『太陽を曳く馬』高村薫

久しぶりに告発側代理人の弁護士が多く登場する今回であるが、その弁護士の発言がこれまた面白いというか味があるというか。
ところで気が付いたのだけど、私がこの小説でいちばん面白く感じているのは、高村薫の描く中年男性の情念であり、その高村ならではの独特なところではないか、と。たとえば若手刑事とか若い僧侶の描写になるとなんの味わいもないんだよね。
あの独特な中年描写にリアリティがあるかというと、これが現実というのとはちょっと違う。いわゆる小説的リアリティなのかというと、その「小説的リアリティ」の意味がピンと来ないのでなんとも言えず。さりとてたんなる通俗風味かというと数多のミステリー系小説のそれとは、これは明らかに違うのだ。
いまは分析よりまず味わうだけ。