2009-08-14から1日間の記事一覧

エッセイ『投稿歌の世界』穂村弘

星野智幸の小説を除けば、8月号の『新潮』でいちばん面白かったのはこのエッセイだろう。投稿歌のなかには、ときに玄人を思わず立ち止まらせる作品があるのだ、という趣旨なのだが、引用される投稿歌が何度読んでも笑える。最初の「あっ」も良かったが、牛…

最終回『ファントム、クォンタム』東浩紀

評価しづらい。隔月の連載というのはやはり無理があるのではないか。前回の内容忘れてしまうし、前回の内容をあまり覚えてなくてもそれとなく思い出させるような書き方を、東浩紀のような書き手に期待するのはそもそも無理がある。 東浩紀が小説を書くにあた…

『街を食べる』村田沙耶香

こんなそれほど長くない小説でも、やはり異彩を放つ作家である。『群像』にのった作品と少しだけモチーフは引き継いでいて、こんかいは都会に「自然」を見出し、そこに生える草を食べることで、身体でその「自然」を感じるようになる、そんな人物を描いてい…

『山猫』青山七恵

図書館に勤め(しかも職場結婚まで!!)、映画を見るのが好きで上映時間に遅れたぐらいで不貞腐れるような、この世で私が一番関わりあいになりたくない類の女性が嫌な目にあってしまう小説で、こういうのは、読んでいてひたすらざまあみろの気分になって最…

『湖面の女たち』鹿島田真希

精神を冒され失職状態にある男の主人公。導入部はちょっと謎めいていて、いつもの鹿島田とは違うのかなと期待しつつ読むも、途中から「出来事」が後退し、思弁が中心を占めていく。いつもの鹿島田世界みたいになってしまっている。好きな人はこれでいいのだ…

『新潮』 2009.8 読切作品ほか

テレビで、手塚治虫についての特集をやっていたのでチャンネルを止めたら、どこかで見たようなちょっと格好つけた人物がいる。まさかと思ったらやはり矢作俊彦でした。NHKの人もよく矢作の作品をフォローしているなあ、というのと、それにしても東京みた…