『犬とハモニカ』江國香織

空港での人間模様をうわべだけなぞった感じ。もうただそれだけ。一応複数視点の小説で、立派な成年女性が外人に子供の姉と思われるあたりとラストで少し仕掛けがあったりするが、どちらも予想の範囲内のもの。もちろんあえてそうしていて、訳の分からないところまで掘り進まないのだ。小説によって何かを変えるとかそういう事にはいかにも興味がなさそうな感じで、それは作家が自分自身も影響されたくないということで、たとえ浅くとも全てコントロールしておきたいのだろう。ただ読書という体験「だけ」をしてみたい人向けの作品。