新連載『空に梯子』角田光代

80年代から始まる若い男女の話。あの頃を若い年代として過ごした年代の人は、いま、さぞや恵まれてただろうと、若い人の怨嗟と揶揄の対象になっていたりするんだけど、ま、あの時代でも四畳半一間で、朝昼晩とインスタントラーメンの人もいたわけで。確かに就職説明会なんかは企業から是非来てくださいという勢いだったことは確かだけど、振り返ればそこにはそれなりの苦悩があったという話には当然なるんだろう。
木村友佑の作品について書いてるときと矛盾したような事言っているけど、「それなりの苦悩」であって、「同じような苦悩」ではないよな、とは思う。でも、もちろん「それなりの苦悩」だって、十分本人にとっては苦悩なんですよ、これが。たとえば橋本治にとって、「戦後」がそう簡単に否定できないものであるがごとく、80年代だってきちんと書けばそこには暮らしが間違いなくあったわけで。
まだ面白い展開になるかどうか判断つかないが、この人はいつだって、文章力は確かだから、安心して読める。
と誉めたところで、不可解な箇所がひとつ。ピストルズをすでに知っていた人間がクラッシュを人に教わるという事があるんだろうか?(ザ・クラッシュとあるのは、あのジョーストラマーのクラッシュだよね?)常に比較されていたパンクを代表するバンドだよ。確かに女性には、ミュージシャンの名前とかそういう知識を体系的な一般的な知識として蓄えようという欲望がない人が多いのかもしれないけど、不自然すぎるだろう。しばらくここでつかえてしまったよ。
それにセックスピストルズピストルズと略すなら、クラッシュも、ザ・クラッシュなんてしなくても良いんじゃないのかな。クラッシュをただ「クラッシュ」と言ってたのは、私の周りだけなのかしら。