『決壊』平野啓一郎

まったく目が離せない。
いつもこの作品についてふれる度に同じ事書いているような気がするけれど、新潮買ってきて、一番にこれを読んで、これを読んでいる間はもう没頭である。で、読み終わってやっと、今月は他にどんな人がどんな事書いてるのかなあ、と他ページをパラパラやる、という流れ。
例のイジメられっ子が殺人を教唆されるあたりから、そんな予感を匂わせていたのだが、いよいよ弟くんが既にこの世の人ではないことが確定。ただ、ここでひとつ事実が明かされいくらか弛緩するかといえば、少しもそんな事はなく、ハイテンションのまま、こんどは主人公と刑事との微妙なやりとりへと移っていく。
弟くんの奥さんや、すでに精神を病んでいる老いた父親が死を目の当たりにして、どのように変わったのか、変わっていくのか、にも興味は尽きない。出来の悪い子ほど可愛い、ではないけれど、弟くんの死の不条理さが、「これは兄の責任」という条理へと転嫁されてしまいそうである。