2011-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『“フクシマ”あるいは被災した時間(二)―追悼と確率』斎藤環

趣旨である抽象的議論のその根幹については、文句をいう気は殆ど無い。というか、理解できてないかもしれないし、理解する気もあまりないから。 気になったのは、その議論の説得性を高めるために、どぎつい資料ばかりを引いているかのように見える点だ。まる…

『ニルダ』ジュノ・ディアス

ヒスパニックのおかれた状況をドキュメンタリでみることはあっても小説で読むことはなかったので新鮮だったのと、主人公の兄が死ぬとともに、つきあっていた彼女までもが「死んで」しまうところが胸を打つ。きっとここには万国共通の残酷な瞬間がある。 ゴリ…

『波』黒川創

題名からしてすでにストレートだが、あの津波と遭遇した一家のそれぞれについて、多少の工夫はあるものの、そこにあった、また、あるべきだった生活と、遭遇の状況を何の奇をてらうこともなく小説としている。多くのひとがあれだけの出来事なのだからそんな…

『楽器』滝口悠生

読み始めてしばらくは、最近の新潮の新人賞はなかなか読ませるね、と思ったりもしたけど、よく考えてみれば前回の新人賞がとくに良かっただけで、更によく思い出してみれば、ちょっと前までは福田和也が編集の人のボヤキとして候補作を揃えるだけでも大変・・・…

『新潮』 2011.11 新人賞ほか読切作品など

9頭立ての少頭数のレースで、8着と9着の馬のワイドを買っていたりすると人間やめたくなりますね。 最近そうでなくても馬連で買えば1着3着とか、ワイドにすれば今度は1着4着とか、神さまに完全に見放された感があって、そんなこんなで何かに八つ当たり…

]『最後に誉めるもの』川崎徹

放っておけば誰も気づかないかたちでスマートに淘汰されるのに、公園にて無責任に野良猫に餌を与え、結果として生まれた子供を全て自分で引き取るわけでもなければ、生じた糞害や音害も野放しのクセに、自分の尺度で問題なければ問題ないと言わんばかりに、…

『ここで、ここで』柴崎友香

評価が併載されている作品に左右されてしまうところがあるのかなと思うが、今まで、複数の人間が和気あいあいとしている情景を描くことが多かったという、主にその理由で嫌っていたのだが、近作はそういう抵抗感は少なかった。 関東でいえばレインボーブリッ…

『きなりの雲』石田千

芥川賞候補にまでなってしまった作品が思いのほか面白かったので、その作家が群像に書いたとなればつい期待してしまうのだが、残念な出来。公正にいうなら、出来という言葉で云々するのは間違っているのかもしれないけれど。というのは、会話を地の文のなか…

『群像』 2011.10 読切作品

最近、痔の負のスパイラルになりかかっています。痛いのが嫌でちょっとした便意を感じても行かない→便がつまって固くなる→いざ出るときは固くでかくなって張り裂けそうになってトイレで汗、という。 NBAの労使交渉が泥沼化していて、今シーズンの開催が無…

『"フクシマ"、あるいは被災した時間』斎藤環

上記のようなものもあればこういうのもあるんだなあ。 やれ猪子寿之だ、ダヴィンチだ、ハイデガーの弟子だ、デゥピュイだと思想家芸術家の名前が挙げられ、ウンザリさせられること請け合い。まるで自らがいかに現代思想に通じているかを誇示するがために「フ…

『うらん亭』黒川創

結果として一番短いこの作品がいちばん読ませるものだった。久しぶりに読んだがこんなに流暢な上手い書き方をする作家だっけという感じである。 一人称として語られる部分と、三人称で、時代を包括する俯瞰的な視点から語る視点が混在していて、最初少し混乱…

『お神さん』太田靖久

新潮新人賞ではそれだけで終わらず二作目が載るだけでもなかなかすごい事なので、歓迎したい気持ちもあるが、そういう事情を知らずはじめてこれを読んだ人にとってはどうなんだろうとも思ったりする。文章も悪くないし展開もよく考えられているようにみえる…

『持ち重りする薔薇の花』丸谷才一

さすがに名前だけは知っていたけど、小説作品を読むのは初めて。あるクラシックのカルテットと懇意にしていた財界大物男性が、そのカルテットの過去をメインにそれに絡めて自分の過去を語る、みたいな内容の作品。とくにこれ、語り自体に面白さがあるわけで…

『新潮』 2011.10 読切作品ほか

人志松本の○○な話を訳あってたまに見るのですが、怪談を怖いと感じることがないので、怪談特集は止めて欲しいです。ちなみに私にとっては、無灯火で信号のない交差点に進入してくる自転車ほど怖いものはありません。 訳あって朝日だけじゃなくて読売もたまに…