2011-07-28から1日間の記事一覧

『アメリカスケッチ2.0 ウェブと文化の未来を考える 第十三回 911から311へ』池田純一

この連載、わりと興味深く読ませてもらってきたが、震災直後の回であるということを差し引いても、「この出来事を311と呼びたい」という一文でこれまでが全て吹き飛んでしまいそうになるくらいに、残念に思った。 いや言ってることが逆だ。震災直後である…

『グスト城』徐 則臣

中国作家の作品だが、なんとアメリカに暮らす中国人の話。偏見であることを前もって断っておくが、さすが中国懐深いというか、ピンキリというか、このアメリカ在住中国人が恐ろしく洗練されているのだ。 読者を楽しませる気の利いた話の運び方ときびきびした…

『ロードキル――Roadkill』パク・ミンギュ

こういう身も蓋もない殺伐さが支配していて、しかし同時に生き生きとした混沌もそこかしこにあって、わずかな光というか胎動も同時に感じさせるデストピアな未来世界というのは、古臭いが好きな世界で、まあまあ楽しく読めたので[普通]にしたけれど、優秀な…

『先生との旅』町田康

基本的に方言や俗語などに影響をうけたかのような独特の語り口というか言い回しを楽しむ作家だと思うので、この作家をアジア特集で他国に紹介するのはどうなの、と思うが・・・・・・。 以前はずいぶんと面白いと思ったものだが、こういう分かりやすい特徴はかえっ…

『もう一つの世界で』叶 弥

いわゆる変身譚?という奴なんでしょうか鶴の恩返し的な。 中国の地方での開発は金融危機以後すさまじいものがあるらしく(最近でも鉄道事故あったが)、その開発の環境破壊のせいで住めなくなる蛍が娘の姿をして訴えてくるという話なんだが・・・・・・。 近代小…

『ゴッホとの一夜』チョウ・ヒョン

なるほどタイムトラベルというのを物理的な移動ではなくこういうふうなものとして考えることもできるんだ、という所だけが読みどころ。 並行世界がそこには関わっていて、いろいろな我々の現実とは異なるIFIFバナシみたいなものがこの小説には出てくるが…

『犬とハモニカ』江國香織

空港での人間模様をうわべだけなぞった感じ。もうただそれだけ。一応複数視点の小説で、立派な成年女性が外人に子供の姉と思われるあたりとラストで少し仕掛けがあったりするが、どちらも予想の範囲内のもの。もちろんあえてそうしていて、訳の分からないと…

『文學アジア3×2×4 【第三回「旅」篇】』

今回はちょっと不作かな、とくに外国勢が。 以下一応分けて書く。

『中央駅地下街』諏訪哲史

いつものやつ。 一定の魅力ある世界を現出するのに成功はしているけど、今回はとくに面白いところといえば、ボブスレーからリュージュへの乗り換えのあたりくらいかなあ。 ところで、たしかに駅の地下街というのは、表参道○○とかニコタマ○○みたいな最近出来…

『案山子』藤沢周

ボケかかった老父とそこへたまに(月一くらい)様子見に返ってくる息子とのやりとりを描いた話。 観念的な情景描写をながながやられると時折ついていけなくなりそうになる私は、こういう作品で初めてこの作家の上手さに気づかされた。(しかし鈍いもんだね。…

『スポンジ』よしもとばなな

括弧記号を間違えたついでに新しく[面白い]他の既存カテゴリーに[スポンジ]ってカテゴリーを作ろうかと一瞬思ったよ。 いくら過去を回想する話だからって、ゲイの男友達と寝てしまいました・・・・・・って、向き合おうとしない女の子の話を今更読ませられるとは思…

『お伽草紙』高橋源一郎

高橋源一郎は群像の連載からするとほんとうに子供と暮らしているみたいで、で子供から余程得るところがあるらしくこんなんばっかり書いてないか? この間の短編は面白いと書いた覚えがあるが、大部分がパパとその子供との問答で構成されるこの小説はもはや退…

『新潮』 2011.6 読切作品ほか

歳を取ると涙もろくなるというのは嘘じゃなくて、凡人である私なんかは特にそうなんですが、せんじつTVを見て久しぶりに目頭が熱くなりました。 あの澤選手の奇跡の同点ゴール。 というのはもちろん嘘です。なんか明け方だったようですが、試合を何時ごろ…