2011-02-01から1ヶ月間の記事一覧

『バリローチェのファン・カルロス・モリーナ』津村記久子

全く興味のないフィギュアスケートの世界がネタでも一気読みさせるのは流石だが、津村氏は以前サッカーのことで誰が禿げるか云々のことを書いていた記憶があって、しかし興味が一致しないものだなあ。サッカーなんてどこが面白いんだか。 小説としては、職場…

『フィクションの倫理』平野啓一郎

エッセイであるがなかなか読ませる。 どんなフィクションでも結局はネタとしてシニカルに消費しているだけ、という論に対してはっきりNOと言っているのは潔い。人は勧善懲悪の物語を消費することによってカタルシスを得るだろうが、排出しきれないものは残…

『これはペンです』円城塔

群像の鼎談で、残るもの、古典的なものを書くことには興味がないというか、書くつもりはないというか、そんな発言をしていた記憶があるが、そんな著者らしい作品。問題意識が、いかにも今的な、WEB時代の文学とは、みたいなところにある感じで。 つまりは…

『新潮』 2011.1 読切作品ほか

最近近所の猫が私の姿を見ただけで逃げるようになったのですが、放尿被害は相変わらずです。 猫にしてみれば、苛める私のような人がいるすぐ側にエサを与えてくれる人もいるわけで、生きる為には仕方ないんでしょうね。私も正々堂々こういう問題を解決するな…

『裸婦ペロリ』鶴川健吉

暴力とはどういう関係によって生じるかとか、その関係によってしかつながることのできない人物を丁寧に描いた作品。 主人は対等なコミュニケーションの場というか、穏当なコミュニケーションの場では、著しく能力を欠く。すぐに失業してしまう。つまりはコミ…

『ノミの横ばい』戌井昭人

しかしよくこのスカスカの内容でこれだけのページ数を埋めたなあ、という感じ。読んでも見事に何も感じない。読んでその日のうちに内容を忘れ、今ここに何かを書くためにページをぺらぺらやっても何も蘇ってこない。しいて言えば、バイトの分際で店を食材を…

『かげ踏みあそび』藤野可織

え、リアリズム?と思っていたら、序章が長かっただけでした。しかし、この人は力あるなあ。 物語は主人公の親が再婚して義姉と一緒に暮らすことになる所から本格的に動くのだが、つまりは、いきなり異物と暮らすことになるわけであって、通俗的なマンガなど…

『してはならないことはジュソだよ』古川日出男

図書館で借りたものにこの評価は気がひけるが、私には思わせぶりなだけで、古川氏のファン以外にこれがとどくものだとはとても思えない。

『ゴルディータは食べて、寝て、働くだけ』吉井麿弥

レシートの内容などが挿入されていたりして、いっけん奇をてらった小説かのようだが、きびきびとした運びで物事は語られ、読者は難なくそれについていく事ができる。これだけでも相当の能力がないとできない事で、新人賞には間違いなく値すると思う。この人…

『文學界』 2010.12 新人賞ほか読切作品

『文學界』の12月号について書くにあたって、なんといっても12月号ですから、2010年という年を振り返ってみようかと。まあ2月に入って正月気分も消え、誰もが2010年の話題なんて、と思ってるでしょうから。 職場で朝日新聞が読めるようになった…

評価不能『権力の娘』原田ひ香

この作家のことはずっと悪く書いてきたけれど、こういう作品を書かれたら私が悪いと認めざるを得ない。すみません、ジャンル違いでした、と。 今のそれは知らないので一昔前としておくが、少女漫画か民放のテレビドラマかなんかの原作みたいだ(しかも、その…

『筋肉のほとりで』荻世いをら

何が書きたいのか、理解不能。 物理的な「力」が必要とされていないような時代に、筋肉を鍛えるといういっけん無意味な行為に没入してしまう様が、実存を奪われた現代の若者らしい、などと無理やりな感想を述べることが全く出来ないわけではないけれども。し…

『第三紀層の魚』田中慎弥

これまで読んだこの作家の作品のなかではベストの出来。しかし同時に、田中慎弥らしさも若干希薄。つまり、そういう事だ。田中慎弥らしさというものにオリジナリティは認めつつも、結局好きではないんだな、と。らしさが希薄になれば評価しちゃうわけだから。…

『すばる』 2010.12 読切作品

近所の猫が私のバイク置き場の陰を小便する所と決めたらしく、臭くて仕方ないので、見かけるたび全速で追い回したり棒切れ叩きつけたり周りに近所の人がいないのを確かめて「シャー!!」とか威嚇して恐怖感を味わわせているのですが、なかなか止みません。毒…