『猫がラジオを聴いていたころ』瀬川深

地の文と会話文を交えたその構成は工夫してあるが、ここには、悪く言えば、反動的なノスタルジアしかない。
だいたいネットよりもラジオの方が、メールよりもハガキの方が生っぽくてリアルでみたいな感覚は、CDよりもビニールの円盤のほうが暖かいとか、トランジスタより真空管のほうが繊細だみたいな感覚といっしょで、あまり信用できない。そういういかにも世間に受け入れられやすい俗っぽい感覚を疑わずして、ほかの何が文学たりえるというのだろう。