『今まで通り』佐藤友哉

原発事故関連。有名になった「ただちに影響はない」を、ということは長期的に影響あるって事じゃないか、と早合点するアホ主婦の話。
だって、「長期的な影響については確定的なことはなにもいえないがただちに影響がないことだけはいえる」ってことだって当然あるわけだからねえ。
で、いろいろしらべて完全に放射能をふせぐのは不可能とわかり(これじたいは正しい)、「今まで通り」に生活をして赤ちゃんを汚そうとする。少しでも汚れてしまえばもう終わりだ、と(これじたいは全く間違っている)。
こんな自棄なひとなどきっと殆どいないはずで、でなければ風評被害などももっと軽減されるはずだし、瓦礫の広域処理ももっと楽にできただろう。なので、いったい何を討とうと思ったのか分からない。放射能にいちど触れてしまえば終わりと感じてしまう主婦を最後まで戯画的にアホとして描いてそのようなケガレ的発想を討つんだろうかとほんの少し期待したが、どうも単純に、こういう誤解や反倫理的な考えにいちど立ってしまえば、子供がいくらでも汚せる環境にあることへの告発っぽい。世が隅々まで汚染されている絶望、ひいては原発やめようよ、みたいな話?
議論がおきそうな題材を果敢に扱う姿勢には敬意。