2010-08-01から1ヶ月間の記事一覧

エッセイ『小学生がラップを書いたらどうなるか』柴幸男

表題になっていることにも興味はないし、素人がラップしてそりゃ少しは型破りなものが出てくるだろう事もあるいみ当然で殊更興味はない。 私がこのエッセイについて書きたいのは「皆さんは日本語ラップときいてどんなイメージを思い浮かべますか」という問い…

『火ごもり』稲葉真弓

あまり読んだことないような話のせいで最後まで読めたが、その後まもなく忘れた。つまり傷跡を残さない小説で、こういう自然さこそが我々を蝕んでいるということだ。 田舎の人の寡黙さに、なにか過剰な意味を勝手に読み込んでしまう都会人の悪いところが描か…

『真珠譚』諏訪哲史

会話を「」で囲ったりすることや、「、」「。」などの句読点を追放した、小説。 小説というか、想念をずっとつづった感じのもの。在りし日の恋を追想するときには、恋の追想というより、その人を想っていながら、その人がいたときの自分のまわりの風景を想っ…

『どんぐり姉妹』よしもとばなな

最近なんかバッシングされたみたいでネットでは人気がなさそうなので「紙の無駄」とか言わないでおく。 ここにあるのは、なんて私達はかわいそうな境遇なんでしょうみたいなナルシズムと、それでも「働き者」だから自分の力で切り開きましたみたいな役に立た…

『新潮』 2010.8 読切作品ほか

ラジオをながしていたら島田雅彦さんがゲストということで暫く聴いてたんですが、ラジオということであの風貌と共に発せられないせいでしょうか、いかにも知性が乏しい感じで大丈夫かと心配になりました。 昨今の為替問題に絡めてゲストに呼んだということな…

『ボッグブリッチ』柳田大元

じっさいアフリカでは小学生くらいの子供が、銃をとったり、恐怖や不安から逃れるためにジャンキーになっていたりする。日本で中学生がタバコ吸うくらいでガタガタ言うなといいたくなるくらいの状況。で、共同体が点在するところを無理やり国境作っただけだ…

『細かい不幸』佐伯一麦

アスベストの怖さを訴えるという意義だけ、まったくそれだけしかない小説。全く何も残さないよりはマシなんだが。

『家族ゼリー』吉村萬壱

ハッテン場で二人の男性がアレをして、と読んでいると、二人が家族だったというとんでもないオチ。まあ参加する家族は、結局彼ら二人だけではないんだが、驚きの連続で参る。傑作だろう。 どんな別れや死や、病気などを描こうとも、この小説のここまでの行き…

『黄』花村萬月

この人はほんとうに小説家を目指している人にたいして親身だよなあ、と、それくらいの感想。書くには核が必要とか、説得力はあるんだけど、宮本輝あたりも違う言い方で同じこと言ってる感じ。「何か」が足りない、とかね。

『勝手にふるえてろ』綿矢りさ

元オタクというちょっとイタイ女性が二人の男性の間で揺れるはなしで、それほど凝った作りではない。 その主人公女性が、昔の男性に会うために同級生の名前をかたって同窓会を催したりするのだが、こういうタイプのひとがそんな行動力あるものなのか、という…

『文學界』 2010.8 読切作品

ひさしぶりに週刊文春とか週刊新潮をコンビニで手にとってみたら、その薄さに驚きました。広告料が減っているのは当然として、記事も少なくなってるんでしょうか。もう10年以上読んでないので分かりませんが。(私が読んでいたのは、糸井重里がコピー塾と…

『空腹のヴィーナス』法月ゆり

よく知らない作家で、しかも海外に暮らす日本人の話だから、また『すばる』らしい類のものかとかなり警戒して読んだが、丹念な心理描写がみられる小説で、わりと好感がもてた。ただ、ところどころ幾度か読み返さないと分かりづらい箇所もある。 911事件を…

『小石のように』佐川光晴

まこの評価はお約束ということで。北大のキャンパスや寮が出てきたり、佐川氏にとっては自らにありえたかもしれないもうひとつの青春を書いているような部分もあるのだろう。その生き生きとした気持ちが小説のなかににじみ出てくるかのようだ。 人によっては…

『すばる』 2010.8 読切作品

久しぶりですがもしかしたら、今回が最長に放置したことになるんでしょうか。 やる気の無さは相変わらずです。株は下げ続けるし、毎日のカンカン照りはこれはあきらめました。 平日に漫然とテレビをみていると、山本直樹がワイドショーのコメントなんかやっ…

『スーパーヒロイン』長島友里枝

『群像』最新号より。まず最初に言っておかねばならないのは、小説としての巧拙いぜんにこの書くものは私は好きだという事。つまり三島賞の選評で長島作品を酷評した、たとえば町田康の書く小説とどちらが優れているかはともかくも、どっちが好きかと言えば…

『陰雲晴れぬ』西村賢太

『新潮』最新号より。この小説を読んでから、ある言葉が頭から離れない。「オリシー」。 略語としては、文芸誌買い出してたぶん初めてお目にかかったのではないか。この言葉を小説のなかに持ち込んだだけで、この小説の成功は約束された。しかし、おりものに…

『群像』 『新潮』 2009.8 面白かったもの

思想地図だか何だか、言及だけはよくされるので耳にした事があるものの、全く読む気がしないので分かりませんが、東浩紀さん周辺の人と見られる人の評論が新刊案内なんかでもよく紹介されてますね。 で、どうもその辺のひとたちは、現実をより正確に捉えてい…

新連載『会社員小説をめぐって』伊井直行

読む前はテーマとしては面白そう、おおいに期待だったのだが・・・・・・。 前置きが長いというか、くどいというか、中心のまわりをまずメタからぐるぐるめぐるだけみたいな感じがいかにも1980年代な感じというか。かなり2回目以降の期待はしぼんだので御座い…

『お願い玉』藤野千夜

ただ漫然と読んできたが、最終回の作品がいちばん面白かったのかな? しかしやはり私にとってはただのお話でしかない。たしかにこれは、現代の若者の心情へかなり接近しているのかもしれないな、とは思うのだが。

『竹林まで』松浦寿輝

平岡(三島)シリーズなのだが、いままで読んだ中で話としては一番たいした事が起こらず、けれども、内部への問いかけは一番読ませるものがあった。あなたの天皇中心主義な言動にしても作品にしても結局アイロニーでしかないんじゃないの、という三島につい…

『明後日になれば』古井由吉

あるときは達観したかのようであり、またあるときは息遣いというか気配というか、結局長々生きてきてそんなものしか無かったといわんばかりの境地の、老人の日々を描写。 あるときはいつもの古井作品でしかないと感じられるものの、またこれを別のあるときに…

『群像』 2010.7 読切作品ほか

それにしてもびっくりしました。あの辻元さんが社民党を辞めてしまうとは。看板じゃないですか。 自分が選挙区だったら多分彼女に投票しているんだけれど、まあ私のように考える人は少ないって事ですかね。私もちょっと変わったところがある人が好きなだけで…