2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『神風』黒川創

語り手ではなく、小説で主に語られる音楽家にはとくにシンパシーをいだくことは無かったが、その超絶感には興味をそそられた。一歩ひいたとこにさえいれば、コスモポリタンでいられる、あの地にはここに出てくる彼女のようにそういう心性をもったひとが沢山…

『今まで通り』佐藤友哉

原発事故関連。有名になった「ただちに影響はない」を、ということは長期的に影響あるって事じゃないか、と早合点するアホ主婦の話。 だって、「長期的な影響については確定的なことはなにもいえないがただちに影響がないことだけはいえる」ってことだって当…

『同行死者』高村薫

いつも乗るはずの路線バスが大事故に会いそれに偶々乗らなかったために助かった女子高生の内面語り。つまり自分には死者が同行していると。 あからさまに震災があったからこそ書かれた作品のように思える。なぜ彼らは死んで自分は死んでいないのか、そこに理…

『二度めの夏に至る』古川日出男

震災のせいで、一時的に書けなくなって先延ばしした作品ではないか、と思う(多分)。 つまり構想自体は相当前にあって、しかも、私になんとなく残っている記憶によれば以前相当前に新潮に載ったプロローグ的なものの続編のように見受けられる。のだが、とく…

『新潮』 2012.2 読切作品

ちょっとした便意を見逃さないようにして、便を柔らかく保つこと。これが痔を治す最大のコツだと最近身をもって知りました。 ちょっとした臨時収入があったので、「文學界」の最新号も買ってみたのですが、巻末で相馬さんが吉本隆明について書いていて、なん…

『金原ひとみの「私」曼荼羅』田中弥生

私がかってに尊敬している田中弥生。氏のおかげで、なぜ金原ひとみの『マザーズ』のなかで幼児虐待が起こったかについて、今頃になって、そういうことだったのか、と知る。非常に説得力があった。

『わたしが聞いた車内アナウンス』川崎徹

「冷房を切りにしております」がなんかおかしかった。でもこれ、おかしいと感じない人はまったくおかしいと思わないだろうね。私もちょっと笑ってしまうが、このくらいは許してもいいか、と思う。

『松ノ枝の記』円城塔

これは今まで読んだなかで出色で、芥川賞受賞作よりぜんぜん素晴らしいではないか!(という「全然」の使い方はおかしいんだっけ?) 以前、円城氏の作品に関して、大きいスケールのような事柄を書きながらむしろ現代に縛られていて広がりを感じないとか非難…

『芝生の子供』黒井千次

息子が父親に頼んだものの中身が気になるのに最後まで分からない。連載ではなくて連作なので、これでひとまず終わりとしたらよく分からない小説である。

『K』三木卓

文芸誌に書いていない人はどんなに高名な人であろうと読んでいないので、この作家も殆ど初めて読む。やたらと平明な文章からはじまるのでややとまどったが、ほとんど一気に読み、非常に感銘を受ける。 実在の人も実名で出てきて、私小説どころか、殆どノンフ…

『クエーサーと13番目の柱』阿部和重

超ハイテクを駆使し、チームを作ってアイドルの追っかけをする人たちの話。自分たちがアイドルに興味があるわけではなくて、スポンサーがいるのだが、ただの超大金持ちの個人であって、パパラッチのようにメディアが裏にいるわけでもない。というか、こうい…

『群像』 2012.2 読切作品ほか

豆腐の賞味期限て何なんでしょうか?一ヶ月過ぎても全然美味しく食べれるんですけど。 クラシックシーズンでもあるので、今年もそれなりにチェックしているのですが、今年はディープ産駒が活躍とかいって少し興ざめしてます。桜花賞では、英語以外の外国語の…

『薄紫雲間源氏』青木淳悟

いつもの青木淳悟らしいユーモアをかんじさせる文章で、源氏物語の世界らしきものが語られているが、元をよく知らない私にはいくらか楽しみが少ないものではあった。なんだこりゃ、よくわからんなあ、でもらしいなあ、といったかんじ。

『たそがれ』島本理生

子供が生まれて激変した私、とまめてしまうと身も蓋もないが、母子二人きりで密室にあることが、息を詰まらせるものではなく、まったく逆で、主人公にとっては幸福という形容では足りないくらいのものである、というのが興味深い。つみあげてきた近代的自我…

『ミステリオーソ』松浦寿輝

ジャズをあまり知らない人が読んで面白いかなこれ、とも思うが、あのモンクだったらあってもおかしくないなあというギリギリのところを狙っていて面白い。また、いちばん小説のメインとなる出来事をめぐって主人公が、2、3秒の余裕もなく一瞬のうちに人生…

『教授の戦利品』筒井康隆

蛇をおもに研究する教授と病的に蛇を嫌う人たちをめぐるつくり話で、多少語り方に工夫は見られるが、さほど面白いとも思えない。

『ホサナ』町田康

内容も面白くなければ、文章も面白くない。いぜんは内容はともかくも文章では楽しませてくれたものだが、少し趣旨がえしたのかもしれない。わざと単調な感じを狙っているような、少しだけいつもと違う雰囲気。ともあれ、あまり期待できそうもない。

『晩年様式集(イン・レイト・スタイル)』大江健三郎

まずは、「あの」出来事が声を上げて泣くまでのものだったか?と読んで思ったが、それは今にして思うからであって、当時であれば人によってはそういう事もあったかもしれない。(しかし私について言えば、泣く、あるいは絶望することが可能なくらいまで、冷…

『燃焼のための習作』堀江敏幸

新年号というと、なんか目玉をぶち上げたり、高名な作家さんたちの短編集めて一見華やかにしたりするのが文芸誌の通例のような気がしていたが、今年の群像は堀江氏の読みきりか、ちょっと地味かもと思っていたら、すごく読み応えがあって良い意味で裏切られ…

『群像』 2012.1 読切作品

この半年くらい、ドコモに、ムーバ終わるからFOMAにしましょうスマホはどうですか割引しますんでという内容のDMを、かれこれ10通くらい送らせておきながら、ギリギリになってソフトバンクに変えました。ドコモさんすいませんでした。いっときはわざ…