2008-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『逃げ道』北野道夫

最後までそれほど、つまり吉田修一ほど抵抗なく読めることは読めた。さいきんこういうリアルでないものの方が評価が高くなってしまったせいもあるかもしれない。主人公女性の冷めた会話や行動が、面白い個所もあったことはあった。 その吉田修一の批判として…

『ニッポンの小説』高橋源一郎

なんかこの連載本人は区切りをつけたがってるようなんだが、今月はまた、これなら今すぐ止めたら、の内容。 全編にわたって話題になった映画『靖国』にたいして、訴えかけるものが無かったと悪口を言っている。いわく訴えたい内容が予め出来上がっていて、映…

『文學界』 2008.6 新人賞ほか

久しぶりに実家の近くにある商店街を通る機会があったのですが、コンビニとクリーニング店と若干の居酒屋を除いて壊滅状態でした。けっこう人が集まった商店街で、本屋も都合4軒くらいあったのえすが、全て店じまい済み。ビックリしました。 あちこちショッ…

『文体の「消滅」について』宇野常寛

なんか言ってることとやってることが違っちゃってるという感じがして、読んでいて痛々しかった。もう純文学なんて一顧だにするものでもないみたいな事をいっておきながら(たとえば文学は書いてみないと分からないと主張するのも、それに反論するのも無駄な…

『時が滲む朝』楊逸

面白い、はちょっと甘め。ちょっと評価を下げたくなってしまうのは、前作と違い今作は、基本的に、人間のなかの「邪」の部分の描写が少なかった事。それは前作では、カネをせびりにくる元夫とか息子とか、結婚=売春みたいに考えている日本人とかに現れてい…

文學界新人賞選評

選考委員が変わって皆張り切ってる部分もあるのだろうか、選評も力が入っていてなかなか面白い。そうなのだ。純文学の新人賞って、新人賞の作品そのものを読むのより選評読むのが楽しいんだよね。たとえば島田雅彦とかときどき結構面白い事書いてくれたりし…

『文學界』 2008.6

最近アオダイショウを見かけないな、と思ってWikipediaを覗いてみたら、直接関係ないことなのですが、アオダイショウと違ってシマヘビは木や壁に登れないというのを初めて知りました。 だから宅地化して塀とかが作られるとシマヘビが見られなくなるみたいで…

『ばかもの』絲山秋子

なんかこの作品がぐんぐん自分のなかで比重を増している。つまり面白い。アル中の主人公が落ちるところまで落ちていくところ、なんとか少し回復してきてでもまだ反省しきれていない所など、いちど孤立感を経験したことが無いととても書けないだろ、と思うっ…

連載について少々

暖かくなって洗濯物の乾きが早いのは嬉しいのですが、暖かくなったせいで汗かいたりしてシャツとか羽織りものをすぐ洗濯しようとするので、洗濯物は冬より増えます。ジレンマです。 今まだ最新号は連載読んでいるところです。 そういえば三島賞が『切れた鎖…

『物語の完結』山崎ナオコーラ

文學界の大座談会で天然であることを惜しげも無く晒してしまった山崎氏。 ただ氏のばあい、それがもはや欠点には見えなくなっている、そんな気がしないでもない。 今回のこれは短編で、女性作家である自身らしき人物が友人とアルゼンチンに行っただけの話な…

『鏡の国のデューク・エリントン楽団』大谷能生

『新潮』得意の異業種作家シリーズ。というほどのものでもないかも知れないが、大谷氏の(どちらかといと)本業はミュージシャンのようである。ネットを見る限り。 でそういう人がデューク・エリントンの周辺の事を書いているわけだから得意分野そのまんまで…

『新潮』 2008.5 読切

騙される所でした。 スーパーでこしひかり5キロ\1780円という表示があって、近場の普通のスーパーにしては安いじゃないか、とよく見たら4.5キロ。袋のサイズがほぼ変わらないので危く騙される所でした。 でも食料高騰の折、ポテチなんかも値段を上げずに量を…

『ファントム、クォンタム(序章)』東 浩紀

予想以上に面白いんですけど。適度に理屈っぽいし、何よりハナシを書こうとしていることに好感がもてる。 全体の大筋はいわゆるごくごく近い未来のことを描いたSF的内容なんだけど、今のWEBコミュニケーションについて問題意識のある人にとってはWipipe…

『隣人の生活』佐藤智加

とくに話があるわけでなく、あるどちらかというと田舎な町の3人の中年〜初老男性の生態を描いたもの。 人物の名前もカタカナで外来的であるが、ヨーロッパではなくアメリカっぽい感じ。その辺の地域についてのハッキリとした記述があったかどうか記憶が定か…

『群像』『新潮』 2008.5

先日初めて武蔵境駅周辺に行きましたが、JRの駅にしては恐ろしく何も無いとこですねえ。 吉祥寺の人ごみと足して2で割りたくなります。 相変わらず旧月号からですが、こうしてみると5月号はそれぞれ豊作だったかも。

創作合評

今回は木村紅美氏と円城塔氏、他1名の作品が対象。 たまたまこの2氏の作品を読んで間もないこともあって、興味深く読んでみたのだが、以前の田中弥生がやってたときと比べてこういう見方もあったのか、という鋭さが余り見られない。 そのなかで(たしか)…

『群像』 2008.6 どうでも良いが

『群像』と『文學界』の新人賞発表がありましたが、『群像』のほうは不作だったようですね。 『群像』しか眼を通していませんが。 こうなると後の芥川賞と競う事になった前回の候補者たちは不運ですね。 ただ不作のときに運良くあたって新人賞を受賞できても…

『烏有此譚』円城塔

なんとかベースボール以降まったく評価していないこの作家。この作品も×。木村紅美氏のように評価が覆る瞬間はまったくなし。 というかこの退屈さに最後まで付き合った自分を誉めてあげたい(実は2度ほど途中で寝そうになってその度家事をしてしのいだ)。 …

『月食の日』木村紅美

なかなか印象に残る佳作。前作を低評価してしまった私であるが、今作は悪くない。視覚障害者を主人公(のひとり)に持ってきたことで、我々とはアプリオリに違うゆえにリアリティを余り云々しないで済んだせいだろうか。 「主人公(のひとり)」とは書いたが…

『文學界』 『群像』 2008.5 読切作品

みなさんラーメンは好きですか。 私は普通に好きです。普通に好きというのは、うどんやスパゲティーと区別するものでもない、という事です。 有名ラーメン店の作る方も食う方も仰々しいのをみると、なんでラーメンごときがそんなに特別なんだ?と思わずには…

『マイクロバス』小野正嗣

ある程度リーダビリティを犠牲にしている部分があって最高評価ではないが、とても面白く読めた。 古い言葉でいうと知恵遅れ、いわゆる重めの発達障害である、クルマの運転がやたら上手い若い成人男性を中心とした、過疎地での物語。 井村恭一の作品では中心…

『返却』宮沢章夫

中年男性が学生時代を懐かしがって昔住んだ町を訪ねて歩くだけの話。基本的に物事の観察が一般人のそれと殆ど変わらずチープだから極めて退屈。なんの批評性もない。 文章が下手というほどヘタではないが、何度読んでも意味がすっと落ちてこない箇所が数箇所…

『フル母』井村恭一

ちょっとオマケ気味だけどすごい面白かった。小説中で何もたいした事は起きないにも関わらず、面白いというのは滅多にない。 まず面白い他の作家にはない鋭い比喩や、描写における形容があって、飽きさせない。ここが一番キた。 会話も面白く、全てのキャラ…

『文學界』 2008.5/『新潮』2008.4 読切

どうも私は猫に嫌われる雰囲気を醸し出しているらしく、たいていの猫は私をみると警戒して立ち止まります。