2007-12-01から1ヶ月間の記事一覧

高橋源一郎のエッセイ

今月は、昔すばるで内田樹とともにあれほど矢作俊彦に叱責されながら、中高生のような憲法談義を行っている。全く修正の気配なし。けっこう頑固で懲りない人である。 自衛隊というれっきとした軍隊を持ちながらそれを否定する憲法を持つという矛盾状態を、だ…

『デンマ』金原ひとみ

デンマというのは何の事かと思ってたらそういう事かW、というショートショート的な、金原ひとみにしてはややコミカルな作品。かなり楽しく読める。タクシーの運ちゃんがとても良い。シリアスな小説としてみても、精神的に不安定な人が、ほんとにちょっとし…

『おみちゆき』角田光代

ある種の人身御供的な因習として土中に生きたまま埋葬される和尚をめぐるはなしで、そういう場にまつわる雰囲気はよく捉えていると思う。 夫の伊藤たかみと一緒で、角田光代も読むのは初めてなのだが(なんという読書歴の偏り!)、伊藤たかみより全然読める…

『文學界』 2008.1新年号 読切作品

この間地上波見ないような事書きましたが、ネットが普及するまえは年末年始といえばTVがけっこうな娯楽で(世間的にも私的にも)、この時期になると、ザテレビジョン年末年始特大号とかCMが頻繁に流されてましたけど最近はどうなんでしょうか。 よく趣味…

『海峡の南』伊藤たかみの新連載on文學界

伊藤たかみって実は読んだことがなくて、その風貌や小説の題名などから、私には合わないだろうなあと漠然と思っていたが、その通りだった。 なにしろ主人公の片割れ男性の、ほとんどの心情がなにも共感を呼び起こさないのだ。とくに覚えているのは、たまたま…

『ドンナ・マサヨの悪魔』村田喜代子の新連載on文學界

いかにもまだ話がスタートしたばかりの内容。読みやすくはあるがこの文体はあまり好きではないかな。 これから、老女というか中年女性の心情が語られていくにしても、話というか出来事じたいがドメスティックな内容ではないのはひとつ救いか。日本人同士の軋…

『ゼロの王国』鹿島田真希の新連載on群像

またしても過去に酷評した作家の評価が覆ることに。しかも今回は掛け値無しに面白い。なんだったんだろう、あの『ピカルディーの三度』は。 読んでてまず思ったのが、ドストエフスキーみたいだな、というもの。内面描写にしても実際の会話にしても実にながい…

新連載を中心に

いや今年のクリスマスは最悪でしたね、3連休と重なって。日用品の買出し行くのになんでこんな渋滞に巻き込まれなくちゃならないのか。脱力放心でした。 風呂場のフックが調子悪かったんですけど、ホームセンターのほうは諦めました。近くのスーパー行くので…

『ここ』福永信

非常にテクニカルな小説だが、普通に本を読むのに必要な程度上に読み込む努力を要するような、こういう作品は好きではない。 ABCDとだけ名づけられた主人公が順繰りに少しづつ描かれていくのだが、追われる場面が度々出てくることから夢の記述なのかなと…

『しろとりどり』栗田有起

これも冒頭がけっこう良くて読み進めたのだが、読後感としては上記田中作品より下。もし冒頭部分で、出会う男が私の半分を持っていて、というなかなか面白い記述がなければ評価はもっと低い。 ひとつひとつの文章が短めでしかも会話文が多く、一気に読み進め…

『切れた鎖』田中慎弥

以前に酷評してしまった田中慎弥氏の作品はいつか別なものを読んでみようと思っていたのだが、今回は冒頭部分を読んで地方の有力同族企業の経営者の家族の話ということで、なかなか魅力的な設定であり読むことにした。 こういう企業の歴史はまた近代の歴史で…

『新潮』 2007.12 読切作品

そういえば、もしかしたら私10年以上映画館で映画を見ていません。 今日は旧い号から。

『神器―浪漫的な航海の記録―』奥泉光

以前の奥泉作品に見られるシリアスさが少し後退しているような気がしないでもない。とくに戦場の非人間性の描写を期待した向きには若干期待はずれだったかも。暴力の具体的な痛さや、なんともいえないその暴力の場面の非日常な空気が、以前ほど切迫したもの…

『太陽を曳く馬』高村薫

久しぶりに告発側代理人の弁護士が多く登場する今回であるが、その弁護士の発言がこれまた面白いというか味があるというか。 ところで気が付いたのだけど、私がこの小説でいちばん面白く感じているのは、高村薫の描く中年男性の情念であり、その高村ならでは…

『決壊』平野啓一郎

ここのところ展開が急。お台場でああいう事になるとは、なんか『ワールドイズマイン』のようになってきた。(マンガを読まない私でもこの作品は読んだ。) 刑事と崇との心理的なやりとりでもうちょっと引っ張っても、ワタクシ的にはもっと楽しめたし、また、…

『新潮』 2008.1新年号 連載作品

新年号について書こうとしてふと気付いたのですが、今日で1周年。こんなこと(このブログ)1年もやってたんですね。始めた当初はほとんど何の目論見もなかったのですから、ちょっとした驚きです。 きっと不定期なのと、読者があまり居そうもないのがいいの…

『世界は牡蠣』黒田晶

これは言及に困るかんじ。可もなし不可もなし、というか。 英国でシェアハウスにて暮らす怠惰な若者たちの様子を描いたもの。ただ、ほんとに様子を描いただけであって、何か起承転結めいたものがあるわけではない。短編なんで仕方ないのだろうか。 ただし、…

『文學界』 2007.12 読切作品

『文學界』は新年号から新連載があるみたいで、読みきりもなかなかのメンバーですね。 これで高橋源一郎の連載評論さえなくなれば気持ちよく買えそうなんですけど、それは欲張りというものかもしれません。

文學界新人賞の新選考委員

『新潮』もそうなのだけど、『文學界』の選考委員も変わるようだ。松浦寿輝、角田光代、花村萬月、松浦理英子、吉田修一と、『新潮』の桐野夏生のようにエンタ系寄りで、これじゃオール読物新人賞、小説新潮新人賞だなまじで。浅田彰のダブりがようやく解消…

『椅子』牧田真有子

この作品は上記とは違って、作者の色を感じさせる部分がある。情景描写もとくに上手いとは感じないのに、わりと読んでいて情景を喚起してくる力がある。川上弘美が爽やかと書いていたが、ごく簡単に俗っぽく形容すればそんな感じで、この書き手はいい観察眼…

『東京キノコ』早川阿栗

のっけからダブスタっぽい話になるのだが、昨日の川上未映子について書いたなかで「目新しさ」はもういいや、とか書いておきながら、この『東京キノコ』みたいな作品を前にすると、こういう何の新しさもない如何にも純文学な感じはもういいや、とか思ってし…

『文學界』 2007.12 文學界新人賞、奨励賞

どうも気が付くと年々最新型のAV機器とかに疎くなってるのですが、電車のなかでケータイの画面を横にしてTV見てる人をたまに見かけるようになりました。(一番多く見かけるのは言わずとしれたDSなのですが。) けっこう画面が乱れないようなのですが、…

『乳と卵』川上未映子

さいきん地雷踏みそうな作品は避けていることもあって、[面白い]ばかりになってしまった当ブログだが、この作品は掛け値無し最高に、いや、最ーーー高に面白い! 連載が私的に低調な『文學界』ではあるが、これ一作で買う価値はある。真面目な話、芥川賞はも…

『文學界』 2007.12 読切作品

11/12の日記に条さんという方が言及されているのに最近になってTB見て気付きました。読んで頂いてありがとうございます。 条さんのおっしゃる事を完璧に理解できていませんので、あまり深く考えずに書かせていただくと、「格好よい」の基準は各人それぞれ…