『ノミの横ばい』戌井昭人

しかしよくこのスカスカの内容でこれだけのページ数を埋めたなあ、という感じ。読んでも見事に何も感じない。読んでその日のうちに内容を忘れ、今ここに何かを書くためにページをぺらぺらやっても何も蘇ってこない。しいて言えば、バイトの分際で店を食材を勝手に持ち出したところは思い出したが、その主人公に嫌悪感すらも感じなかった筈だ。いったい何を書こうとしたんだろうか?
以前の作品には、何かしら知られざる風俗とか光景みたいなものが描かれていたりするものもあって情報として捉えれば面白いものもあったけど、それが無くなれば何もない。
これが中原昌也であれば、何も無さはもっと徹底されているだろうし、その徹底には暗い情熱というか怒りがあって、小説を書かせる核みたいなものを感じさせるけど、この作品の空虚には何か余裕すらあって、べつに書くことがないのなら貴方の場合は書かなければいいのではと言ってみたくなる。