『ひっ』戌井昭人

怪しげなクスリ、プータロ、といつもながらのこの人の世界で、こういうのが面白くない人はまるで面白くないだろうな。私はそこまで限定するのは微妙だが、酒を飲まない私はなぜかというとまずいからではなく酔いたくないからで、多分クスリが犯罪でなくても高価であればやらないだろうっていう人間ではある。幻聴や幻覚をみたいとも聞きたいとも、そういう気持ちがそもそも理解できない。
そんな戌井作品を読むのに不適格っていうことをおいといたとしても、それにしても、作を追うごとにどんどんクオリティが下がっているような気がするのだけれど。いやクオリティというより、ネタが尽きて、リアリティのある世界が描けなくなったという感じかなあ。
また途中、テキトーであることをめぐって、ちょっとマジメふうなやりとりをするのだが、こういう中途半端なところがこの作家の一番ダメなところで、突き詰められていないんだな。以前の作品で、ビリーホリディに言及していたことも思い出したが、意味のないほうに徹底することができず、中途半端に意味のあることを語ろうとする嫌あな感じ。