『小石のように』佐川光晴

まこの評価はお約束ということで。北大のキャンパスや寮が出てきたり、佐川氏にとっては自らにありえたかもしれないもうひとつの青春を書いているような部分もあるのだろう。その生き生きとした気持ちが小説のなかににじみ出てくるかのようだ。
人によっては、こんな「いいひと」ばかりがでてくる分かりやすい「お話」は沢山だ、というかもしれない。しかし、これは何度も書いてきたことだが、そんな簡単にこの小説に出てくるような近代から脱することなどできやしないのも確かで、それを確かめるためだけのために読んでもいいのではないか。そんなふうにも思う。
たとえば、たかが定まったルール内で競うだけのスポーツごときに勇気を貰うことなど全く考えられないのだが、こういう小説からは何かを貰ってしまっている。