2009-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『ビッチマグネット』舞城王太郎

私にとってはカネを払いたくない評論が載ることが多い『新潮』だが(しかも連載で)、『新潮』を切って捨てれない理由のひとつが舞城王太郎の作品が定期的に載る事だろう。 今回も前作と似て、中心に中高生の恋愛のドタバタが描かれるが、あれほど極端なドタ…

『新潮』 2009.9 読切作品

どうでも良い話をするような知り合いが少ないもので、そのせいなんでしょうか、今更そんな事で驚くなというような、というような事に、この歳になって驚いたりします。 最近そんな事がありまして、夕飯の主食がパンであることが許せない考えられない、という…

『ジオラマ』吉原清隆

断固支持。この作品は、これまでの2作品がたまたま出来が良かった訳ではない事を証明した。集英社は良い作家を掴んだものである。(この作品があると無いとでは、今月号の『すばる』はまるで違う。) 彼の小説は名づけるならば"生活史"小説である。たまたま…

『すばる』 2009.9 読切作品

えーと世間的には選挙がいちばんの話題といった所ですか。 このあいだの選挙は、郵政民営化のみが争点となってしまって、まあ確かに"ゆうちょ"とか都市部においてまでこんなに沢山の店舗があるのはどうなんだろう、もう少し縮小して民間に任せても良いのでは…

エッセイ『投稿歌の世界』穂村弘

星野智幸の小説を除けば、8月号の『新潮』でいちばん面白かったのはこのエッセイだろう。投稿歌のなかには、ときに玄人を思わず立ち止まらせる作品があるのだ、という趣旨なのだが、引用される投稿歌が何度読んでも笑える。最初の「あっ」も良かったが、牛…

最終回『ファントム、クォンタム』東浩紀

評価しづらい。隔月の連載というのはやはり無理があるのではないか。前回の内容忘れてしまうし、前回の内容をあまり覚えてなくてもそれとなく思い出させるような書き方を、東浩紀のような書き手に期待するのはそもそも無理がある。 東浩紀が小説を書くにあた…

『街を食べる』村田沙耶香

こんなそれほど長くない小説でも、やはり異彩を放つ作家である。『群像』にのった作品と少しだけモチーフは引き継いでいて、こんかいは都会に「自然」を見出し、そこに生える草を食べることで、身体でその「自然」を感じるようになる、そんな人物を描いてい…

『山猫』青山七恵

図書館に勤め(しかも職場結婚まで!!)、映画を見るのが好きで上映時間に遅れたぐらいで不貞腐れるような、この世で私が一番関わりあいになりたくない類の女性が嫌な目にあってしまう小説で、こういうのは、読んでいてひたすらざまあみろの気分になって最…

『湖面の女たち』鹿島田真希

精神を冒され失職状態にある男の主人公。導入部はちょっと謎めいていて、いつもの鹿島田とは違うのかなと期待しつつ読むも、途中から「出来事」が後退し、思弁が中心を占めていく。いつもの鹿島田世界みたいになってしまっている。好きな人はこれでいいのだ…

『新潮』 2009.8 読切作品ほか

テレビで、手塚治虫についての特集をやっていたのでチャンネルを止めたら、どこかで見たようなちょっと格好つけた人物がいる。まさかと思ったらやはり矢作俊彦でした。NHKの人もよく矢作の作品をフォローしているなあ、というのと、それにしても東京みた…

『紀行特集 すばる散歩部』

誰の企画か知らないが、どういう意図があったのだろうと首を傾げる。むろん責任は企画にGOサインした編集長にあるのだろうが、とにかく、藤野可織のもの以外は少しも面白くない。(告白してしまえば、藤沢周のものだけあまりまともに読んじゃいない。この…

『ユニオン・キリギリス』雨宮処凛

普通としたが、実は、上記小説よりずっと面白く読んだ。おそらくは作者の体験が色濃く反映されているがゆえだろう。リアリティがある。というか、どこまで小説で、どこまでフィクションかは分からないのだが。 文体にそれほど工夫がないのはこの作者の経歴で…

『桜草団地一街区 爪を噛む女』伏見憲明

実質1作しかない小説がこのつまらなさとは・・・『すばる』よ・・・880円は高かったぜ。 いくら目に余る軽薄さとはいえ、主人公のその性格で、評価を左右しているつもりはない。ありえない軽薄さだから、読む手も止まってしまうのだ。母親が見下していたライバ…

『すばる』 2009.8 読切作品ほか

相模大野に行った話の続きです。 で、駅ビルに入った所までは書いたのですが、どんな店子がいたかというと、マックをはじめ、ユニクロ、無印、ボディショップとか、ABCマートだのライトオンだの、まあありがちな店はしっかりあって、これといって特徴があ…

『特集〜文学と法』

なんかこの特集のあまりのつまらなさから、文學界を今後買うべきか迷い出した気もする。(そして松尾スズキでそれは増幅してしまった。) それにしても文学者2人(中村文則、玄侑宗久)が、新しい裁判制度に対して、旧態依然とした「文学者」であることは興…

連載終了『常夏の豚』矢作俊彦

なんか編集部との意見の相違が背景にあるかのような終わり方をしているのだが、実際はどうなのだろう。 しかし終わってみて暫くして実感したのは、やはりこの作品は、それなりに楽しい部分もあったな、ということ。矢作ならではの、いったいどこで仕入れるの…

『老人賭博』松尾スズキ

たんなるドタバタ劇の印象で、ごくごく一部を除いて、この作品が小説であるべき理由が私には全く見出せない。いいかえれば、松尾が主宰する劇団の演劇作品のノベライズということ以上の意味を見出せなかった。人物が皆あまりに深みや複雑さに欠けるし、登場…

『文學界』 2009.8 読切作品+2009.7 拾遺

川上未映子作品を読んでからというもの、文章というものを自分(ごとき)が書く意欲を全く欠いてしまった、というのも嘘ではありませんが、半分以上は単なる怠惰で、また10日以上ここ放置してしまいました。 またぽつぽつ備忘録的に書いていこうか、と今は…