『さよなら、日だまり』平田俊子

題名からしてほのぼのとした部分のある心境小説かと思いきや、ぜんぜんこれが違った。全く違うといっても良いくらい、人間関係の険しさを描いた小説である。
しかも、特定の宗教がでてくるわけではないが、怪しげな占いを信じる信じない者同士の関係が、宗教者と非宗教者との対立というような相貌で描かれ、その異物感がわりとリアルで読ませる。
実はこれは上記の作品と違って、終わりまで一気に、タバコ一服くらいを挟んで読んでしまった。
いぜんに平田俊子のこれよりは短めの作品を読んだときは、いかにも純文学なメタファーと心境描写であまり感心しなかったが、今回の作品は心理描写は少なめ、というかキャラクターの作りこみはちょっと浅いかなという部分はある。
ただ話の展開がとても面白く、それを補っている。
不満点が全くない訳ではないが、さいきんはこれといった作品もなかったので、一気に読ませたという事から、[面白い!!]評価にしてみた。