2007-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『カデナ』池澤夏樹

まだ海のものとも山のものとも状態だが、登場人物についていえば倦怠感の漂う米国将校など魅力的で、外国暮らしが長く翻訳も多い人らしい、凝ったところのない簡潔な文体もなかなか好印象。 文体に関する好みは、昔からすればずいぶん変わってしまったと思う…

『新潮』 2007.5 新連載はじまる

連載作品で満足してしまって、読みきり作品を読むのが後回しになりがちな『新潮』で新連載が始まりました。

『さよなら、日だまり』平田俊子

題名からしてほのぼのとした部分のある心境小説かと思いきや、ぜんぜんこれが違った。全く違うといっても良いくらい、人間関係の険しさを描いた小説である。 しかも、特定の宗教がでてくるわけではないが、怪しげな占いを信じる信じない者同士の関係が、宗教…

『Parties言行録』横田創

自己愛の強い若い女性の独白で埋め尽くされたような小説。さしたるストーリーもなく。退屈で読み出してすぐ眠たくなるので、昼寝したいときなどにうってつけ。 そもそも文化祭的なノリというか、若いから許されるんだみたいなメンタリティーが大嫌いで。 "仲…

『すばる』2007.4

『すばる』のいちばん新しい旧号を図書館で借りました。 埴谷雄高の特集よりは読み応えのありそうな、すばるのドストエフスキー特集ですが、そんなのが読みたくなったわけでもなく、文學界を借りている図書館でついでに借りるものもないなあ、ってときにたま…

『プレカリアートの憂鬱』⑤ 雨宮処凛

今回は小説家を目指している人の話で、夢を持っているぶん、なんか救われてしまっている。普通に俳優だの文筆業だのを目指していて結果としてビンボーな人よりは悲惨な成り行きなのだが、それにしても、はっきりと目指すものがあるだけいいのではないか、と…

『ピストルズ』③ 阿部和重

なんか人物がカタカナ名だし、魔法?みたいな事もでてきて、あの阿部和重が今度はさらによりフィクショナルな世界に挑むのか、と身構えたこの小説だが、なんかいきなり面白くなってきています。 ていうかギャンブルだのホテルだの裏取引だの下世話な話題を書…

死霊をめぐる対談−奥泉光×佐藤亜紀

対談だから読みやすそうなので読んだが、埴谷雄高じたい、ほとんど知らないので、死霊の内容に関することを言われるとさっぱり実感がつかめない。基本的に、これから読みたい人ではなく、読んだことのある人向けの対談って感じだ。 奥泉さんはいつもどおりの…

『風を放つ』恒川光太郎

なんか古臭い名前の響きだが、ベテラン作家ではないし、それほど歳を取っているわけではないようだ。もちろん読むのは初めて。 読後としては割と良く書けているなあ、という感想。この内容をこの長さに結構コンパクトに話を纏めて、それでいて分かりづらいと…

『老国道』リービ英雄

良く見る名前で有名な作家ではあるけれど、読むのは初めて。 中国の古い国道を通って農村地帯を通過し、日本軍戦勝記念館(みたいなもの)を尋ねる話。話とはいっても筋みたいなものがあるわけではなく、農村地帯と、そこを訪ねるのを嫌がる都市部の中国人青…

『群像』 2007.5 続き

群像は埴谷雄高特集ってことで、奥泉さんと佐藤亜紀の対談以外はまあ読まないと思うので、今日アップする小説をもってほとんど読んだことになるのかな? で、ふつうなら新潮の5月号の読みきりに移る所なんだけれど、図書館で『すばる』の4月号が貸し出し可…

『海近しの眩しい陽射しが』川崎徹

あのCMディレクターの人の小説で、読んだのは初めて。 この作品について何を書けばいいのか迷ってしまうくらい凡庸な作品。時の前後が多少分かりにくかったほかは、さしたる瑕疵もないのだが、少しも面白くはない。ストイックさを感じるところはあって、文…

『受粉』木下古栗

はじめて読む作家。音楽ライブで女性と触れ合ったことを契機として、痴漢を主なテーマとして性をめぐる妄想が暴走していくような話。リアリズム小説ではない。 性に関する妄想とはいっても、真面目に性とは何かと考えたときに出てくるような事ではなく、非常…

『群像』 2007.5

花見の季節も終わりですが、いずれにせよこれから暖かくなるわけで、お出かけしたい病とのせめぎ合いのなかでどれだけ読むことができるのか、ということになります。 半分かそれ以上の作品に関しては、お出かけでもしていた方が楽しいなあ、という気もしてい…

本日過去の記事の一部を、少し手直ししました。 あまり読み返すことがないもので、で、今読んでみるとけっこう読むに耐えないような悪口めいた記述があって、穏やかな表現に変えました。 トラックバックも無いし他への引用などもまず無さそうなので、線引き…

『歌うクジラ』村上龍

面白いんだけれど、こりゃSF的面白さだよなあ、というのは今月もずっと変わっていなくて、普通評価のまま。 この内容で「現代」に対する批評性をどういう所に感じればいいんだろうか。

『あまりに野蛮な』津島佑子

ミーチャが、あまりにひたむきな、だけに最近はいつの間にか感情移入して読んでいる私。 物語の力ってやつですか。 それにしても流産してしまったことが、あまりに簡単な、著述で終わっていたのはどういうことなんだろう。

『宿屋めぐり』町田康

たんに芝居の援助をめぐる金銭的なやりとりの会話を、よくここまで面白く書けるよな、しかし。 んでこの主人公は、大きく出てはすぐに反省する。このへんのキャラとしての面白さもあるし。 主への内省的な問いもあってすこし宗教的なテーマの臭いなどもある…

『神器―浪漫的な航海の記録』奥泉光

こちらは大分話が進展するようになってきて、また例の軽い気質の主人公が登場、天皇の双子の兄弟の話も出てくる。 とはいえ、まだ本格的に南に向けて出航はしていないのだけれども、男色めいた気分に走る将校のそこに至るまでのいきさつとか、そういう脇の人…

『太陽を曳く馬』高村薫

これもなんかテンション高い。旧字体の手紙などを延々と書いているから、そういう印象になるのかもしれないけれども。 内容はといえば、その手紙がふたたびメインで、相変わらず絵画論。話が遅々としているのは今月も変わらない。 絵画論にしてもとても抽象…

『決壊』平野啓一郎

相変わらず、高いテンションをキープ。記憶している限りでは、裏切られたというかイマイチだな、という月がない。 ここで起きたメッセージめいたバラバラ殺人が、先月号での教唆によるものなのかどうか。これが、殺されたのは誰かというのも含めて非常に気に…

『新潮』『群像』5月号 連載作品

新潮に『ハイドラ』の単行本の広告が・・・金原ひとみの写真がやたらゴージャスです・・・ ヤバイです・・・

『群像』 2007.4 拾遺 ちょっと書き忘れ

昨日書き忘れたのだけれど、群像に高橋源一郎の『ニッポンの小説』の書評が載っていて、ちょっと面白かった。(たしか書いていたのは水牛健太郎氏) その中で、保坂和志が小説家という書き手による小説論というのを目指していて、んで、「愛情」とか「尊敬」…

文芸誌各誌5月号について

『新潮』『群像』は買ってきました。 平野啓一郎の連載だけは、買ったその日に読みました。 保坂の連載が載ってます。なんか延々と書きそうな勢いで、少しも終わる気配が無いのがつらいところです。 『群像』は侃侃諤諤と中原昌也のエッセイを読みました。い…

恋愛小説集『ママをゲット』イアン・フレイジャー

超短編なのに、面白いとしたのは、少し笑いを取られてしまったから。 読み終わって、昔テレビで、朝何度言っても起きない(男の)中高生を起こす方法として、母親が同じ布団で寝ようとする、という方法が紹介されていたのを思い出した。 殆どの男子中高生が…

連作『潮の変わり目』古井由吉

古井さんといえば、私にとっては『女たちの家』がフェイバリットで最近の作品はじつはほとんど読んでいない。 群像の連作は読む月もあったが、今月号でたぶん初めて古井作品にここでは言及するはずで、そもそも古井さんの作品がつまらない筈がなく読んだとし…

『群像』 2007.4 拾遺2

拾遺しているうちに、伊藤比呂美さんの連載が終わるのを知った。 次の5月号では橋本治さんの連載も終わりで、途中から買った私がほとんど読まないものが、早めに消えていくのはとても好ましい。 橋本さん伊藤さんのものは、途中からだったので読む気がしな…

『プレカリアートの憂鬱』雨宮処凛

当たり前のことだが、プレカリアートといっても様々な人がいるわけで、しかもそれが毎度毎度面白い。今回はマルクスを研究するところまでいってしまった人。 マルクスか。そういえばワーキングプアなんてよく考えてみれば、マルクスの疎外論そのまんま、どこ…

(削除しました)

まともに読んでないのに悪口書くのは失礼なので、ここにあった『グッバイ・ゴジラ、ハローキティ』加藤典洋の感想削除しました。悪しからずご了承ください。

ノルゲ 完結記念対談 佐伯一麦+堀江敏幸

これも読んだはずだが、今こうして何か書こうと思っても何も浮かばん。 山田川上対談以上に小説家でなきゃ分からん話ばかりで、けっきょくご苦労様佐伯さん、ってだけだった、と思う。自信が無いが。