2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『やさしナリン』舞城王太郎

冒頭、唯名論を思わせる記述が出てきてついて行けるかとややあせらされるが、やがていつもの舞城的世界に突入してひとあんしん。 むかし私もふと思ったが、たとえば「ストレス」ということば、について。こんな言葉は近年になって一般化したものであって、そ…

『チェーホフの学校』黒川創

今までの連作のなかでは、もっとも何が書きたいのかつかみ辛かった小説。そもそもチェーホフをよく知らない人が読んでも分からないものだったのか。 それとも子どもたちが日常的にガイガーカウンターをもって生活している光景をとくに異常とも悲劇とも思えな…

『明滅』藤沢周

まったく覚えのないところから香典返しが届くという出だし。中村文則の小説なんぞよりよほど何で何で?と読みたくなる。 というわけで面白くは読めたのでこういう評価だが、しかし、知りすぎていて却って忘れていたはちょっと文学的過ぎて無理があったかなあ…

『青痣』西村賢太

この作家に関しての評価はこのへんで多分落ち着いちゃうんじゃないだろうか。ほとんど変化らしいものはないから。 まだ従順さが残っていた頃の、貫多と秋恵もの。以前「オリシー」という言葉がでてきたのを思い出させたが、今回もそのパンツの汚れに関して男…

『水杙』松浦寿輝

つまらない小説ばかり続けて読んだせいか、好感度高し。日本のごく一部に見られたギリシャバッシングみたいなものに抗するように、南欧と比べて日本の街行く人を悪しく思うのもいい感じだし。まあ、神楽坂あたりの風情が変わってしまったのなんかは、バブル…

『鬼っ子』よしもとばなな

こんなときでも平気で悪口書いちゃう私も鬼のようだが、基本、オカルト話。霊を封じるだとかなんとか。風水? 懐疑のない世界は、気持ちが悪い。世界は繋がっていて、とかよく小説内に出てくるけど、私はつながりたくないので除外してください。

『ベアマン』池澤夏樹

話が格別面白くもなければ、何を書こうとしたかもさっぱり掴めない。震災のなにか?

『迷宮』中村文則

前にこの作家のものを読んだときはサスペンス風なところがあったけど、今回は密室殺人ですと。どういう意図があるんだろう。退屈な主題に飽きさせないように読者を引っ張るものとして導入? たまたまビデオ装置に詳しい人と奥さんが親しかったとか驚くような…

『新潮』 2012.1 読切作品

吉本隆明、べつに何の感慨もないです。むかし古本屋の安売りワゴンで言語にとって美とはなんぞやとかそんなふうな題名のものを100円くらいで買った覚えはあるものの、いま本棚に「吉本〜」という名前は皆無です。 3月11日過ぎましたが、最初の感慨は(…