2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『望みの彼方』喜多ふあり

長いわ。主人公のひとりよがりが全くどうしようもなく、切実さも感じず、したがって感情移入もできず。もちろん、こういう人物がいたっていいし、それで小説書いてもいいんだけど、ここまでの長さにつき合わされるともうウンザリだ。この、友達以上恋人未満…

シリーズ願い『たくさんの荷物』藤野千夜

もちろん誰もが、昨今の「暗さ」など取り込む必要も無く、感じなければそれでいいのだけど、藤野作品を読んでも何の感想も浮かばないのはずっと変わらない。この人新潮でも書いているのだけど、主人公が付き合う男性がいつもガキみたいな奴ばかりのような気…

新連作『除夜』古井由吉

うーむ。何年も前に寝た女の匂いを男が発しているというんだけれど、さすがに物理的にそんなことはなくて、でも、これ読んでると、いかにもそういう事が(今の女性がそういうふうに感じることが)ありそうに思えてくるというのが、なんとも面白いよなあ。き…

『群像』 2010.5 読切作品ほか

何気なくラジオを聴いていたら、”アイパッド”とやらの発売日らしく、言葉使いの端々に知性とデリカシーの無さがにじみ出ているかのようなDJが、登場するゲストや交通情報の人にまで「買いますか?」とその話題をふっていて、殆どの人に様子見と言われて居…

『1968から2010へ』高橋源一郎×小熊英二

『文學界』でいちばん面白かったページ。なかでも小熊英二が、吉本隆明への自身の評価がなぜ低いかを、臆面も無くバラしてしまう所が面白い。なるほどそういうひとつのルサンチマンめいたものがあったのね、と。 この対談、終始高橋源一郎に飲まれていて、つ…

『妻は夜光る』井村恭一

んー・・・・・・。非リアリズム小説として、手堅いというか、破綻無いひとつの世界が築かれていて、読ませるものもあるのだが、あまり記憶に残るものがないなあ。こういう小説に慣れてしまったんだろうか。 むしろ綻びとかになっても良いから、過剰さ、はみだし、…

『東の果て』松波太郎

なんかこの人のスベり方というか、ハズし方も気にならなくなってきて、逆に面白く感じるようになってきている。最新号のすばるでもこの人は書いているくらいで、活躍するのも当たり前なのか。例によってつまりは私に見る目が無かったということ。 まず、主人…

『赤』花村萬月

新人賞の選評で結構きつい事言ってるからどれほどかと思えば、なかなか読ませる手堅い話を書く人だ。主人公と縁のある飲み屋に因縁をふっかけてくる奴が、死ぬはずのないところで死んでしまうシーンなんかはじつにスリリング。 がしかし、この人の作品ってた…

『タイニーストーリーズ3』山田詠美

相変わらず。つまりGIの話以外はさほど面白くもなければ記憶にも残らない。

『文學界』 2010.5 読切作品ほか

プロレスの話をしましたが、そういえば、プロレスラーは何でぶよぶよした体型をしているかというと、脂肪を厚くすることで怪我を少なくしているんだというのを聞いたことがあります。またこれも伝聞ですが、プロレスなんてショーだからというわけで、道場破…

『燼』藤沢周

葬式帰りに酒場で一杯。人生について考える、といった内容の、いかにもこの作家らしい小説のわりには、ナルシスティックな色合いがそれほど濃くなく、普通に読めた。なるほど紙幣って全部灰になっても、燃えカスがきちんと残っていて検査して戻ることもある…

『アナーキー・イン・ザ・JP』中森明夫

文芸4誌のなかで、5月号のダントツがこれ。恐らく単行本化もされるだろう。 なかでも楽しいのは、「新潮社」や、新潮の編集者も含めて実在の人物・団体まで登場して、歯に衣着せぬかたちで言及されるところで、福田和也とか柄谷までかなり否定的に言及され…

『新潮』 2010.5 読切作品

ラッシャー木村が亡くなったらしいのですが、国際プロレスのエースとして、アレックス・スミルノフと死闘を演じていた彼を知っている人は、ここを見ている人のなかには絶対誰もいないでしょう。 国際プロレスは、東京12チャンネルしか放映していなくて(当…

『春のすばる散歩部』

すばるを一風変わった文芸誌にしているという「だけ」しか、私にとって意味のないページ群。 いちばんつまらなかったのは山梨のワイン巡り。なかで五反田篇がやや興味深かったが、それでも金を払うようなものではない。

『黒くなりゆく』羽田圭介

群像でも似たような趣向のコミカルな作品があったが、この作家は、我々を疎外する企業や社会といったものを、コミカルに描くことでなんとか、そのなかに自分の居場所を見出そうとしているかのように感じる。否定してばかりいてもしょうがないというのは確か…

『103号室の鍵』茅野裕城子

巧拙はともあれ、この号のすばるで一番記憶に残ってしまったので、面白いという評価にした。 どこがというと、今までの人生結局買い物だけなんじゃないか、という強烈にして正直で、またおそらくかなり正確に言い当てていると思われる過去の自分への総括だ。…

『そのかわり』松井周

このメインの、ちょっと込み入った三角関係だか四角関係の話そのもののリアリティの無さ、ついていけなさはともかくも、途中途中に挿入される童話めいた話が恐ろしく退屈で、読み進めるのに苦痛ばかりを感じた。 主人公の職場での描写なんかは皮肉が効いてい…

『すばる』 2010.5 読切作品ほか

危うく一ヶ月以上放置するところでしたが、その主要な理由ではないものの、一年で一番の季節に家にこもってキーボード叩くなんて時間の過ごし方はなかなか出来ない性分の私なのであります。(ここが放置の主要な理由はまあ、やる気がないだけなのですが。) …