2007-12-12から1日間の記事一覧

『神器―浪漫的な航海の記録―』奥泉光

以前の奥泉作品に見られるシリアスさが少し後退しているような気がしないでもない。とくに戦場の非人間性の描写を期待した向きには若干期待はずれだったかも。暴力の具体的な痛さや、なんともいえないその暴力の場面の非日常な空気が、以前ほど切迫したもの…

『太陽を曳く馬』高村薫

久しぶりに告発側代理人の弁護士が多く登場する今回であるが、その弁護士の発言がこれまた面白いというか味があるというか。 ところで気が付いたのだけど、私がこの小説でいちばん面白く感じているのは、高村薫の描く中年男性の情念であり、その高村ならでは…

『決壊』平野啓一郎

ここのところ展開が急。お台場でああいう事になるとは、なんか『ワールドイズマイン』のようになってきた。(マンガを読まない私でもこの作品は読んだ。) 刑事と崇との心理的なやりとりでもうちょっと引っ張っても、ワタクシ的にはもっと楽しめたし、また、…

『新潮』 2008.1新年号 連載作品

新年号について書こうとしてふと気付いたのですが、今日で1周年。こんなこと(このブログ)1年もやってたんですね。始めた当初はほとんど何の目論見もなかったのですから、ちょっとした驚きです。 きっと不定期なのと、読者があまり居そうもないのがいいの…