2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『汗と凍結』椎名誠

前回の砂漠編よりは興味深く読めた。極限に寒い地方ではクルマにチェーンは必要ないか。成る程、滑るのは融けるからだもんね。 若き頃の肉体労働の部分も、ある目の弱いおやじが登場し、そのおやじが生き生きと描けているせいかそれほど退屈しない。 しかし…

『橋−後編−』橋本治

必読の作品。前編を含めてもう本屋さんには置いてないだろうけど。 しかし私が鈍いせいなのか、橋という題名がまさかあの橋をも意味していたとは・・・後編の後半を読むまで全く気付かなかった。2件の、当時は、かなりセンセーショナルに報じられた殺人事件を…

『文學界』 2009.11 読切作品

タバコ増税弱いものイジメ問題以降、どうしても民主党に厳しい目を向けてしまいがちな昨今の私ですが、事業仕分け云々の政治ショーは見ていて胸が痛くなりました。 公開の役人イジメではないですか。公開でこういう議論がなされるのは良いこと、とかいうTV…

『四方田犬彦の月に吠える〜第23回"赤軍の娘〜"』

いつもわりと楽しみにしている連載なのだが、今回の冒頭で"後続世代の社会学官僚"と揶揄しているのは小熊英二氏の事なんだろうか。でないにしても、少し違和感のある四方田氏の言い方ではあった。 というのは、全共闘世代の人たちもまたかつてそのようにして…

『シャトー・ドゥ・ノワゼにて』諏訪哲史

フランスの田舎を旅する新郎新婦の話。主人公である新郎の内省と、「」でくくられる現実の新婦との会話だけでなく、《》で想像上の会話を新婦と交わすのが面白い。こんな小品であってもありきたりな普通のものは諏訪氏はやはり書かないのだ。 ただしせいぜい…

『神キチ』赤木和雄

もはや新潮の新人賞にはあまり期待していない私がここにいるのだが、それは私だけどころか、新潮じたいがせっかくの新人賞を巻頭に掲載しなくてどうするのだ。少なくとも辻原作品よりは面白いのに。 とくに冒頭の数ページなどは一体何が起こるのだろうかとい…

『抱擁』辻原登

この作品の特徴として一番に感じたのは、若い女性の一人称語りのスタイルに違和感を持たせないためかどうか、やや話があっちいったり、また、拙い言い回しを用いたりしているところ。 そういう点を考慮しても残念ながら、他の辻原作品よりは面白くない。当時…

『新潮』 2009.11 新人賞ほか読切作品

某大型古書店で本を購入するとき、いちいちポイントカードの所持を聞かれるのが煩わしいと感じる昨今ですが、また少し放置してしまいました。 今更もう書かなくても良いだろうと思われても仕方ない状態ですが、殆ど読んだという記録のために更新いたします。…