オモロない

『トゥンブクトゥ』山下澄人

しょうもない言葉遊びはなくなったのだけは良かったが、前作で書いた事以外に書くことは殆どない。ようするに、何の区切りもなく視点を切り替えたり時空を行き来するような、読者を自由にするというよりは結果として混乱に縛りつけるような「技術」以外に、…

『夜を吸って夜より昏い』佐々木中

担当編集者と、文學界で新人小説評をしている方、以外に、この小説を最後まで読みとおした人はどれくらいいるんだろう。文語調というか詩というか、読みづらくてしかたなく、前半だけであまりにつまらなく2回は寝ただろうか。まさか金井美恵子のほうが読み…

『問いのない答え』長嶋有

なんでこんなものに付き合わされるのかと苦痛極まりなく、借りた本なので偉そうなことはこれ以上いえないが、この連作ではiPhoneやツイッターなどが小説内で重要な役割を果たしているのが特徴。読みながら一瞬、ツイッターとかがこんなにつまらない使われ方…

『奇(くす)しき岡本』高樹のぶ子

人物が描けていないからダメ、というのは、いまや誰一人として行わない類の類型的な批判だが、ここに出てくる主人公女性があまりに素朴で現代との接続感がなく、そう言わざるをえない。ただし優しい私は小説として批判するわけでなく、掲載誌が違うんでない…

『ギッちょん』山下澄人

これを読まされたあとで振り返るなら、そりゃ前田司郎の小説に甘くなるというもの。 例によって章だてで、章の名前に工夫がなされているが、その時点でウンザリしますね。はいはいはいはい・・・・・・。こういう工夫が、ぜんぜん小説の動力になっていないのね。こ…

『目の中の水』瀬川深

殆どの小説家が直接描かないのに、このあからさまに震災関連な感じはなかなか勇気がいるだろうなあ、と思いそれは評価するものの、題材の表面的なこととは裏腹に読んで感じるものは少ない。 小説の小説的な部分、というか文芸的な部分、あるいは技巧といえば…

『氷の像』澤西祐典

こういった評価はあまりしたことがないように思うが、この作品、丁寧に書かれ、しかも内容もよく練られていて、けっして素人が思いつきようもない、出来ない人には一生かかっても到達出来ないくらいのものであろう細部を含んでいて、それを十分に認めながら…

すばる文学賞受賞作『黄金の庭』

この世ならぬ妖怪的なというか霊的なというかそういう存在が出てきて、非リアリズム小説なのだが、その存在については、いかにも意味ありげだがたんに思わせぶりな存在という以上のものは全く感じず、私には、小説全体があまりに意味のないものなので意味あ…

『統合前夜』三崎亜記

何一つ面白く思わないが、作者は少しも悪くはないだろう。編集側が悪い、だって、ジャンルが違うのだ。「小説すばる」向け。 数ページ読んだだけで会話を中心に文章が荒いなと思わせ、読む気を失ってくる。結果リアリティもなく、つまりは人でなくお話を書き…

『教団X』中村文則

連載スタートはすごい冷めた批評的なところで宗教をとらえていて、ほんの少しだけ期待したが、2回目からはやっぱりという感じでテンションが続いていない。というか、もっと面白く、とか端っから期待していないんで内容は別にいいんだ。ただ、せめて何が書…

『いない』太田靖久

とにかく文学的なものを書きたいんだ、という熱意だけは感じるものの、どこか無自覚なマッチョ臭がして読めない。しかし早くも別紙登場となるが、新潮っていきなり持ち込みの人の衝撃デヴューとかやるけど、新人賞受賞者はあんま育てるイメージなくてなんか…

『新しい小説のために』佐々木敦

この連載が始まったことも群像買うの止めた遠因ではある。もってまわった格好つけた文章がとにかく内容以前に受け付けない。新潮の連載も読んでいなかったが、この号も買ったからには第一回は目を通したが、以後は読まないことに決定。

『歌え、牛に踏まれしもの』山下澄人

視点を変えてみたり、ひとつのイメージを回帰させて語ってみたり、ま、よくあるアレです。高尚なふうに書けばブンガクみたいな。書きたいことなんてとくにない、みたいな。以前も言ったけど、小説を専門にしていない人が書いた小説を群像でやったとき、難し…

『かめこさま』橋口いくよ

途中からありえなさ感が増して、だんだん怖さが伝わらなくなる。かといって話の展開が思いっきりはじけるというほどでもなく中途半端に思う。

『松ぼっくいとセミの永遠』大森兄弟

題名で想像されるとおりの作品。今どきの小学生ともとくに関係なさそうだし、岡崎作品のような毒もなく、何もひっかかってこない。

『ファンタズマゴーリア』岡崎祥久

いつもいつも冴えない中年男が世間に毒づく話を書いていてもしょうがないと思ったのかどうか、内容的にも量的にもかなりトライして変えてきた作品。SFかよ、という。だがこれについては、私の場合完全に裏目。円城塔みたいに、文系の人にたいするこれみよ…

『黙って喰え』門脇大祐

上記の作品では、肝心の理由(拒食にいたる道)が書かれていないことに何の不満もなかったのに、この作品ではオオアリだった。なぜ主人公は同棲女性の首を絞めたのか・・・・・・。心の闇みたいなものの存在を伺わせるような不可解な行動を描けば、その作品は文学…

『夜露死苦現代詩2.0 ヒップホップの詩人たち』都築響一

連載終了ということでコメント。完全にナナメ読みだから聞き流してほしいけれども、言葉使い(リリックとか言えばいいんすか?)はたいていの人はそれぞれ上手いものがあったんじゃないかと思うが、内容で気を引かせるものは殆どなかったように思う。プロレ…

『大盗庶幾』筒井康隆

戦前、というか大正のころ、つまり日本の近代文化が花開いた頃の、華族出身でオモテの顔はサーカス団員(団長?)じつは裏の顔は盗賊という人の話。何が面白みなのかさっぱり分からず。

『小太郎の義憤』玄侑宗久

父親を震災で失った母子を描いたヒューマンな震災もの。と書いて連想できるものがそのまんま載っているだけなので、まだ読んでいない人も読む必要はない。

『火山のふもとで』松家仁之

新人でこの長さ。新人というからには、新機軸な試みをしているかもしれなくて、そういえば題名もあまりリアリズムっぽくない・・・・・・。読み通すの辛いかなと思ったら、なんてことはない、むしろ恐ろしくアナクロな小説でありました。新しさみたいなところは皆…

『世の中おかしいよ』石原慎太郎

一応小説らしく主人公は警察官ということにしてあるが、その彼に、外国人犯罪のこととか、クスリの規制の問題とか、内容は都知事としていま直面し危惧している問題をそのまんま語らせていて、まあ正直というか(題名を含めて)、でも、以前読んだような文学…

『東京の長い白夜』瀬川深

技術的にとくに不満に思うところもなく。とくに、夢と現実世界との移行のさせかたなど鮮やかとまでいわずとも無理がない。そして、かように主人公の夢の世界をところどころ挿入することが、内容に変化を与えていて読む楽しみに寄与している部分もある。主人…

『グッバイ、こおろぎ君。』藤崎和男

まず最初に書いておきたいのは、空間の描写がすごく分かり辛いということ。ひとつ例をあげると、トイレでコオロギを発見して彼がしかしにっちもさっちもいかなかったときなど、どういう体勢なのか、どうして体が動かし辛いのかがつかめない。 また、主人公を…

『架空列車』岡本学

「新人」の人に厳しいことを書くのは気が引けるのだが、意を決して。選考委員の幾人かが高評価をしているのが全く信じがたいがほどに、私はこの小説に終始乗れなかった(列車のはなしなので「乗れなかった」と表現してみたわけだが)。とくに評価のポイント…

『メタノワール』筒井康隆

映画の一シーンを撮り終えたと思ったらそれも映画の一部で、その映画の舞台裏を描く映画がやっと今度こそ終わったと思ったらそれもまた作品の一部で、という具合に延々つづく小説。メタメタメタ・・・映画を描いた小説とでも言えばいいか。アイデア一発という感…

『ひっ』戌井昭人

怪しげなクスリ、プータロ、といつもながらのこの人の世界で、こういうのが面白くない人はまるで面白くないだろうな。私はそこまで限定するのは微妙だが、酒を飲まない私はなぜかというとまずいからではなく酔いたくないからで、多分クスリが犯罪でなくても…

『歌う人』又吉栄喜

旧琉球王国支配圏内の、とある島出身の初老の男性が母親が亡くなって葬式などのために久しぶりにその島へ帰る。で何を思ったか、時期が来ても墓のなかに骨を納めようとせず、骨壷を抱えては、島に伝わる古い歌(支配者を讃えるようなもの)を、周りの困惑も…

『癒しの豆スープ』よしもとばなな

なんも特別な材料を入れていないスープのせいで病気がよくなったとかの話からはじまるが、そういうのは気の持ちようというか、民間療法なんかでそういうふうにして「治った」という例も無数にあるわけで、こういうのまでまたオカルトかよ、と片付けてしまう…

『ライオンと無限ホチキス』古谷利裕

何が書いてあったのか全く思い出せない。今パラパラめくっても思い出せない。というか、分かるためにはパラパラして部分部分をつまみ読みしてはダメな、つまりはそういうタイプの小説で、かといってここに感想書くためにいくら短編とはいえまた読み返すつま…