『逃げ道』北野道夫

最後までそれほど、つまり吉田修一ほど抵抗なく読めることは読めた。さいきんこういうリアルでないものの方が評価が高くなってしまったせいもあるかもしれない。主人公女性の冷めた会話や行動が、面白い個所もあったことはあった。
その吉田修一の批判として、話に登場人物を従わせてるだけ、みたいなのがあったが当たってる気はする。彼女は連れの車のキーを隙を見て奪うくらい決断できる人なのに、尻を見せることや隣の女性の侵入に関しては易々と無抵抗に従ってしまったりする。別にリアルでなくても良いが、同一のキャラとしての統一感みたいなのは保って欲しいところ。説得力を減じる。
まあ、それ以上に私には、隣の部屋の女性が登場してくる意味がよく分からなかった。
それにいきなり千葉の原風景的なものが、逃れる先の対象としてこうあるべきもののように語られるのだが、他の地の文からポッカリ浮いた感じになってしまっていて、下手するとパッションを感じてしまうのも分からなかった。著者の訴えたかったのってここなの?みたいな不可思議な感じ。