2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

『わたしの彼氏』青山七恵

いまだに落胆が消えない。こんなにも面白い連載がこんなにも早く終わるなんて。もう鮎太朗やテンテンには会えないの? たぶんマンガ雑誌とかだったらありえない事じゃないだろうか。マンガの場合連載中の反響によってストーリーを無理やり引き伸ばしたり、唖…

『ハバナの夜』石黒達昌

この題名で医療現場のものとはなかなか想像ができない。題名であるとか、ラストでセミの泣き声で終わるところとか、いかにも風景を心象として描くありきたりな文学臭がしたりするところは頂けなかったが、なかなか読ませる一編。 謎解きはスリリングだったし…

『いい女VS.いい女』木下古栗

全くもう。 先だって芥川賞が決定したらしいけど、文春関係者の方々よ今からでも遅くない、この一作を加えて三作同時受賞にすべきである。一作だけでなく二作選ぶのも可というなら、べつに三作選んだって構わないだろう。 え?候補にすらなってないって? そ…

『テンガロンズ』栗田有起

近過去というのは、どうしてより古臭く感じるのだろう。なんも汲み取るところのない、ひたすら私にとってどうでも良い小説だ。フォローしておけば、どうでも良くない人もいるだろうが。 こんな感じの、おそらく業界体験のないであろう人が書いたような、ない…

『尋ね人』古井由吉

題名はただの尋ね人だが、今回は、記録的な暑さとともに先だって話題になった行方不明高齢者の話題が小説に取り込まれていて、時事的な小説である。意識の底をさぐるような、というより意識そのものを作り出すかのような丹念な描写は相変わらず。 かつて、戦…

『群像』 2010.12 読切作品ほか

値上がり前に買ったセブンスター(ズ)が、とうとう底を尽きました。まともな財政感覚(あえて健康感覚などとは口にしませんぜ)のある人ならばタバコ止めるかどうか考え時なんでしょうが、全くその気はありません。これ以上更に値上がりして、何のために働…

『文學アジア 3×2×4』

個別に項目立てるのは面倒なので例によってまとめて書こうと思うが、第一回よりずっと面白かったのは別に島田雅彦が書いていないからではない。今回は韓国作品もわりと読めたし、岡田利規も悪くなかった。全体として感じたのは日本の作家がよりミクロな世界…

『北極を想う日−雪の練習生第三部−』多和田葉子

一部二部はなんとも得体のしれない感じだったが、人間に育てられたシロクマが人の心を持つばかりではなく、人として振舞うようになるそんな話のようである。つまりはシロクマが新聞読んだりパーティに平気で出たりするのだが、前半で二人の人間が小熊を育て…

『苦役列車』西村賢太

私が知る限りの西村作品は、文学にのめり込んでからの話ばかりだが、これはそれ以前の話。だからといって、これまでに比べとくに工夫のある作品ではないが、面白いものは仕方ない。面白い。 基本的には日雇いと安宿の往復の日々なのだが、自分ではこういう生…

『新潮』 2010.12 読切作品

今度の仕事ではスケジュール管理が必要かなと思って無印でカレンダータイプの手帖を買ったのですが、わずか一週間後に同じものが値引きされているのを目撃してしまいました。 一年を振り返る事などしないと書いた手前あれなんですが、最近の最も大きなニュー…

『「生」の日ばかり』秋山駿

あくまで連載を除けばだけれど、この号の群像でいちばん面白かったのはここ。(あ、これも連載か。)たしかに私もあの芥川賞受賞作の良さが理解できなかったひとりではあるけど、秋山がここまで読めていないとは驚く。たとえば、なぜ「気のせいか・・・・・・。」…

『世界同時革命−その可能性の中心』柄谷鼎談

柄谷が阪神タイガースのことしか話さない、とかそういう部分だけ楽しく読めたけど、どうにも内通者どうしの鼎談という気がしてスリリングなものがない。「贈与とか格好よいこというけど、日本に対して武力放棄した旧朝鮮王朝はどうなったんですか、世界は救…

『きんぴら』広小路尚祈

うーむ。この人は以前はもっと小技というか、面白みのある文章を書いてくれる人だったのだけど、前作辺りから、うだうだとした一見下らない内省はそのままに、語りの面白さが減じているような気がする。 ちょっと妻に内緒な悪い事をしてしまったがゆえに今度…

『陽だまり幻想曲』楊逸

古き良き文学といえば、まさにこれもそう。たんに主人公が妄想しすぎてしまいましたというオチ、つまりは孤独が内面を肥大化させてしまう様を描き、その想像世界の描き方や出来栄えで勝負するような、いかにも「純」文学的なものではなく、隣で虐待が行われ…

『燃える家』田中慎弥

なんでも大型新連載らしい。前半はいかにもこれまでの田中慎弥らしい、少年と父親との思わせぶりな関係の話で一通り退屈させられたが、後半では女教師だの、湾岸戦争について語る保守政治家だのが出てきて、あまりらしくない。楽しみとまでは行かないが、ど…

『群像』 2010.11 読切作品ほか

月内にもう一回書こうと思っていたのですが、わずかばかりの暇を家の中の掃除やら整理整頓やらに費やし年を越してしまいました。 ま、そんなふうに忙しさを理由にしたりしてますが、ここに書く気が低下しているのも確かです。以前などは年末になると一年を振…