2007-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『地上生活者』李恢成

さいきんこれが面白い。今描かれているのが、北朝鮮が楽園と思われたころの在日の人たちの、その生活部分というより、政治的部分を描いているからなんだと思う、きっと。 北に対する思いが楽観的であったり確信的であったり(ただし主人公以外)、その様子や…

『ピストルズ』阿部和重

これだけ連載の最初から読み直していたので、ここに書くのが遅れた。なぜって最初のうち隔月掲載で内容ほとんど忘れてしまっていて。 でまあ普通に面白いんだけど、この先、この神町の歴史がどれほど語られるかによっては、私的にはもっと面白くなりそう。政…

『群像』 2007.7 連載作品つづき

対談ばかりでモチベーション上がらないうちにもう7月ですね。 辛うじて窓全開で暮らせる気温なので、ずっと部屋のレイアウト変えたり掃除したりの最近でございます。 その間、昔のCD聴いたり、懐かしいマンガなど読み出してしまって、文芸誌どこ、って感…

『宿屋めぐり』町田康

いつの間にかオネエ言葉になってしまう、という新しい伏線も出てきたが、この作品もストーリーの進展は殆どない。それでも連載の中では一番面白いけどね。 この主人公の、ああでもないこうでもないと理屈探して長々といろいろ考察する所がまあ、面白いわけだ…

『歌うクジラ』村上龍

そうは簡単に主人公もヒロイン的女性も殺されないだろうと思っていたら、中国系の黒幕っぽい人の引き下がり方がここまでアッサリしているとは多少拍子抜け。 でもずーっとここんとこ基本的には、チェイス・アクションだったので、この一本調子が多少変化が出…

『骸骨ビルの庭』宮本輝

今月はあまり進展はなし。 主人公の中年のビル管理人が、そのビルの居住者から変わり者みたいな事を言われる。登場人物が言う事なので心にもない事かなんらかの引っ掛けかもしれず、別にいいんだけど、あまりにもそんな実感に乏しいと思った。 主人公の今ま…

『あまりにも野蛮な』津島佑子

日本が植民地を持ってた頃の、その植民地での話ということで、毎回興味深く読める作品。 いつもまにか、台湾で慣れない生活を強いられている女性主人公に感情移入してしまったりもするのだが、ひとつだけ言いたいのは、その彼女の山に対する思い、とか現地人…

『群像』 2007.7 連載作品

いい季節です。初夏の頃の雨の日って読書に最高ですよね。 家のまわりが多少騒がしくても雨音が紛らわせてくれるし。でも今年は違うのかなあ。 今日は簡単に。

保坂和志の文章

最初の1ページで読む気を無くす。 なんなんだろう、それは私の中では同じ意味なのではないかという予想がある、って。その予想はどこにあるんだ、誰かが保坂の心の中を予想しているのか?そうでないんなら、私の中では同じ意味となっている、って単純に書き…

福田和也の評論

たいして根拠のない断定と、中途半端な形容詞でだらだら書いてるだけとしか思えない。 なんなんだろう、無責任だからこそ物事を進ませることができる、というのは。酒の席で子供をいいわけになんか、そりゃしないだろうし、劣情を前面に出すのだって、倫理的…

『カデナ』池澤夏樹

先月号のは感想アップしていなかったけど、普通に、まあ面白く読める。 ただ、今の段階で、次の号をいち早く読みたいな、とまでは行ってはいない。 先月号で、アメリカ軍の極東地域の基地内でのある恋愛の話だけでなく、そこに隠されたスパイ行為みたいな話…

『神器―浪漫的な航海の記録』奥泉光

今月号はちょっと話が停滞気味ではある。 ほとんどが老艦長の独白で占められているのだが、この艦長の過去にたいしてあまり興味を感じない人にとっては、今月はつなぎの月という感じか。 明治建国以降、日本という国の中心にはつねに軍というものがあって、…

『太陽を曳く馬』高村薫

過去の殺人事件をめぐるもろもろの話から、旧字体による絵画論までいきついて、やっとこさ今の話になってきたのだが、なんなんだろう、この事務局長の「語り」の面白さは。 彼のその怪しさ、底の知れなさを、地の文で安易に形容詞を使って表現してしまってい…

『決壊』平野啓一郎

まったく目が離せない。 いつもこの作品についてふれる度に同じ事書いているような気がするけれど、新潮買ってきて、一番にこれを読んで、これを読んでいる間はもう没頭である。で、読み終わってやっと、今月は他にどんな人がどんな事書いてるのかなあ、と他…

『新潮』 2007.7 連載作品など

『新潮』は、さいきんすっかり連載作品、しかも小説のそれしか楽しみがなくなってるんですが、近くの本屋で入荷数のいちばん多い文芸誌は新潮なんですよね。 なんで? 出版界・書店界のことは疎いもんでよく分かりません。しかもなんか、いちばん薄いし。 連…

『主題歌』柴崎友香

よほど印象が薄かったせいかあまり内容は覚えていないが、前回読んだ柴崎作品である大阪の昔の写真を集める女性のはなしと、基本的にはまったく変わらない。 というかあの作品の方がまだストーリーがあったのではないか。 結局、若い女性の日常を切り取って…

『群像』 2007.6

7月号の感想ぜんぜん書いてませんが、連載作品を今あれこれ読んでいる所。 今月号はなんかどの文芸誌も対談が多くて、買う前から萎えてまして、筆も遅れがち。

『だだだな町、ぐぐぐなおれ』広小路尚祈

最後まであまりペースが変わらず、それでも退屈することなく読めた。これだけで私的にはもう合格。 これだけ面白い作品が肝心の新人賞にならなかったのは、まず相手が悪かったことと、それとやはり題名からして町田康を思い浮かべてしまうことだろう。ある意…

『群像』 新人賞

とりたてるほどの作品ではないかもしれないけど、好感持てたのでアップしておく事にした。

『湖水地方』寺坂小迪

これは少女漫画だな。出てくる男性がみな格好いい。 会話もなんか地の文章のようで、不自然だし。今日はじめて会ったひとにそんな言い方するか、と。 書こうとするテーマにかかわりのある部分ではないが、これらの欠点は、あまりにも重大。すくなくとも私に…

『一枚の絵』佐川光晴

佐川氏の作品は、なんか安心して読めるな。 彼の作品はどれもちょっと保守的な感じもするけど、こういう奇をてらってないようなあり方が、最近は好きなのだ。中学生でも読めるかもしれないような、平易で読みやすい普通の文章で、ある程度人間存在の深さを書…

『龍の棲む家』玄侑宗久

有吉佐和子の恍惚の人をたまたま読んだことがあるんだけれど、そんな感じの、ちょっと通俗的な小説。(ボケた人にもまだ、美を感じる気持ちが残っていて、ホロリとするようなところなど、恍惚の人にもそんなシーンがあったような。なかったっけ?) 龍という…

『文學界』 2007.5 読みきり

図書館に返したつもりになっていた文學界の旧い号の読みきりが、どれもトリッキーでない読み易そうな作品だったので読みました。 各誌7月号はこれから手に入れます。ポイントのつくアマゾンで買うかどうか悩んでます。

『舞い落ちる村』谷崎由依

新人の小説として技術的な意味でとてもよく書けていると思うけれど、内容に納得いかない、という所なので評するのに少し困った。 内容に納得いかない、というのはうまく言えてないけど(いや私の拙い表現力ではうまく言えてる事なんか滅多にないんだけど)、…

『オブ・ザ・ベースボール』円城塔

古い海外小説(といてもほぼアメリカ)の翻訳を読まされたような感じ。 ヴォネガットとかバーセルミとか、そんな感じの、ポップという言葉が目新しかった頃の。 いつでも途中で読む手を休められそうな短い章立て(そのおかげで何度か途中で読むのやめたが)…

『文學界』 2007.6 新人賞その1

気が付けばもうそろそろ文芸誌各誌、新しい号が出るころですね。