2007-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『トゥワイス・トールド・テールズ』金井美恵子

こちらは覚悟した以上に読み辛い。 この読みづらさに比べれば、フォークナーだろうがピンチョンだろうがほとんどの小説は格段に読みやすい。 そしてこの読み辛さに耐え丹念に読み続ければ、面白い世界が広がってくるかというと、そんな事は全くないのだから…

『声に出して読みたい名前』中原昌也

中原昌也はすごい。こんな朗読会向けの小品が堂々載るくらいだから、よほど注目される存在なんだろう。いつもブツブツ書きたくないよ、でも原稿料は欲しいよみたいな事を言ってるような印象だけど、じつは大物。 今回は、人の名前とそれを読み上げる人の話を…

『心なき者、恋するべからず』伊井直行

若い華やかな女性には目もくれず、ゴミ捨てだの掃除だのしてる年上の女性に恋してしまう話。 全く正反対なくらい性急に結婚を決めようとする友人との対比で、自分の恋というものに関する特異さを語るわけだが、とくに際立って特異という印象もなし、恋した女…

『新潮』 2007.6 続き

今よく考えてみると、『新潮』の最新号って、連載がなかったら私的には絶対に買わないような執筆陣ですね。 取りあえず短いものから読んでみました。

対談:東浩紀+仲俣暁生

対談の題名から、こないだまで文學界で連載されていた北田なんとかさんのと似通ったテーマの話かと気が進まなかったが、文学に関わる話もちょびっと出てきて、最後まで読んでしまった。 下北沢とかその他都市の再開発に関する議論では、仲俣とかいうひとが東…

対談:富岡多惠子+辻井喬

印象としてはお互いをヨイショしてばかり、という感じ。富岡さんの自分の本についての話で、ああこの人はけっこう深いところまで考えて書いてるんだなあ、というのは分かった。ただそれでも、現状富岡さんの作品を手にとるまでの興味は持てずに終わった。

『新潮』 2007.6 対談など

どうも巻頭の大江健三郎がとっつき辛そうで放っておいた新潮のチェックです。

『上機嫌な私』小谷野敦

文學界じたいは取り上げても、小谷野氏のこの連載はあまり言及してこなかった筈。というのは、はてなダイアリーのご本人の日記を知っている私としては、その面白さに比べ文學界での小谷野氏はちょっと大人しくて物足りず、あえて言及する気もしなかったので…

『ねぐら探し』木村紅美

これでは上質な紙芝居だな、というのが読み終わったときの最初の感想。 めでたしめでたし、で終わらないという所が違うだけで、作品の最初から最後まで、悪い奴は悪いまま、良い人は良い人のまま。 隣に越してきた人などは、まだ姿の見えないうちから、きっ…

『文學界』 2007.6 続き

文學界新人賞の2作品はまだ読んでません。オブ・ザ・ベースボール、という作品を最初の数ページで読む気なくしてそのまま。 別に川上弘美が推してたから、っていうわけでは無いんですけどね。もう片方のほうがとっつき易そうではあります。

『ニッポンの小説』高橋源一郎

川上弘美の話はなんか終わったみたいなので、今月号のは、初めて最後まで読んでみた。 すごくつまらない。 ひらがなを多用するのは川上弘美に似ていて、ダラダラしているのは保坂和志に似ている。ただ何を言いたいのかという点で、保坂ほど分かり難くはない…

『冷たい十字路』津村記久子

前作ほど大絶賛ではないけど、やっぱ面白い。 津村作品では登場人物がなぜかカタカナで、でもそれが虚構性というか作られた物語という感じを与えるよりも、むしろより現実に迫ってるように感じられるのはなぜなんだろう。 この登場人物への微妙な距離感覚が…

『母の記念日』楠見朋彦

そこそこの分量があり、期待が大きかったぶんの反動が[普通]という評価になったかもしれない。 これが、普通の新人賞かなんかの作品であれば、すごい書ける人が現れたなー、となるくらいのものではある。 キャラの整合性もとれているし、会話中心の描写も無…

『文學界』 2007.6 期待した2作品

2作品とも常識からはずれるくらい歳の離れたカップルを描いてるのは驚いた。タマタマなんでしょうか、これは?

文學界新人賞の選評

文學界らしいというか、みんな真面目でつまらない。 ちょっとは読ませようと芸を感じさせるのが、島田雅彦と、私が嫌いな川上弘美。 島田雅彦は小説はなんだかなあ・・というものが多いが、こういうエッセイ的なものはたいてい面白い。 今回も、正確な引用で…

『鳥の眼・虫の眼』相馬悠々

巻末コラムである。文学業界に一言申す的な内容の事が多く、真面目な侃侃諤諤といったところか。 先月号では城山三郎が亡くなったこととからめて、内向的な、あるいはアバンギャルドな現代的な小説に一言。 今月号では本屋大賞って何だよ騒々しいな、とこの…

『心はあなたのもとに“I'll always be with you, always”』村上龍

初回からいかにも恋愛小説的な内容だけど、主人公の男性は「勝ち組」である。金融関連業をハードに営みつつ、くつろぎとしてシティホテルのスイート取ってそこに娼婦呼んだりする。また、他人の心のある部分を読みとれる(感じ取れる)能力を持った、あるい…

『文學界』 2007.6

ちなみに昨日の『文學界』の感想は先月のやつです。ひと月余り古いやつ。今日からやっと新しい号。

『メディア・フィロソフィー』高田明典

今回はいじめがテーマ。 高田さんはアマゾンで見ると一見、入門書ばかり書いている人みたいで、入門書ばかり書いていると軽視されがちなのかもしれないけれど、いやいや、今回もなかなか読ませる。読ませるどころか、目ウロコ落ちと言っても良いかも。 正確…

新人小説月評 田中弥生・松井博之

今まで一度も言及してないけど、この短評はけっこう楽しみにしてたりする。侃侃諤諤とおなじようないみで。 文芸雑誌って買うと先ず、このへんの気楽に読み飛ばせるところから読んだりするので、毎号読んでるんじゃないかな。 田中氏などは、漫然と読んでる…

『文學界』 2007.5短評(月評)など

アマゾンがキャンペーンやっていて、4000円くらい買うとポイントプレゼントのエントリーになるんで、前から欲しかった高い哲学書買ってしまいました。理解できない箇所の方が多いです(何しろ中島義道の連載でも分からない処とかあるくらいですから)。ちょ…

『アサッテの人』諏訪哲史

いや最高でしょ、これ。 とりあえず、このブログに文芸雑誌の読書を記録しだしてから最高じゃないかと思う。佐藤友哉なんぞに三島賞わたすくらいなら、諏訪氏に芥川賞あげるべきだろう。 たまたま三島賞の発表のタイミングで読んでいたもんだから比較するだ…

『群像』 2007.6 新人文学賞

なんか最近眠気がひどいのと、アマゾンがキャンペーンやってて一般書籍を買い込んだので、文芸雑誌書読むの、進んでません。(いつもこんな事書いてるなあ。) 月日が経つのが早すぎます。

その他言いたいこと

いつもの巻末の鼎談のメンバーは先月号と一緒なのだが、鹿島田真希の格好が先月と変わらないのはどういう事なんだ。いや先月号の写真を目の前にして比べたわけでないから気のせいなのかもしれないけれど。 一回撮った写真を使いまわししているということなの…

『地上生活者』李恢成

北朝鮮が地上の楽園と思われていた頃の日本では、朝鮮人の学生たちはこんなふうだったんだ、とあまり深く考えることもなく読んでいる。 先月か先々月かの、北朝鮮寄りの(というかほぼその下部組織といっても良いくらいの)朝鮮人団体の集会に、全学連の上層…

『宿屋めぐり』町田康

今月はなんか分量少なくないか? 行間が広めなのでそう思えるという、私の気のせいなのかな。 相変わらず主人公の、主の意思をあれほど常に気にしていながら、一般人あいてに極悪なことを平気でしてしまうその俗物っぷりが面白いのだが、今月は進展がほとん…

『歌うクジラ』村上龍

こっちは輝さんの小説と違って、どこが歌うクジラなのかさっぱり分からない内容。 物語そのものにはあまり進展はないのだけれど、それでも今月は文学らしい、現代社会への批評性を感じさせるものだった。 例えば今、不祥事があったときなど会社・団体が謝罪…

『骸骨ビルの庭』宮本輝

いよいよ主人公が自ら管理を任されたビルの庭で、野菜などを植えようとするような話の段取りになってきて、やっとなんか題名どおりのことになってきた。あまりにも分かりやすい直接的な題名だった、という事になるけど。 一応主人公を脅しているのがどういう…

『あまりにも野蛮な』津島佑子

なんか面白いな、と感じてしまっている。意外にも。それどころか、ちょっとした感動めいたものさえ感じる所まで引き込まれながら読んでいたりするのだ。 最初の2、3回はむしろ退屈さえ感じていたんではなかったっけ? 植民地時代と現在の台湾が対照的に描…

『ピストルズ』阿部和重

普通ピストルズといわれると拳銃を思い浮かべるわけだけど、pistilsとなっていてスペルが違うなあどういう意味なんだろうなあとはずっと思っていて、今日調べたらめしべとかそういう意味らしい。 ついでにこの作品が神町クロニクルの第二部であることも知っ…