2011-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『沈黙と声』甘糟幸子

丁寧に読んでいないせいでもあり読解力のないせいでもあるんだろうけど、主人公と、山小屋の火事で死んだ人物との関係が最後までよく分からず(義理の母?)、それが気になって、クライマックスである眼の悪い死んだ人物の実子の告白が全く心に響かない。肝…

『イールズ播地郡』松波太郎

今号のすばるで一番面白かった作品(一番面白かった作品でもこの評価なのでまだ暫く買わないかな)。 今回の作品で改めて思ったが、この人はふだん小説など読まないであろう層の人々を描くのがうまいと思う。紋切り型でもなく浅くも無く、そこらにいそうだけ…

『あたしのいい人』佐川光晴

以前すばるに載った『おれのおばさん』の物語られた世界を、今度は施設の中学生ではなく、その"おばさん"を主人公にした小説。予め言っておくと、私が佐川氏の小説を悪く評価することはまず無いし今回も何一つ悪感情はないのだが、この作品については、今ひ…

『すばる』 2011.1 読切作品

いや、こういうときですから地震以外の話題でも書こうと思ったんですが、やっぱ無理ですね。書く気がしません。 かといって地震のこと書いてもどうせ平凡な感想になるでしょうから、いっそ、止めておきましょう。殆ど何も被害がないのにポジティビティを欠く…

『雪景色老梅花』近藤勲公

もてまくっている老人が主人公。笑顔を絶やさない老妻が居ながら、なまめかしい色香漂う未亡人に迫られる。なんともうらやましいですなあ。 ていうか、なんだこりゃ。借りてきたものに[紙の無駄]は失礼だからしないけど。 白い色鉛筆で書いたものを消す、と…

『マグニチュード』円城塔

はいはい毎度科学薀蓄ありがとう、といいたくなるが、今回の特集で最も想像力の貧しさを感じさせるこの作品がもっとも近く2030年を占っているのかもしれないね。 しかし改めて、読みきれない小説だとか自動スクリプト?だとかそんなものが存在したり、あ…

『たなごころ』楊逸

携帯やネットにこもる現代人を皮肉るにしては、あまりに古典的でストレートな小説。これじゃたんなる反機械のヒューマニズム。

『コップ2030』吉村萬壱

対立の無いところに対立を、緊張のないところに緊張を。としかいえないようなこの人の小説に出てくる登場人物のありかたは、この作家を支持させるに充分である。親子を対立させるためにやってきたイエスのように。ただ今作は前半は緊張感があってよかったが…

『何が俺をそうさせたか』星野智幸

『俺俺』は面白くて且つ力作、大型電気店の仕事などもよく取材してあって今もって傑作のひとつだと思う。だからこの作家にあれこれ注文したくない気持ちが先に立つ。がしかし。この小説のような手法、つまり現実を部分的にデフォルメしたりして、現実相似の…

『自然に、とてもスムーズに』綿矢りさ

さてこの小説について何を言えば良いのやら。前作では今作と同じく読みやすくも、「いち」とか「に」とかいって、それなりに小説的な遊びというか意匠があったが、今作はそれもなくなった。なんかすごく普通になったように見えてしまう。 この事がメタに題名…

『文學界』 2011.1 読切作品

実は文芸誌で今いちばん好きな連載は角田光代さんの「新潮」のやつで、これだけは今まで連載した分のあと4倍くらいは続いて欲しいと思っているのですが、さてどうでしょうか。マザーズは終わってしまいましたし。 で、今詰まらないので読むの止めようか迷っ…

『裂』花村萬月

小説内に作者や講談社が実名で出てきたり、小説論の一部は面白く読んだが、それだけだった。ということは、つまり連載終了まずはおめでたい、と。やったね! とにかく似たような事は何度も書いたが、たんなる精液を相手の男の名前で表現したりするのが、オヤ…

『雲をつかむ話』多和田葉子

新潮で最近、リアリズムから微妙にずれた話を読んだので、たまには意匠を凝らさない、日馬富士じゃないけど真っ向リアリズムを読んでみたいと思っている作家なのだが、今のところはそう。やっぱ連載は、ひとつの作品が分量でぶつ切りになるのではなく、一回…

『赤の他人の瓜二つ』磯崎憲一郎

久しぶりだわ。頭を叩き割られるような衝撃を味わうなんて。 もう店頭にない月刊誌だからいったいどういう事が起きたのか説明してもモラルに反しないのかもしれないが、芥川賞作家である。この小説だって、これだけで単行本化されるかはともかく、この作品が…

『群像』 2011.1 読切作品ほか

バイク用品店のセールが2月一杯までと思っていたら昨日で終わっていました(これ書いてるのは28日)。頭きたので今日はちょっと熱く語ります。 先日書いた無縁社会問題ですが、それについて、無縁でいいじゃないか、と、介護などの問題を地縁・血縁で解決…