2007-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『ある言語からの報告』山田 茂

非リアリズム系の小説を面白いとするのは、あまり無いはずだけど、これは面白かった。 8月号に載った読み切り4作品のなかでは一番面白いのではないか。ってまだ2作品しか読んでないのだけど。 とくに文体に奇特な意匠を用いているわけではなく、むしろ平…

『群像』 2007.8 続き

腹ばいになって、両肘ついてずっと本を読んでいたら、肩と首を痛めました。 屋外は無理としても室内プールかなんかいってもっと体を動かしたほうが良いのかもしれません。

『ちいさな甲羅』朝比奈あすか

前作はたしか、仕事でそれなりに責任ある立場でありつつ家族の病気も抱えるOLという、共感できそうな苦悩をもった人物がが主人公だった憶えがあるんだけど、今回は専業主婦。 つい、こいつらに大した悩みなんかねえんだろうなあ、と思ってしまう人が主人公…

『群像』 2007.8 今ごろ

昔はよく「読書の秋」なんて言い方をしたもんですが(今も?)、やっと梅雨も明けていよいよ「読書の夏」到来です。 暑くて出かけられなくなるので、いちばん読書がはかどるのです。 プール通いをしていたころはプールサイドで読書したりして、それもまたは…

臨時ニュース 町田康、布袋とトラブル

ヤフーのトップページに出ていたので知ってる人も多いと思う。 町田は病院通いして布袋はそうではないようだから、町田に分がありそうだが、第三者には真相はわからないだろう。そもそもこのふたり、音楽的嗜好性はよくわからないが、マーケットへのアプロー…

『ケイタリング・ドライブ』中島たい子

この人の文章は入って行きやすいんだよね。よく考えられているうえに、センスもあるんだと思う。こういう所に技術を感じるなあ。レトリックを気にさせずに内容を入らせるみたいな所。 男性主人公だけど、ほかの女性作家が描く男性よりは不自然さはない。描き…

『ダリアと官僚とセックス』安達千夏

セックスも嘘もビデオテープじゃないけど、こういう三題噺的題名って、関連性が無さそうであればあるほどちょっとこじゃれた雰囲気があって、単純な私は面白そうに思えてしまうのだが・・・。 これはハズレ。 敢えてそうしているのだろうけど、心理描写と情…

『すばる』2007.6 古っ!

またまた2号も前の号から。 群像の合評をもっと参加者気分で読みたかったのです。 ちなみに『すばる』7月号に関しては、星野智幸、樋口直哉、桑井朋子と読んだことある作家ばかりなので、こちらも合評で取り上げられてますが、たぶん読みません。「プロレ…

『臈(らふ)たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ』第3回 大江健三郎

浮かれ気分の大江氏なんて眼中にないかのごとく女優とプロデューサーが寝てしまったりして、いよいよ性的なテーマが前面にでてきた印象のこの作品なのだが、その性的な問題を、たんなる個人の問題に還元するのではなく、政治の問題とするような−国家とか支配…

『随時見学可』大竹昭子

まず言いたいのが、情景の描写がいまいち分かりづらいこと。主人公が見ている光景が構図的にどんなものなのか分かりづらい場面がある。そこを読者にはっきり想像させることこそポイントと思えるのだが。 話としては、小遣いで都心に(激安とはいえ)別宅のマ…

『女小説家の一日』鹿島田真希

今まで2作品しか読んでいないのにこんな言いかたはヘンかもしれないが、非常に鹿島田らしい作品というふうに感じた。 今回は夫婦間のディスコミュニケーション状況が延々と妻の側から語られていて、読み疲れするものの、それはよく言えばクオリティの高さが…

『新潮』 2007.8 読みきり作品など

8耐とかフジロックとか一年のなかで、もっともワクワクさせる季節となりました(若者だけかもしれませんが)。 この時期になると、山梨の高原のロッジでひとり残って延々とフォークナーの「響きと怒り」を読んでいたのを思い出します。 読みづらかったです…

『スケネクタディ』新元良一

自分の青春時代が変わってしまったことを感傷的に描くだけの内容で、メロドラマにもならない。 しかも不治の病の少年との交歓まで描くのだから、どこまでがフィクションなのか分からないが反則的でもある。事実ならば仕方ないのだろうが。 対象との距離の取…

『青春の末期』辻 仁成

辻の作品などわざわざ読むのは相当暇な証拠と思われかねないので言い訳すると、短篇だったから。たぶん読みながらあれこれ考える必要もないだろうし、サっと読めるかな、と。一応知られた作家なので、そうやってごくたまにチェックいれておくのも必要だろう…

『新潮』 2007.7 読みきり作品

昨日の話の続きになりますが、文学賞に関して、そもそも何を候補作にするか、っていうのもけっこう重要ではないかと。今回など特に顕著なんですが、年一回の三島賞より二回の芥川賞のほうの作品の方が質的に断然上なのは何故なのか、というと、候補作の段階…

『臈(らふ)たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ』第二回 大江健三郎

一回目の内容がたんなる回想のスタート地点でほとんど何もないような内容で、作家生活50周年と題してこんなんかよ、という思いがあったのと、こうも毎月連載のように作品が掲載されると、金払っていながら読んでいないことが悔しくて、早速2回目を読んでみ…

芥川賞決定記念カキコ

いつも読んでる小谷野氏の日記の最新版で北村薫が直木賞落選したのを知り、ということは芥川賞も決まったんだな、ということで結果を知りました。 今回の芥川賞についてはいつもコメント下さるペーパードライバーさんへのコメントに詳しく書きましたが(普通…

『決壊』平野啓一郎

しかし小説家なら当然のことなのか、担当編集者のサポートが良いのか、平野氏もいろんな事よく調べてるよなあ、それに知ってるよなあ。全国規模の葬儀社のやり方だの、警察がケータイをどう見てるかだの、こういう細部も描くことで、リアリティが増すんだよ…

『太陽を曳く馬』高村 薫

マンネリのごとく平野作品をまずトップで賞賛しまくりでしたが、今号に関しては、この作品をまず挙げてみた。 だって面白いんだもん。 平野作品もそりゃ面白いし、今回だってまず最初に読んだのは平野作品だけど、ここ2ヶ月の高村薫のこの作品の面白さは何…

『新潮』 2007.8 連載作品など

最新号の新潮をよくみると、福田和也の評論がまた載ってます。さいきん休み無いです。こんなのにカネ払いたくいないのに。

新人小説月評

今回で二人とも最終回で、増ページ。 けっこう楽しみに読んできたが、田中弥生は毎回、作者が意図してない意味を作品に見出そうとし過ぎ。 津村作品について「自転車は道公法上車道を走るもの」という指摘が存在しないディストピアもの、などというふうに書…

『メディアフィロソフィー』高田明典

あまり注目されてないふうのコラムだけど、いつもいいこと書いてるよ、高田さん。 今回は、"必要な管理とは、テロが起こらないようにすることであり、テロが起こったらどうすると脅すことではない云々"のところにグっときました。 注:正確な引用ではありま…

『私のマルクス』佐藤優

今回も同志社学内での反主流セクトの襲撃の話がでてくるので、そのへんの記述だけは面白い。

『観念的生活』中島義道

こちらはまさしく日記的体裁なんだが、高橋よりははっきりした文章で、哲学的部分に関しては理解できないこちらが悪いのかなという気分にもなる。 いつもナルシスティックな日常の出来事に関する省察から始まるんだけど、辟易させられつつも、そこが面白かっ…

『ニッポンの小説』高橋源一郎

途中、奥泉光とのエピソードがあり、読んでみたが、もうほんとにつまらない。なんだこれ。クソ真面目というか、言葉に拘りすぎというか、言葉の暴力に敏感すぎるというか。評論じゃなくて日記的散文だよな、これ。曖昧なことを曖昧なふうに書き、分からない…

『村上春樹の知られざる顔―外国語版インタビューを読む』都甲幸治

村上春樹、海外ではこんなに雄弁に語ってるんだ、とこれはなかなか面白い注目すべき評論。とくに戦争責任論では、はっきり修正主義を否定している。全共闘嫌いで有名な村上ではあるが、しっかり押さえるべき所は押さえているなあ、と見直した。 すぎやまこう…

『常夏の豚』矢作俊彦

面白いことは面白いんだけど、毎回なんかドタバタしているだけで、肝心の物語の中心がなかなか見えてこない。

『心はあなたのもとに』連載第二回 村上龍

一回目はけっこう好きな記述とかあったし、若くして死んでしまう女性のわがままぶりの不可解さなどがあって、多少注目していたんだが、2回目はスマートな買春の仕方みたいなハナシが中心で、どうでもよい話で、こりゃ拍子抜け。

『おじさんは「綿矢・青山・金原」をどう読んだか』加藤典洋×関川夏央×船曳建夫

船曳建夫が金原の『ハイドラ』についてなかなか鋭い指摘をしている。 とくにこの三人について好きな評論家ではないけど、というか加藤典洋なんて嫌いな人ではあるけど、私の好きな金原が高評価なのは読んでいて悪い気はしない。綿矢作品についてもちんと、駄…

『妬ましい』桑井朋子

ある初老の女性が嫉妬に狂い、最後には石になってしまう話。 いわゆる老人の性というか、これだけ老いている人のアッチの話など書かれると、かえって生々しくて正直すこしつらい。いやあっていいとは思うけどね。 最後に石になってしまうというオチも、いか…