『汗と凍結』椎名誠

前回の砂漠編よりは興味深く読めた。極限に寒い地方ではクルマにチェーンは必要ないか。成る程、滑るのは融けるからだもんね。
若き頃の肉体労働の部分も、ある目の弱いおやじが登場し、そのおやじが生き生きと描けているせいかそれほど退屈しない。
しかし一点。最後の方で青物横丁から田町へ主人公が歩いていく場面があるが、どう考えても「国道一号線」ぞいではないだろう。「第一京浜」ぞいだろう。東京以外の人には馴染み無い話だが、国道一号は第二京浜であって、京急と並行して走ってるところの、品川から田町・浜松町方面に行くための合理的な近道は国道15号線第一京浜。しかもこの主人公は田町の海側に行くのだから、反対側の慶応大学側に、しかも少し遠回りして出る国道一号線を使うのはどうみても不自然である。一人称の回想だからといって許される範囲のものとは思えない。しっかり校正して欲しい。おそらく編集者はタクシーやバイク便ばかり使って、自分で道など覚える必要ないのだろうが。