2010-12-01から1ヶ月間の記事一覧

エッセイ『ある日の帰郷』淺川継太

穂田川氏ほど長々ベタ誉めしてなかったかもしれないが、彼とこの人が2010年の最大の収穫で、それを思うと、文芸誌を買うのを途中から2誌にしたわりには充実した年だったような。 というのは、この作家のエッセイを読むのは2度目なんだけど、なんか面白…

『対談・アンネ・フランクと私たち』小川洋子×赤染晶子

何だコリャ、赤染晶子はもちっと若いと思っていたが、小林よしのり世代だったのか。アウシュビッツに、そこの所長だった人物が戦後、公開処刑されたことを、同じ残酷さを感じるとかなんとか、すっとぼけた事を言ってる。そしたら、ヨーロッパなんかいいから…

『あぶらびれ』穂田川洋山

第一作(厳密には一作目ではないかもしれないけど)への自分の評価が間違っていなかったと思うばかりの素晴らしい出来。 文句のつけようがないのだが、ちょっと思うところを書くと、今回は俗っぽいというか、ちょっと芝居めいた人物も出てきたりする。という…

『小指が重くて』青来有一

南方での戦争体験が出てくるが、こういうテーマなら、最初から最後までそのものずばりで終始書いた方が良いと思うわ。記憶で書いてるが、登山だとか、昔の女性への想いとかじゃま臭い。なんか無理に現代に重ねたりして、あの体験を語り継ごうとか思ってたり…

『きれいごと』大道珠貴

未婚の中年女性の鬱屈みたいなもの、か。それでも男性経験は色々述べられていて、結構もてるんじゃん、世の中にはこうは行かない女性も沢山いるぜよ、とか思いつつ、その付き合った男性もとくに面白くはない。シャツに乳首が透けている男性がいや、とか一昔…

『白』花村萬月

この作家の、作家自身にかなり近い人物が主人公であろうこういう作品には、強烈な自負みたいなものを感じて、それは決して嫌なものではなく、最近はちょっと太刀打ちできない所もあるなくらいに感じている。でもまあ残念ながらというか、ああこれは説得力あ…

『文學界』 2010.11 読切作品ほか

またちょっと音楽の話なんですが、夜中にテレビで、ユニバーサルかなんかの、オールディーズを延々流し、その後にちょっと高くない?という値段でCDを売ろうとするCMなのか音楽番組なのか分からない番組があって、日本のフォーク特集なんかあったりする…

『トロンプルイユの星』米田夕歌里

最初、地震で主人公自らに生じる俯瞰的な特殊な感覚を描く。この感覚が読んでいて落ちてこないというか、どうにも共感を生じないのだが、あとで作者の述べていることを合わせるとそんな事は当初から承知している事らしい。どうも自分は世間の人にはない感覚…

『すばる』 2010.11 すばる文学賞

ずっと気になっていたことがやっと解決した感じがします。 うどんの事です。貧乏を極めていたときは、学校の給食で出るような茹でてある太麺うどんを買ってきて、シャワーの熱湯で湯がいて、一パック100円以下のレトルトカレーと混ぜて食べたものですが、…

『落ちぶれて袖に涙のふりかかる』西村賢太

新潮のこの号でここで言及するのは、新人賞2作とこの作品だけ。長野まゆみは最近新潮に載った某大思想家の娘の書くものより遥かにクレバーな作品で面白いのだが、言及する手がかりの無いようなやはり純文学なのかな?と思う作品だし、多和田葉子は流石に読…

『ののの』太田靖久

ちらっとこのブログで触れた記憶があるが、新潮新人賞らしい作品、というか。ええ、誉め言葉ではありません。 甲乙つけがたいから二作同時受賞というのが通常の感覚ではないかと思うのだが、私の中での甲乙は鮮明である。 ある過去の事件についての語りから…

『新潮』 2010.11 読切作品ほか

もうそろそろ新年号が発売かというときに、11月号の感想を書こうとしている愚鈍な人間がここにいます。 そういえば、先日この世に生を受けはじめて世論調査なんてもう止めれば、と思いました。設問は菅政権の北朝鮮政策についてなんですけど、いつの間に、…