2008-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『一一一一』福永信

福永信らしいトリッキーな作品。半ば監禁状態にある若い女性を老年に差し掛かった(と思われる)おやじがねちっこく詰問する内容。ほぼ会話だけで構成されている。 といってもリアリズム作品ではなくて、オヤジの麻雀に対するへんな拘りとか、いい加減な推測…

『文藝』 2008年秋号

小さい頃(小学生低学年くらい)に起こったことが段段事実かどうか怪しくなってくることってありませんか。 近くの栗林で丸まる太った栗を沢山拾ってきて、母親にどこから盗んだの、と怒られた事はおそらく事実だと思うのですが、それとは全く別の日に同じ事…

『女の庭』鹿島田真希

長野まゆみという全く興味の湧かない作家の特集号であったが、季刊のこれを図書館で貸与可能になるまで待つのも面倒なので買ってしまった。目的のほとんどがこの作品。 結論からいうと、しかも極めて適当でぶっちゃけた言い方をしてしまうと、『ピカルディー…

『文藝』 2008年秋号

毎年この時期くらいになると単に暑さで体の調子を崩します。 きっと私は夏に死ぬんじゃないでしょうか。

『四方田犬彦の月に吠える』四方田犬彦

今回はある日本の映像作家の事を書いていて、日本共産党が主流派、反主流派に分かれていた頃の山村工作隊についての記述だけが興味深く読めた。 いや他の部分が全く興味ないとまでは言わないけど、なんかいつも思うことだけど、このコラム、長いんだよね。そ…

『奴ら』吉田修一

まずは期待通りの作品であると言うことができる。短編か中篇かといわれれば、その中間、いやむしろどちらかというと短編に近い分量でありながら、充分に面白く、つまり読者を先へ先へといざなってくれる。もともと短編系統はより純文学的色彩が強くなりがち…

『新潮』 2008.9 読切作品、コラム

このあいだ時間指定で宅急便を待っていたのですが、なんと5時間遅れ。関西からの荷物で、飛行機が遅れたとかなんとか言い訳されたのですが、本当でしょうか。関西からならクルマの方が便利なような気もするのですが、運送業のことは良く分かりません。飛行…

『心はあなたのもとに』村上龍

さすがに今回はこの連載キレそうになったぜよ。主人公の男性、すごい金持ちなんだから、恋人の女性をとっとと働かすの止めさせて、学業に専念させりゃいいじゃねーか、と叫びそうになった。 かえって本人のインセンティブを低下させるだ?何バカな事言ってる…

『文學界』 2008.8 連載作品

テレビでUFCという格闘技を見たのですが、ボクシングなどと違って差の無い者同士が対戦すると、偶然的な一発が試合の行方を左右してしまうので面白くありませんね。 あんな試合ばかりだと、おそらく、いつまで経っても誰が最強か論争が終わりそうもないか…

『ドストエフスキー「白痴」について』山城むつみ

こちらは不定期掲載だが、これが一番面白かった。丹念に読んでいくと、なかなか気迫に溢れていて好感がもてる。それは、ドストエフスキーを読んでいなくてもここで行われている議論に説得力を感じてしまうくらい。とくに暴力をふるうものにしか感知できない…

『巨人伝説』野口武彦

幕末不戦派なんとかの続きという感じ。当時の世相を細かく追っていて面白い面はあるが、人物描写が通俗的な時代物とあまり変わらないくらい平板で単純でリアリティを欠いている所がある。表現が大げさというか。これはでも仕方ない事なのかもしれない。近代…

『横光利一の旅愁』関川夏央

戦前のころ、ベルリンオリンピックなどでこんな事があった、横光はそのときこう行動した、というのを淡々と書き綴るだけで、余計な心理描写を一切していない所が特徴か。そういう意味で上記長島作品よりもあの時代とかに興味がないと楽しめない傾向があるが…

『背中の記憶』長島有里枝

上州女性は気丈だ、という感じの、つねに勝気な祖母の追憶を平明な文章で綴る。普通の伝記文という感じでイマイチ興味が沸かないのは、今の段階では仕方ないのだと思いたい。そういう出来。

『群像』 新連載短評

なんか今年の夏って例年より涼しくありませんか、なんて書いていた私は大ばか者だという事を実感する毎日です。 今日はとても短く書きます。