2011-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『孤独の発明』三浦雅士

高名な思想家がゾロゾロでてきて、そのエピソード「だけ」が面白かったこの連載もやっと終了してくれた。 ところで今回ん?と思ったのは、歴史事実と歴史解釈の話で、徴兵忌避者が戦後直後は英雄だったが高度成長期には裏切り者になっているのを、事実は解釈…

『ぴんぞろ』戌井昭人

女に逃げられたフリーな物書き的仕事の男が、鄙びた温泉街にいって踊り子やってた若い女性とねんごろになって帰ってくる。・・・・・・ って、滅茶苦茶純文学テンプレートな話やん。 むかしネオアコってのがあったけど、これはネオ純文学なの?ねえそうなの?とい…

『枯れ木の林』古井由吉

今回も外の物音、とくに風の音が小説の背景に吹いているが、いつにもまして平凡極まりない主婦が主人公の話。離婚してしまうから昔なら平凡とは言えなかったかも知れないが、昨今はそんなこともないだろう。 いつのまにかなんで結婚したのか分からぬくらい醒…

『群像』 2011.6 読切作品ほか

加工乳が結構飲めるということを先日書きましたが、モノ、メーカーによりますね。 任天堂の株価が下げ止まらないようですが、さもありなんというか、私の周りのひとはみんな携帯ゲームしてますからね。携帯でゲームが出来るならゲーム機も持ち歩く必要がない…

『アメリカスケッチ2.0 ウェブと文化の未来を考える 第十三回 911から311へ』池田純一

この連載、わりと興味深く読ませてもらってきたが、震災直後の回であるということを差し引いても、「この出来事を311と呼びたい」という一文でこれまでが全て吹き飛んでしまいそうになるくらいに、残念に思った。 いや言ってることが逆だ。震災直後である…

『グスト城』徐 則臣

中国作家の作品だが、なんとアメリカに暮らす中国人の話。偏見であることを前もって断っておくが、さすが中国懐深いというか、ピンキリというか、このアメリカ在住中国人が恐ろしく洗練されているのだ。 読者を楽しませる気の利いた話の運び方ときびきびした…

『ロードキル――Roadkill』パク・ミンギュ

こういう身も蓋もない殺伐さが支配していて、しかし同時に生き生きとした混沌もそこかしこにあって、わずかな光というか胎動も同時に感じさせるデストピアな未来世界というのは、古臭いが好きな世界で、まあまあ楽しく読めたので[普通]にしたけれど、優秀な…

『先生との旅』町田康

基本的に方言や俗語などに影響をうけたかのような独特の語り口というか言い回しを楽しむ作家だと思うので、この作家をアジア特集で他国に紹介するのはどうなの、と思うが・・・・・・。 以前はずいぶんと面白いと思ったものだが、こういう分かりやすい特徴はかえっ…

『もう一つの世界で』叶 弥

いわゆる変身譚?という奴なんでしょうか鶴の恩返し的な。 中国の地方での開発は金融危機以後すさまじいものがあるらしく(最近でも鉄道事故あったが)、その開発の環境破壊のせいで住めなくなる蛍が娘の姿をして訴えてくるという話なんだが・・・・・・。 近代小…

『ゴッホとの一夜』チョウ・ヒョン

なるほどタイムトラベルというのを物理的な移動ではなくこういうふうなものとして考えることもできるんだ、という所だけが読みどころ。 並行世界がそこには関わっていて、いろいろな我々の現実とは異なるIFIFバナシみたいなものがこの小説には出てくるが…

『犬とハモニカ』江國香織

空港での人間模様をうわべだけなぞった感じ。もうただそれだけ。一応複数視点の小説で、立派な成年女性が外人に子供の姉と思われるあたりとラストで少し仕掛けがあったりするが、どちらも予想の範囲内のもの。もちろんあえてそうしていて、訳の分からないと…

『文學アジア3×2×4 【第三回「旅」篇】』

今回はちょっと不作かな、とくに外国勢が。 以下一応分けて書く。

『中央駅地下街』諏訪哲史

いつものやつ。 一定の魅力ある世界を現出するのに成功はしているけど、今回はとくに面白いところといえば、ボブスレーからリュージュへの乗り換えのあたりくらいかなあ。 ところで、たしかに駅の地下街というのは、表参道○○とかニコタマ○○みたいな最近出来…

『案山子』藤沢周

ボケかかった老父とそこへたまに(月一くらい)様子見に返ってくる息子とのやりとりを描いた話。 観念的な情景描写をながながやられると時折ついていけなくなりそうになる私は、こういう作品で初めてこの作家の上手さに気づかされた。(しかし鈍いもんだね。…

『スポンジ』よしもとばなな

括弧記号を間違えたついでに新しく[面白い]他の既存カテゴリーに[スポンジ]ってカテゴリーを作ろうかと一瞬思ったよ。 いくら過去を回想する話だからって、ゲイの男友達と寝てしまいました・・・・・・って、向き合おうとしない女の子の話を今更読ませられるとは思…

『お伽草紙』高橋源一郎

高橋源一郎は群像の連載からするとほんとうに子供と暮らしているみたいで、で子供から余程得るところがあるらしくこんなんばっかり書いてないか? この間の短編は面白いと書いた覚えがあるが、大部分がパパとその子供との問答で構成されるこの小説はもはや退…

『新潮』 2011.6 読切作品ほか

歳を取ると涙もろくなるというのは嘘じゃなくて、凡人である私なんかは特にそうなんですが、せんじつTVを見て久しぶりに目頭が熱くなりました。 あの澤選手の奇跡の同点ゴール。 というのはもちろん嘘です。なんか明け方だったようですが、試合を何時ごろ…

『美しい私の顔』中納直子

そこそこ長く文芸誌を買ってそれについてのブログとかやっていると、つい技術論的な見方が前面にでてしまうがちになるが、こういう作品に最上の評価を惜しまず与えるためにも、そういうのはときに反省したいところ。「アマチュアの読み」をどこかで維持した…

『群像』 2011.6 群像新人文学賞受賞作

ずっとインスタントコーヒー飲むときに牛乳入れていたのですが、安く売られている加工乳を入れてみたらこれが結構飲めるので驚いています。 連休になると気分が高揚する人がいるかもしれませんが、公道を頻繁に利用するものにとって、3連休というのは憂鬱に…

『群衆のナンバー』穂田川洋山

谷崎瀬戸作品に触れておいて、これに触れないということはありえないわけで。 しかし正直言おう。寝た。途中で寝た。しかも二度寝た。つまり一度寝てしまって起きて、一服してまた読み始めてそして寝た。 これまでの作品から凡そ作風が固まっているのかとい…

『文學界』 2011.6 読切作品のこり

いきなりですが、たまたまこの文章を目にした人で、監視員の数の方が多い屋外プールで泳いだ経験のある人はいますか? むかし冷夏のとき一度だけ大田区のプールでそんな経験をしましたが、50×20のプールで泳いでいるのは自分とどこかのオッサンだけ。自…

『息継ぎよりも速く』上村渉

デビュー作がとてもよくて追っている作家で、じつは今回のすばるはこの作品目当て。 で、絲山秋子が「群馬」作家とするならこのひとは「静岡」作家と言ってよいのではないか、この作品を読んでそんなふうに思った次第。ただし、絲山氏のが後からそれ相当の覚…

『トンちゃんをお願い』横田創

この作家については殆ど良い印象をもっていないんだけど、なんか若い女の子が出てくるような小説しか読んだ覚えがなく、今回もそうだった。この拘りはなんなんだろうね、って私が知らないだけで、中年男性が渋く自分語りをする小説をどこかで書いているかも…

『すばる』 2011.3 読切2作品だけ

いきなりですが、中野区の地名で「中野区中野」と「中野区中央」って紛らわしくないですか? 「中野区中央○丁目△番地×号」あての荷物を「中野区中野○丁目〜」と思い込み、必死で駅の北側を探しまわり、こりゃもう降参だと届け主に電話をしようとしたときにな…

『すきずき』瀬戸良枝

うーい。この小説について何を書けば良いのやら。読んだのでなんか書こうと思うのだが、まったく関心のないような話がまったく関心のないように運んで終わる。何しろ、働く必要がいっさいなくてそれどころか良い食事を毎晩楽しんでもぜんぜん平気な一人身の…

『水際の声』谷崎由依

あまり良いこと書いてなかった作家なので、気に入るところあればいいなあと思いつつ、こりゃダメと思ったら途中で潔く止めようとも頭におきつつ漫然と読みはじめたら、深夜にかかってくる見知らぬ人の悩みを電話で受け止めるという職業に従ずるひとの話。 お…

『癌だましい』山内令南

うーん・・・・・・。単調というか一本調子の印象はぬぐいがたいな。だからそれほど楽しんで読んだとは言えない。 純文学だから、とくにストーリーなど無いっていう作品は多く、この作品も主人公が徐々にガンに侵されしかも死ぬところまで行かないわけで、その範疇…

『文學界』 2011.6 文學界新人賞その2ほか

またサッカーを小ばかにしますが「なでしこジャパン」ってなんですかね。これは本当にただのバカじゃないでしょうか? そういうネーミングはサッカーに限らないのでしょうが。 海だとかプール開きの季節ですが、むかしよく海にいったときに思ったのは「海で…