『蛇行』宮崎誉子

今まで読んだ宮崎作品といえば、いきなり苛酷な労働現場に放り込まれる若い主人公と、そこを上手く泳いでる格好よい上司、みたいな作品だけだったのだが、今回はちょっと違う。
なんと専業主婦が主人公。これまでとはある意味まったく違う立場の人間といっていい。ただし、作風はほとんどまったく一緒で、テンポの良い会話を中心としたスタイルで、テーマの中心にあるのはやはり労働である。
専業主婦である主人公が浮気をされてどうするか、といったときに、問題にするのは、愛があるかないかよりもむしろ、働かずに済むかどうか、なのである。
宮崎誉子といえば、若者特有のふざけたような会話が多く出てくるので、軽い小説家と勘違いされるかもしれないが、読まないのはもったいないと思う。中身はふざけているようで全くそんなことは無く、出されているテーマも重い。
また、ウケを狙うというか、楽しく読ませようという工夫がある。これは肝心なところだろう。
ところで、今作は、会話のテンポの良さにズルズルと読んでいたせいか、ある事をすっかり忘れていたのに気づかされた。
なかなか上手い構成で、ここにも宮崎誉子という作家の才気を感じた。