『ニルダ』ジュノ・ディアス

ヒスパニックのおかれた状況をドキュメンタリでみることはあっても小説で読むことはなかったので新鮮だったのと、主人公の兄が死ぬとともに、つきあっていた彼女までもが「死んで」しまうところが胸を打つ。きっとここには万国共通の残酷な瞬間がある。
ゴリゴリのキリスト教右派がいる一方で、公の場ではたとえばクリスマスに「ハッピークリスマス」とは言わないとか、アメリカというのはどんなに悪く言われようと国というよりひとつの世界であり、実験場とまでは言わないけどつねに新しい何かなんだと思う。
ところで、作品のあとに青山ブックセンターでのインタビューで、どこの誰か知らないが作者およびその作品に殆ど関係ないと思われる映画に関する質問をして、軽くあしらわれていたのが面白かった。誰もあんたが大好きな映画の話なんて聞きたかないのに、映画狂いにはときどきこういう困った人がいて、映画が好きになれない原因のひとつなんだよな。他のジャンルにはこういう人少ないと思うんだが、きっとこれは私の偏見だよね。