『テンガロンズ』栗田有起

近過去というのは、どうしてより古臭く感じるのだろう。なんも汲み取るところのない、ひたすら私にとってどうでも良い小説だ。フォローしておけば、どうでも良くない人もいるだろうが。
こんな感じの、おそらく業界体験のないであろう人が書いたような、ないであろう人でも書けるような捏造小説は、前世紀にさんざんあったような気がする。読んでて気持ちよくさせてくれれば良いみたいな。20代なかばで風俗店を複数経営して金を腐るほど持っていそうなオトコとか、読んでてなんだこりゃ、としか思えない。で主人公も風俗嬢なわけだが、ソフトSMだとさ。間違ってもスカトロではない。要するにキレイキレイにしておきたいわけだ。世界を。都合よく。風俗ってそんなにキレイなんかね?出てくる人物がどれも、ヤクザも含め作られ感たっぷり。こんな世界を読まされるくらいなら、栗田氏のどんなにつまらない日常だろうと私小説を読んだ方がマシという気分になる。(じっさい私は普段は逆の立場なんだけどね。)
一番読んでいてイラつくのが、わけも分からず、そしてわけを確かめようともせず、都合よく物事が運び主人公がそれに順応していくところだ。その代表的な箇所をあげれば、未登録の番号から主人公の携帯に着信があって、ふだんなら無視するのに、指が勝手に発進ボタンを押した、とか。で、勝手に押した相手先は、決して間違い電話の相手とかじゃないわけだ。大事な大事な人なわけだ。なにか目に見えない決められた流れみたいなものがあって、それにいったん合致しちゃうと何でも都合よく運んで、幸せになれるみたいな感覚?「よしもとばなな」か?