『神さま』田山朔美

よほど実生活で何かあったのかもしれないと勘ぐってしまうくらいだが、宗教というのは何よりこの作家を動かすテーマなんだろうな。
でもこの作品では少し控えめ。新興宗教の話もでてくるが主人公の過去の決別が語られるだけでとってつけたような印象すらある。海外で夫が深刻な状態に陥るのだがそこで出会ったキリスト教徒の女性とのやりとり方は、十分に緊張感は伝わってきた。確実にある「ある一線」のようなものがこういう場合相手との間にあるんだよね、確かに。壁というのとは少し違う。もっと柔らかだけれども、踏み込んでいけないところまで行くとひんやりと拒絶されてしまうような。
一方で深刻な状態の夫と保険会社とのやりとりなどにも分量は割かれていて、真に迫っていて読ませるが、この部分では逆に特段の感想も浮かばない。