『神風』黒川創

語り手ではなく、小説で主に語られる音楽家にはとくにシンパシーをいだくことは無かったが、その超絶感には興味をそそられた。一歩ひいたとこにさえいれば、コスモポリタンでいられる、あの地にはここに出てくる彼女のようにそういう心性をもったひとが沢山いたはずなのに、いずれかに属することを求められ、というか自ら求め、民族浄化まで突き進んでしまったという・・・・・・。たぶんいつも悪く言われてばかりのセルビア人を含め、みな、仲間にたいして冷淡ではいられなかったんだろうけれども、どのようにして「一歩引く」ことができるのか。それはいまだに難しい問題だと思う。
ところで、神風ということに関して2つ最後に語られているが、いちばん影響が大きかった2、4号機の損傷のときに外洋にむけて風は吹かなかったんだから、そういう意味での神風が吹いたかについては疑問だが、菅直人が総理だったことについては、まさしく不幸中の幸いだったと思う。このことが世間ではまったく逆に言われているのが奇妙だが、もし自民党や鳩山とかが総理だったら、東電のいいなりにことが運んでどうなっていたことやら恐ろしすぎて想像も付かない。計画停電するだけであの混乱ぶりだったんだから。