアルミ鍋以外だったらステンレスでもテフロンでもOKなのだが)で作るのが良いところまで知っていながら、なんで野いちごのジャムの作り方を人に聞こうとするのかよく分からなかっ…

『蜩の声』古井由吉

最初、霧がどうだとか、何を書いているのかさっぱりつかめないと思っていたら、マンションのリニューアルですっぽりかぶさってるのをよく見かける覆いのことだとは。 と、そこを過ぎるといつもの作品にも増して平穏な作者自身の日常といった感じの短編。 高…

『群像』 2010.10 読切作品

群像については、書いていなかった言い訳はできません、毎号買ってますから。 やはり仕事が変わったというのと、この先自分も残された時間が少ないかもと思い始めて、なんでそう思い始めたのかは今となっては不明なのですが、とにかくジャズで今まで未聴だっ…

『泥のきらめき』北野道夫

で、結局文學界の10月号から取り上げるのはこの一作だけなのだが、自分が文學界を買っている頃の新人賞の作家なのでフォローしてみるかというだけで、期待半分くらいだったのだが。 正直、琵琶湖の周りをクルマ巡らせたりした前作の方が、出来が良かったか…

『文學界』 2010.10 読切作品

このブログは放っておきながら、先日久々に東京競馬場にお邪魔しました。 台風で土曜日中止になったぶんの代替開催が月曜日となって、普通のウィークデイですから、結構ガラガラの状態で楽しめるかと思って、それで行ったんですが、なな、なんでこんなに人が…