2007-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『ノース・ショア』小林エリカ

全く知らない作家で、しかも改行と空白の多い詩的なスタイルの小説だったので、一見これはひょっとしてシュールで断片的なイメージを積み上げる類の小説?と思い、読むのは最後に回す事になった。 そういう小説は文字数が少ないから読みやすいかというと、じ…

『群像』 2007.4

群像4月号の読みきりは全て読んだ。 面白そうなものから読んだのだが、読み終わってみると最後に読んだのが一番面白かったのかな。 いや、やはり宮崎誉子が一番か。とりあえず、一番最初に読んだ『痺れ』が一番つまらなかったのは間違いない。

『痺れ』浅暮三文

ある人の体が徐々に痺れていき、どんどん抽象化した存在になっていくという話。 実際にあった少女への殺人事件が語られるところからスタートするので、リアリズム的なものかと思いきや、まったく違って、悪い意味で裏切られた。 とにかく、痺れた、発泡した…

『蛇行』宮崎誉子

今まで読んだ宮崎作品といえば、いきなり苛酷な労働現場に放り込まれる若い主人公と、そこを上手く泳いでる格好よい上司、みたいな作品だけだったのだが、今回はちょっと違う。 なんと専業主婦が主人公。これまでとはある意味まったく違う立場の人間といって…

『りんご』吉田修一

予想もしなかったが、中国人(厳密には香港人)の話である。 吉田修一は古本でいちど読んだことがあって、たしか『パーク・ライフ』という題名だったと思うが、読みやすい小説だがしかし見事に何も残らないな、という感想を持ったのは覚えている。 今作はあ…

『群像』 2007.4

下のほうで止めるかもとかコメントしているけど、とりあえず読んだものは書いてしまうのであった。

『不意の償い』田中慎弥

(2007.12.17追記 以下の作品評は余りに主観的なので注意してください。削除してしまうとピンポンダッシュしているかのようだし、自分の恥としてこのままにしておきますが、この次に読んだ田中氏の作品はひどいものではありませんでした。また雑誌などに見る…

『45文字』小池昌代

中学だかの同級生と大人になって偶然出くわして、淡い交歓をする、という小説にありがちなよく出来た話。 ニートっぽい存在も散りばめて、そういう現代小説としての目配りも行き届いているし、文章はとても読みやすい。上手いといっても良いかもしれない。 …

『新潮』 2007.4 読みきりなど

しっかし新潮に古川日出男が載るとは思わにゃかっただにゃー。 これは余程ヒマでないかぎり読まないので、そのつもりでお願いします。 なぜかというと、一年くらい前だったかな、古川日出男って名前よく目にするなあ、と思って図書館である歴史書を借りたつ…

その他

・『映画としての宗教』中沢新一 1回目がひどく詰まらなく、2回目は未読。 ・『狂言 なごりが原』石牟礼道子 戯曲的なものは慣れていないせいか読み辛く未読。 ・連載モノ『あまりに野蛮な』津島佑子がほんの少しだけ、面白くなってきそうな感じだ。 町田…

『プレカリアートの憂鬱』雨宮処凛

生活保護をめぐる問題なのだが、役所の窓口作戦とか、もっとその辺を書いてくれると面白かった。 それでも群像の中では面白く、込められたメッセージは、やや単純ではあるが、共感できる部分もある。 資本のグローバル化というものの力は凄まじいものだと思…

古井由吉+松浦寿輝の対談

しごく真面目な対談。松浦の人柄と言うべきか。 エピソード的なものとか笑いの要素が少なく、読んだ側から内容が自分に残らず、流れ出していく感じ。 古井さんは、どうしてもホストではなくゲストになってしまうから、対談相手が面白くないと。

『セーター』レイ・ヴァクサヴィッチ 岸本佐知子訳

すごい短い作品で、しかしなかなか描写や会話に味のある作品なんだけれど、最近はこういったミニマリズム系作品の背景みたいなもの(生活の余裕感)とあまり相容れないせいか、魅力は感じない。

『B39-Ⅱ』吉村萬壱

その後を描くのかと思いきや、いつかの文學界に載った作品の裏バージョン的内容。 あんなどうでも良い話の裏を読みたいとか、読んで良かったとかいう人がいったいどれくらいいるのだろうか? 労働の現場にしてもよく分からぬゴム製品という発想そのものは面…

『新・連作小説 妹思い』藤野千夜

なんだこれは。 どうしてこんな中身のない男が純文学の主人公になるんだ? 掲載する雑誌間違えてない?

『群像』 2007.3 続き

オイいつまで3月号か、という疑問に答えるのなら、群像の4月号も買っていて、4月号も連載だけは読んだよ、と。 しかし、最近の群像はつまらんなー。 あとこの状態が何ヶ月か続いたら、マジで買うのやめるぞ。 町田康の連載と、プレカリアートの憂鬱しか面…

『文學界』古本にて

たまたま古本屋で手に入れた一年位前の文學界の巻末のページに、高橋源一郎の書いたこととして、こんなような事が書いてあった。 「面白い」という言葉は、何も言っていないに等しい言葉だ、云々。 ありゃりゃ、この日記ブログのレゾンデートルを揺るがしか…

『ピカルディーの三度』鹿島田真希

いや読んで損したなあ、これは。 もともと新潮に載った『6000度の愛』(だったっけ?題名)からして至極退屈で途中で止めていたのだから、期待するほうがどうかしていた、といえばそれまでなのだが。 男性主人公のモノローグというスタイルで、鹿島田と…

『群像』 2007.3 ひさびさ更新

さいきんやっと3月号の巻頭小説を読み終わったというていたらく。 原因はあるマンガを読んでいたのと、休日には相変わらずこまごまとした用事が多いのだ。

『神器―浪漫的な航海の記録』奥泉光

がぜん、佳境に入ってきた感じがします。面白くなってきました。 どんな突拍子も無い作戦が発表されるのかと思いきや、アメリカ軍の支配地域の友軍の生き残りを救出するのだという。 そこへ行くまでが大変で、普通に考えれば救出どころか辿り着くのも難しい…

『太陽を曳く馬』高村薫

いやはや物語がまったく進まなくなってきました。それで今回は[普通]に下げようかと思いましたが、それでも考えてみたら、やはり、何かあるかもしれないといつも2番目に読んでしまう作品であり、それは暫く変わらないだろうなあ、と。 今回も旧かな使いの文…

『新潮』 2007.4

新潮の連載を立て続けに読みました。 それとは関係ないですが、群像の連載も読もうと思い立って図書館から借りてきてまでして読んだ町田康の『宿屋めぐり』が最近面白くてしかたありません。

『決壊』平野啓一郎

今回は謎の男の独白めいた教唆でほとんどが占められていて、あまり起伏のある展開ではなかったが、それでもやはり面白い。冒頭なんとも後に引きずりそうな伏線もあり、いつもこれからどうなるのかドキドキしながら、あっというまに読み終わってしまう。便所…

『新潮』 2007.4

プチ悲しい気分で買ってきた『新潮』。 やっぱり古川日出男のは、あの調子で凝りに凝ったスタイルで、平易な単語を使っていながら読み易いということもないものでした。しかも長い。 願わくば古川日出男目当てで買った人たちが他の作品にでも注目してくれれ…

文芸雑誌各誌4月号

4月号各誌が発売されました。 けっきょく3月号に関しては『文學界』は買いませんでした。図書館で借りるとしましょう。無駄使いは厳禁です。 以下、各誌の今月の様子。 『群像』は吉田修一がトップ。読まない可能性大。 他のが、宮崎誉子、浅暮三文、小林…

『歌うクジラ』村上龍

じつは一番読む気が進まないのが、この小説だったりもする。 ではなぜ[オモロない]にしないのかといえば、それでも読んでいればそこそこ面白く読めるからで、でも、これもSFマガジンのほうがあっているんじゃないのか? この手の小説はほんと、むかし結構…

『骸骨ビルの庭』宮本輝

こちらは主人公のビル管理人に脅迫状めいたものが届いたりして物語的な起伏というか、連載作品らしい、次はどうなるの?という部分をもった作品だが、人物の造形がいまいち浅い。みんなどっか明るくて世間的な規範のなかに大人しく収まってる感じ。 だから素…

『あまりに野蛮な』津島佑子

最初のうちは "あまりに退屈な" 小説だったけど、徐々に過去の植民地時代の台湾に渡った女性のプロフィールが明らかになるにつれ、少しづつ人物の陰影感があらわれてきた。 台湾の現地民たちと入植者との大規模なトラブルについては、恥ずかしながら知らなか…

『群像』の連載

ときどきサボっていましたが、『群像』の連載をリアルタイムで読もうということでやっていた、それぞれの作品の連載開始からのフォローが間もなく終わりそうです。 今、今年の1月号の連載を読んでおります。

『あなたの呼吸が止まるまで』島本理生

小学生の独白というスタイルであるが、それほど無理がない。ですます調にしたのも良い判断だと思う。 いくら今時の小学生がマセているからといって、男だの女だのをここまで対象化して語れるものだろうか、とか思ったりもするけれど、ぎりぎり許容範囲。(た…