2011-08-01から1ヶ月間の記事一覧

連載終了『空に梯子』角田光代

どうして面白いと思っている連載ばかり早く終わってしまうのだろうと思ってしまうが、仕方ない。毎月楽しみを頂いて感謝である。 仙太郎との最後までつづく緊張感のある関係とその変遷が中心で、それだけでも面白いのに、バブル末期のころの世相を描いた部分…

こちらあみ子(一部掲載)/今村夏子

一部掲載なので、その一部しか読んでいない。だからほんらい評価不能なのだが、これだけでも残りはまずは面白いんじゃないかと思わせる。 「あみ子」が魅力的だという声がけっこうあって、まあ確かになんだけれど、通学路で「兄」が友人たちから隠れようとす…

『さまよう/助けになる』ブライアン・エヴンソン

どっちの話も面白いなあ。 「さまよう」では、困難であればあるほど信仰が深まってしまうという、本来幸福であろうとする信仰が逆に困難を求めてしまう様を描いていて、そこから離脱する人もふくめて真に迫っている。人間は、傍からみればなんともヘンな生き…

『犬』稲葉真弓

わっざわざ擬人化して捨て犬に境遇を語らせているが、ひとつもココロ動かない。捨てられたペットなんかより、若い女子がいや〜ムシがいるとか言って害も無いのに殺虫剤や洗剤をばんばん振りかけたりしているのをみると、かわいそうだなと思うときもあるけど…

『馬たちよ、それでも光は無垢で』古川日出男

評価の難しい作品。というのはまず第一にこの作家の東北を舞台にした作品をまったく読んでいないからで、読んでいないと実感できにくい場面がある。たとえば、自分の名前の頭文字とその小説を英題におきかえたものが一致していた、とか驚かれても、はぁ・・・・・…

『不愉快な本の続編』絲山秋子

新潮のこの号の救いがこの作品。地方都市に暮らす若い男性が主人公の話で、そういう部分だけとってみれば「ばかもの」に似たテイストもまったく感じないわけでなく、あの作品から絲山作品にはまりっぱなしの私としては、嬉しさも感じつつ読んだ。と同時に、…

『哲学の起源』柄谷行人

マルクスからカントへいって、今度はギリシアかあ。柄谷のなかではどんどん根源的になっているつもりなのかもしれないが、『世界史の構造』も読んでいない傍の傍からみると後退しているかのような。 副題に「国家や共同体に回収されない」云々とあるので、昨…

『新潮』 2011.7 読切作品ほか

以前「廃品回収車を回収せよ!」という名言がありましたが、洗濯物を干していたら「冷蔵庫、洗濯機、壊れて映らないテレビ、音がでない〜」と放送しながら、50キロくらいのスピードで駆け抜けていく一台の荷台クルマ。よほど急用でもあったのでしょうが、…

『文學界』2011.5月号

連載作品と他のコラム的なものを読むために借りるかもしれませんが、この号の読切作品は読むつもりがありません。 あ、それから辻仁成の連載ですがただでさえ全く読む気がしないところ、キャッチコピーがすごいですね。"二十世紀初頭のパリを舞台に日本人外…

『二人の複数』穂田川洋山

中心はある男が「誰か」に憑かれている(ので複数に見えているかもしれない)という妄想のような話なんだが、そこへ至る話の運びやディテールが工夫されていて良い。主人公の同棲相手がいずことも知れずどこかへ出かけるという入りが何かなと思わせ、また主…

『神さま』田山朔美

よほど実生活で何かあったのかもしれないと勘ぐってしまうくらいだが、宗教というのは何よりこの作家を動かすテーマなんだろうな。 でもこの作品では少し控えめ。新興宗教の話もでてくるが主人公の過去の決別が語られるだけでとってつけたような印象すらある…

『青』花村萬月

読むつもりがなかったのだけれど、音楽の話だったので一気に読んでしまった。17歳でブルースというのはすごいなあ。 この人は書き方が上から目線的な薀蓄口調になるので、ネット世代には好かれないかもしれないけれど、なるほどと思うところは思う。 また…

『文學界』2011.4月号

読んだ作品は項目別にしますので、それ以外について以下に。 よしもとばなな・・・読む気なし 内田樹・・・載っている意味がわかりません。何これ? 柄谷×山口対談・・・読んだけど現状分析を行う山口氏と柄谷との展望とのギャップがすごくてついていけませ…

『文學界』2011.3月号

この号については、読む所無かったので見出し単位に格下げ。小林信彦?パス。 「復活の批評 大澤信亮」これだけ三分の一くらい読みました。有名批評家の悪口っぽいことを書いているのが面白かったですね。後半の飛躍についていけませんでしたが、この人はそ…

『文學界』 2011.4 読切作品

新しいiPodのイヤホンの「L」と「R」が見にくいので油性マジックで書いてしまおうか迷っています。 先日ひょっとして冷夏?とかここで書いてこのザマな毎日です。8月って気圧配置が安定するとしばらく続くので今年は南の高気圧が弱いパターンかと思ったん…

『粉』荻世いをら

もしかしたら、これまで読んだこの人の作品では一番退屈しなかったかもしれない。 あまりポジティブな評価じゃないけど仕方がない。ぶっちゃけた話これまでの作品だって、目の付け所が面白い、気の利いた表現はそこそこあったには違いなく、ただ他の部分の退…

『すばる』 2011.5 読切作品

iPodの上にテレビのリモコン落としたら、画面に黒い筋ができました。中古で買って使い始めて3日の出来事です。 世の中iPhoneだとかiPadだとか言ってるなかで、今更音楽聴くだけしかできないiPodを手に入れるのは何とも私らしいなと思いますが、困るのは、旧…

『新年』日和聡子

小説の構造としてはよく書けていると思う。それに雪景色のまばゆい白さとか、冷え込みとかも読んでいて迫ってくるものもある。 ひょっとして夢オチか?幽霊オチか?とタクシーを動物が運転する記述あたりで気づいてしまった聡明な人もいるかもしれないが、鈍…

『ビールの話』chori

あるオトコと、嘘くさいオンナとの嘘くさい友情めいたもの、の話。こういうの癒し系?っていうの? 接吻までしておいて記憶にあまり引っかかってなかったとかそんな事が書いてある所でこの小説の評価が決定的に下された。 ポストモダンについて熱く語るよう…

『ちたちた』野村喜和夫

作者の名前には見覚えがあって、金子光晴がどーのこーのというこの上なく興味のもてない連載を同じ「すばる」でやっていた人ではなかったか。だから全く期待していなかったのだが、これが面白い。「すばる」にもこんな面白いものが載るんだなあ、久しぶりだ…

『アマリリスの家』朝比奈あすか

もういいですと思われるかもしれないが、朝比奈氏の作品は事情があって心情的にシカト出来ないのであった。 今回も自立しようと、というか自立と自ら思えるような所をなんとか探そうとひとり奮闘する女性の話。ネイルアーティストをやっていて、そのポジショ…

『Metamorphosis』奥泉光

「すばる」に奥泉氏がジャズの小説を書き始めたとき、日本人JAZZメン列伝みたいなシリーズになるかと思っていたのだが、結局この"イモナベ"さんしか記憶に残っていない。 私も日本人のジャズメン全て知り尽くしている訳ではないけど、もちろん虚構でこん…

『すばる』 2011.4 読切作品

台所を掃除・整理整頓したときに、すっかりしけってしまった煎餅をたまたま日当たりの良い所に置きっぱなしにしてしまったのですが、パリパリ感が復活しました。 ところで今年は冷夏の部類ですね、これは。 電力的にはまさしく不幸中の幸いでしょうか。私も…