『白』花村萬月

この作家の、作家自身にかなり近い人物が主人公であろうこういう作品には、強烈な自負みたいなものを感じて、それは決して嫌なものではなく、最近はちょっと太刀打ちできない所もあるなくらいに感じている。でもまあ残念ながらというか、ああこれは説得力あるかもね、程度にしか感じなかったりもする。ちょっと遠いんだよね。孤高とか近寄りがたい、というのとも違う。関係ないかな、みたいな。
確かにその色の鮮烈なイメージを喚起する力があって、この連作もいずれまとめて商品となるだけのクオリティは維持している。
のだが、ここでもうひとつ。なんか身体感覚を絶対視するような所も好きになれないなあ。絶対視というのは信頼という事ではなくて、負のものであっても逆のものであっても、とにかくそれを重大視してそこから語ろうとするところが。また、その語り口も、興奮状態にあることに疑いというものがないエロ小説的なテイストも感じる。とうぜん好きになれない。