2010-02-01から1ヶ月間の記事一覧

『創作合評』平田+佐川+田中

佐川光晴の小説評が人物評になっているのに、われながら引いてしまう。これでは倫理的に許せないような人物を主人公にした小説は小説としてもダメだという事になってしうまうので、「それ小説論じゃなくて人生論でしょ」とつっこみを入れる田中和生は正しい…

『内なる他者の言葉』永岡杜人

この月の評論4編のなかで、唯一「わりと理解できたかな?」と思えたのがこれ。従って他の評論にはあまり言及しないでおきたいのだが、一言言うなら、古谷さんの評論、長すぎて、しかも読めば読むほど評論対象の柴崎作品が魅力的に思えなくなってくるという…

『夢枕に獏が・・・・・・』木下古栗

この人はどん欲な人だ。タイトルでまず笑ってしまう。どんなバイオレンス劇が始まるんだろうかと。だって本読む人がこのタイトル見たらある作家を連想せずにはいられないし。 そして一行目からして滅茶苦茶だ。エロ本を常食ってどういう発想なんだよ。 そし…

『クロスロード』朝比奈あすか

対照的な人生を生きる二人の20代女性の、今とそれまでを丁寧に描いた作品。それぞれを交互に描き、終盤でクロスするのだが、まさしくクロスするだけで、並行に歩く事はない。つまり、出会って何かが発生するような作り物めいたわかりやすい物語など発生し…

『群像』 2010.2 読切作品ほか

さいきん死ぬ夢を良く見るようになりました。昨晩も見ました。 他人の夢の話なんか退屈だとか以前ここに書きましたが、ここはそんなに大勢見るわけでも金を取っているわけでもないので許して頂くとして、面白いのは、以前ごくたまに死ぬ夢を見たときは、すご…

連載再開『路』吉田修一

何ヶ月も連載中断して、なんの「これまでのあらすじ」も記さずに掲載するって、なんて乱暴な。これだけ出版危機が叫ばれての、この読者目線の無さは絶望的な気分にさせるね。

エッセイ『世界の文学のエッセンス、俳句』夏石番矢

恐らく軽い気持ちで書いたのだろうから、非難するというのではないが、このエッセイもひっかかったなあ。 だって自分は純粋な日本人と感じることは、浮世絵や俳句を古臭いと感じることとイコールなんだからね。それが近代ってやつだから。いいかえれば、浮世…

『アウトサイドレビュー』前田司郎

ちょっとまえも文學界の編集部には別の件で文句いったが、このエッセイ読んで面白いと思った人がいるのかなあ、編集部に。 小説ばかり読んでいる読者に息抜きの意味もこめて、何か小説以外をレビューしてもらうというコーナーなのに、レビュー以前の「アウト…

『日々のきのこ』高原英理

人数をよく覚えていないのだが、二人?三人?の主観を交互に配置して、現実に存在しない想像のきのこを創造して登場させる、非リアリズム小説。作者が作り出したきのこが面白いなあと思えばこの小説の面白みもさらに増すのだろうが、そうでなければ、とくに…

『うどん屋のジェンダー、またはコルネさん』津村記久子

人気うどん店で、女性というだけで、ぞんざいに扱われない事に却っていらだってしまう女性の話。 小説自体の評価とはべつに最初からいきなりひっかかるのだが、こういう所で納得できないともうなんかすんなり楽しんで読めないんだな。不思議と。 それはつま…

『ファビアンの家の思い出』青山七恵

一読して思ったのは、不思議な小説だ、ということ。しかしどこがと言われると、まったく答えられない。 日本の青年が外国(スイス)を旅してくる話なのだが、主人公は現地で案内してくれる友達に頼るばかりで英語すら殆どできない。当然現地の人とのコミュニ…

『てんてんはんそく』多和田葉子

最初のほうの「浮かび上がってくる肌」というのから、なんかこの喩えは、パソコンの画面の事を言ってるのかと思い、では他の部分に関してはインターネットのプロバイダの対応(ISDNから光、少なくともADSLに換えましょう)のことなのかな? とにかく…

『報告』黒井千次

入院した主人公が、運動不足が寝不足につながっているかもしれないと入院棟のなかを歩き回る話なのだが、他の登場人物の話し言葉を「」ではなく棒引っ張って(つまりこんなふうに −○○ですか)、地の文のように記述している。確かにこうするといかにも小説的…

『文學界』 2010.2 読切作品ほか

スクエニとかバンナムが人員削減という話を耳にしましたが、ゲーム業界も厳しいみたいですね。音楽だの本だののソフトのコンテンツ生産の業界はどこも駄目みたいです。 バブル崩壊後一番もてはやされたセクションなんですけどね、私の記憶では。もう革新的な…

連載終了『高畠素之の亡霊』佐藤優

なんかイマイチな連載だったなあ。連載中盤から後半にかけては、たんに高畠思想のコンメンタールという感じで退屈だった。当時の社会情勢や、高畠氏の活動、また高畠氏に対する論壇や一般人などの反応など、そういう周辺事情がもっと語られれば、少しは面白…

『屋根裏プラハ』田中長徳

前にどこかで東ドイツのルポも読んだし、ドキュメンタリも見たことがあるが、旧共産圏で「昔の方が良かった」というのは、よく言われる事らしい。プラハでもやはりそうらしい。 しかしそれに対して、同じ体制になって愚痴が言い合えるんだから苦しんでるのは…

『午後』福永信

前に似たようなものを読んだことがあるが、A、B、C、Dなる人物についてひと段落づつという感じで短く順番に、Dが終わるとまたAの様子という具合に語る。読んでいると、いつの間にかこの4人の関係について兄弟なのかなとか推測したくなり、少年なの?…

『尿意』諏訪哲史

短編。少年が知らない土地に来て、転校した学校で小便がしたくなる話。主人公が「ベンジョ」を尋ねれば、その土地の人は「ビヤンヂャオ」と表現するんだが、他にも座標を「ザヒヤオ」とルビふったりして、ふざけているんだか何だか分からないような事を試み…

新連載『空に梯子』角田光代

80年代から始まる若い男女の話。あの頃を若い年代として過ごした年代の人は、いま、さぞや恵まれてただろうと、若い人の怨嗟と揶揄の対象になっていたりするんだけど、ま、あの時代でも四畳半一間で、朝昼晩とインスタントラーメンの人もいたわけで。確か…

『アナザー・ワールド』よしもとばなな

買っておいてもったいないなとは思うが、読んでない。時間の方がもったいなくて。 この作家は、某知事さんと私の中で同じ扱い。

『新潮』 2010.2 読切作品ほか

年度末になって、あちこち道路工事が増えてまいりました。公共事業費削減の昨今なのに、この光景はあまり変わりませんね。 ちょっと前に相模大野に行った事をここで書きましたが、先日かなり久しぶりに新百合ヶ丘に行ったのですが、いやはや。 どこにもオー…

『幸福な水夫』木村友祐

新人賞受賞後の第一作にして、なんだこの読ませる作品は、という驚き。私は「幸福な読者」であった。 正直ちょっとした感動というか、情動的なものすら覚えてしまったのだが、それはストーリーに負う部分が大きいように思われ、少し厳しくいえば、この作品だ…

『東京ロンダリング』原田ひ香

テレビドラマだな、これは。 純文学を「マンガのようだ」と評すると、マンガを貶めるなというある意味まっとうな批判もされたりするけど、私は無論ここで、「テレビドラマ」というのを堂々と悪い意味で使っている訳である。そりゃテレビドラマのなかには、一…

『すばる』 2010.2 読切作品

そういえば最近芥川賞の話題って聞かないなあ、と思っていながら何も調べる気も無くそのまま過ごして居たのですが、随分前に「該当作なし」で選考会は終わっていたらしいですね。 マジ知りませんでした。 しかも候補作に読んでないものが多くて、もうお前現…