2008-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『かわいそうな鬼』田山朔美

よくまとまった小説。無駄は無いし、リアリズム小説としては及第点を間違いなくクリアしているだろう。 私はわりと面白く読めた事は読めたのだが、それでも、やはりあまりにも純文学ステレオタイプといった部分が印象に残る。これを退屈と思ってしまう人の気…

『宿屋めぐり』町田康

さいきん飽きてきてたので終わるにはいいタイミング。これまでの連載のなかで、正しい生き方とは何かとか、世間の間違った生き方を告発するような描写もたまに見られて、批評的な小説ではあったが、終わってみるとなんかそれも中途半端な印象は否定できない…

『群像』 の連載、『文學界』読切−受賞第一作

最近小麦が上がってインスタントラーメンとか値上がりしてますが、国内産の野菜まで値上がりする理由が分かりません。 これがインフレってやつなんでしょうか。100円ショップはどうなってしまうのでしょう。99ショップの野菜はどんどん小さくなるのでしょう…

『神器―浪漫的な航海の記録―』奥泉光

この人の、「日本人」への拘り、「かつての日本人」の現代への呪詛への拘りも敬服する。ここんとこ3号連続くらいにわたって、現代の我々のあり方が彼らにより告発されるのだが、私はこれを読むと本当に畏まってしまう。 物語自体はクライマックスの気配あり…

『太陽を曳く馬』高村薫

高村薫の、今になってまだオウムを言葉にしようとする執念に敬服する。 この形而上的な会話の、基礎知識がないと訳の分からないことをそのまま出してくるのも凄いが、誰がしゃべっても全く同じであるかのような見分けのつかなさがいい。凄いよー、だって僧侶…

『あまりに野蛮な』最終回 津島祐子

現代と占領中を往ったり来たりして連載としては非常に読みにくかったこの連載がいきなり最終回。前月号ではそんな予告は無かったはずなのに、何か事情でもあったのだろうか。 内容もどちらかといえば喰い足りず、リーリーの子供が死んだ理由も結局交通事故で…

『群像』『新潮』の連載について

私の数少ない自慢ネタのひとつ−今まで一度もゴルフをやった事がありません。

『関係の化学としての文学』斎藤環

やっと連載終わるのかと思ったら、あと2、3回あるらしい。やれやれ。 今思ったんだけど、ラカンを持ち出して語られる評論って、斎藤氏に限らず面白かった試しがないんだよな。

『生き延びるためのアメリカ文学』都甲幸治

先月号の、デリーロを弁護した9・11テロの解釈はありきたりで少し退屈したが、4月号ではエリクソンの近況を教えてくれた。昔は結構私も翻訳小説読んだのだが、今でもエリクソンの作品は棚に残している。重たい内容のものが多く、あまり再読もしないのだ…

『いはねばこそあれ――男色の景色』丹尾安典

三島由紀夫とか薔薇族のこと書いた回だけすごく面白かったのに、中世〜近世の男色の話になると、そんなもんだろうな、ということで全く下世話な興味が湧かない。どうしても心の中で全く関係のないころの話となってしまうのだ。危なさを感じない。ちょっとこ…

『高畠素之の亡霊』佐藤優

断然、文學界の連載のほうが面白いことに変わりはないのだが、先月号でなんで柄谷が佐藤優を評価するのかがおぼろ気ながら分かった。たんなる関西つながりかと思ってたんだが。 マルクス評価において、よく似ているのである。思想をそこに止まるものではなく…

『連続するコラム じゃ、悪魔はいるのか?』山城むつみ

こちらは新潮で唯一たまに面白いことがあるコラム。今回は動物保護問題から始まって、マルクスまで話をつなげていく。動物保護の現状とか結構面白く読めたし、動物を殺すことが虐待とされるのは「売る」ことによる、というのも説得力がある。日本でも話題に…

『四方田犬彦の月に吠える』四方田犬彦

3月号はたしかヤクザについて研究している外国の研究者について書いていて、この連載で初めて面白かったのだが、今月は今いろいろと話題の映画『靖国』について。 この映画の内容について四方田氏はその殆どを説明してくれていて、まあ中国人監督の思いとか…

『新潮』 2008.4 各コラム

最近セブンイレブンが自ブランドの商品あれこれ出してますが、100円そこそこで買えるカップヌードルタイプが結構旨かったです。 よほどの機会でないと二度と食べませんが。

【大座談会】ニッポンの小説はどこへ行くのか

まず印象に残ったのは古井さんかなあ、やはり。誰の否定的言辞でも、そこからポジティブな事を語ってくれる。 一番頭の悪そうなことを言っているナオコーラに対して皆けっこう暖かい。私も意外と彼女には嫌悪感を感じない。外部からみた場合の「小説」をそれ…

文學界の連載

楽しみにしている連載がないのですっかり忘れていた文學界の連載。面倒なのでまとめて言及。総じて他誌より面白くないので[オモロない]にしてみた。 新連載が始まっているのを今ごろ知った。 『象牙色の賢者』 新連載。実在の人物をもとにした西欧の近世もの…

『文學界』 2008.4

食品の値上げといってもまだパスタくらいしか目立った影響はない感じですが、先日ほんとうにバターがなくなってた時は驚きました。 別にお菓子とか作るわけじゃないんで、サラダ油(キャノーラとかコーンとか)で代用すりゃいいんですけどね。

『松かさ拾い』青山七恵 

逆にこの青山作品に描かれた女性には、とても新しさを感じたのである。いや、正確にいうと、この女性の描き方に。 ひじょうに抑制された感情描写なのである。思ったこと感じたことを、主人公女性が対象にどう接したか、あるいはどう見たか、から炙り出そうと…

『鮒のためいき』戌井昭人

なんだこりゃ、という感じ。まるっきり私の嫌いな前田司郎そのまんま、という感じで、これで最後まで何もなかったらすごい時間の無駄だなあ、と思っていたら、ほんとに何も無かった。 どのへんが前田司郎かというと、日常のどうでもいい少しも面白みのない所…

『しげのり』吉原清隆

幼いころの長男の宿命でもあるのだが、弟ばかり可愛がられてと思いが募り、扇風機を寝てる間中点け放す事で弟を死なそうとする兄の話。どのように弟がワルだったかで持ち出される例のなかでちょっと冗長でついていけない部分があったが、それ以外に不満な点…

『地下鉄の窓』村松真理

初めて読む人だと思って読んでいたが、今この日記検索したら、前にも[オモロない]って書いていた。で、今作はじつはあれ以上にダメで、酔っ払って吐いた女性と介抱した女性が親しげに口をききだした段階で読むのを止めようかと思ったくらいである。いくらな…

『群像』 2008.4残り ほか

冷蔵庫のなかに賞味期限が10日過ぎた木綿豆腐を見つけたのですが、封を開けても普通の臭い。 木綿ということもあって、やっこにせず、余り野菜と炒めて食べました。

『猫マタギ』松本智子

生理の出血が断続的に続いているという病気なのかそうでないのかハッキリしない猫アレルギー女性の、あまり分かってない恋人男性と猫好き同僚との日々、という感じ。 不思議とこの男性や同僚の存在感がある。男性の元気さとちょっと拒否されてしない所がいい…

『およばれ』松井周

リゾートマンションは売れないが売れ残り不動産なら売れるようになったサラリーマンが核シェルターに住み、そこに付き合ってる女性を招待する話。 少なくとも広小路の小説よりは目新しい気がする。読みやすいし、リゾートマンションを売る売らないのやりとり…

『ろくでもない残像』広小路尚祈

幼い頃見世物小屋で見た蛇をかじる女の姿が忘れられず、付き合ってる女性にその再現を求めたりする話。 文章的によく書けているし、女性への距離感が以前読んだ広小路の小説と同様のものの気がして、らしさも感じるのだが、なんか設定とか話の持っていき方が…

『群像』 2008.4 新鋭の短編つづき2

文芸誌の最新号が出揃いました。もしかしたら『新潮』で東浩紀が小説書いてるのがネットでは一番の話題かもしれませんが、いつも買ってる店で唯一売れ残っていたのが『新潮』でした。 旧い号からメモ的に。

『猫がラジオを聴いていたころ』瀬川深

地の文と会話文を交えたその構成は工夫してあるが、ここには、悪く言えば、反動的なノスタルジアしかない。 だいたいネットよりもラジオの方が、メールよりもハガキの方が生っぽくてリアルでみたいな感覚は、CDよりもビニールの円盤のほうが暖かいとか、ト…

『ラップタイム』澁谷禎之

これは…一番苦手なタイプ。 若気の至り的馬鹿騒ぎと、都会の雑踏での淡い儚い触れ合いみたいな作品は、もう沢山だ。40、50になってこういう生活しているような人を書くのであれば面白いかもしれないが。しかも最後の方での車内酔っ払い女性の叫びなどは、エ…

『群像』 2008.4 新鋭の短編つづき

暖かくなって部屋の中を整理したいのですが、文芸誌をどうしようか思案中です。 古本屋は引きとってくれないからと、捨てるのはもったいない。オークションで100円くらいなら買う人いるかもですがあまりに面倒。 ま、それより先に、文芸誌のうちどれを処分す…

『言い間違い』寺村朋輝

懐かしい名前、と注目作だったのだが。相変わらず、ちょっとおかしな人(作家)である。感覚でちょっと分からない所がある。自分の中に混じってきた不純な言語を、そう簡単に頭の中から除外して自分だけの確固とした世界に戻れるものなのか?この、一番のク…