新人小説月評

今回で二人とも最終回で、増ページ。
けっこう楽しみに読んできたが、田中弥生は毎回、作者が意図してない意味を作品に見出そうとし過ぎ。
津村作品について「自転車は道公法上車道を走るもの」という指摘が存在しないディストピアもの、などというふうに書いている。たしかにモラルの崩壊ということであれば、それもテーマのひとつなんだろうけど、ディストピアとは大げさな。そこまで大げさではない、すぐそこ感覚が津村作品の良さなのに。
実際ほとんどの都会の道路において、自転車が歩道を走ることは黙認されているし、交番の前の歩道を走ろうが、二人乗りでもないかぎり文句などまず言われない。むしろ、自転車のように気まぐれなものが車道を走ることのほうが危ないわけで、自転車は車道から排除されているのだ。自転車は道公法上、などという指摘が存在しないのは、当たり前のはなし。